HAGANEYA(@imech_jp)です。
2013年リリース。一応、前作『Dedicated to Chaos』から2年ぶりとなる通算12作目のフルアルバム・・・なのですが、実は同年に『Queensryche(2013)』というセルフタイトルのフルアルバムがリリースされています。
Wiki などを見ていただくとわかりますが、この時期は Geoff Tate さん VS 楽器隊3人の対立構造が激化していた真っ只中であり、バンドの主導権を巡って互いの陣営が牽制し合っていました。
セルフタイトルのほうは Michael Wilton さん(Gt.)・Eddie Jackson さん(Ba.)・Scott Rockenfield さん(Dr.) のオリジナルメンバー3人に加え、ボーカルに Todd La Torre さん(ex. Crimson Glory) や Parker Lundgren さん(Gt.) を迎え収録されたものであり、結果的にはこちらが Queensryche の名を継承し現在進行形で活動しています。
一方の本作は、3人から愛想を尽かされた Geoff さんが旧バンド時代からの盟友 Kelly Gray さん・初期Queensryche のサポートキーボーディストを務めていた Randy Gane さん他、多数豪華ゲストの協力のもと "Queensryche" 名義でリリースされた作品です。もしこちらの "偽Queensryche" がバンド名の使用権を勝ち取っていれば、今頃は Geoff 陣営が "本家Queensryche" を名乗り活動出来ていたわけですが・・・長年にわたってファン(とメンバー)に嫌われるような行動ばかりとっていた時点で、戦う前から決着はついていた気もします。
さて、そんな本作は『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』辺りから脈々と続く、オルタナティブ・ロック路線の延長線上にある作風です。90〜00年代の Queensryche サウンドが好きだという奇特な方にとっては、(ある意味)安心して聴ける作品となっています。
"豪華ゲストがもたらしたメタル要素" に不釣り合いなオルタナ路線
- Cold
- Dare
- Give It to You
- Slave
- In the Hands of God
- Running Backwards
- Life Without You
- Everything
- Fallen
- The Weight of the World
参加ミュージシャン
- Robert Sarzo(Hurricane)
- Rudy Sarzo(ex.Quiet Riot ex.Ozzy Osbourne Band ex.Whitesnake ...etc)
- Simon Wright(ex.AC/DC ex.Dio)
- Craig Locicero(ex. Forbidden)
- Jason Slater(ex. Third Eye Blind)
- Martin Irigoyen(Vernian Process)
- Paul Bostaph(Slayer)
- Jon Levin(Dokken)
- Ty Tabor(King's X)
- K.K. Downing(ex. Judas Priest)
- Brad Gillis(Night Ranger)
- Dave Meniketti(Y&T)
- Chris Poland(ex. Megadeth)
作品の幕開けを飾る #1『Cold』のザクザクと刻むメタリックなリフには、ニューメタル系メロデス・サウンドを標榜していた時期の In Flames『Soundtrack to Your Escape』や Arch Enemy『Anthems of Rebellion』辺りを彷彿とさせるものがあり、"単に90〜00年代のオルタナ期をなぞっただけの作品ではない" という期待を聴き手に予感させるものだったりします。「ひょっとしたら "Halford" パターンもあるのかもしれない」と。
この淡い期待は #2『Dare』が流れ始めた瞬間に打ち砕かれることとなりますが、#1 と似た構造を持つ #8『Everything』など聴き応えがある楽曲もあり、なかなか侮れません。
とりわけ、Judas Priest の Night Comes Down (Defenders of the Faith)辺りを思わせるダークなパワー・バラード曲 #10『The Weight of the World』も非常に味わい深く、(本作誕生に至る諸事情さえ忘れて聴けば)素直に名曲と断言したくなる完成度です。
エクストリームなアレンジの方向性が微妙にズレている気がする #4『Slave』や、Aメロを正統派メタルに擬態したニューメタル・チューン #5『In the Hands of God』などの "何か惜しい" と言いたくなるような楽曲もちらほらあり、第一印象ではさほど印象に残らなかったにも関わらず "意外と聴けるかも" といった結論に達しつつあります。
"大人げないアートワーク" さえ無ければ・・・
本作唯一の汚点は "アートワーク" ではないでしょうか。まるでハードコア・バンドに転身したかのような "げんこつ" モチーフ自体は「趣味です」と言われてしまえばそれまでですが、いくら怒りが収まらないからって "FQU" のナックルはさすがに大人げないと思います(むしろ怒りたいのは3人のほうでしょ)。こういうところなんだよなぁ・・・
感じ方は人それぞれだと思いますが、楽曲は悪くないです。ただし "ゲストミュージシャンの無駄遣い" 感は否めないというか・・・オルタナ系統の作風にこのメンツはもったいないとは感じます。
この系統に限って言えば、個人的には 6th『Here in the Now Frontier』や 10th『American Soldier』辺りのポスト・グランジ・サウンドが好みですが、"ギターソロが多い" こちらのほうがメタラーはハマるかもしれません。
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