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音楽のこと

【鋼】Judas Priest『British Steel』レビュー

2016年7月14日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1980年リリース。70〜80年代の Judas Priest のディスコグラフィを辿っていくと、"疾走感を重視した作品" と "グルーヴ感を重視した作品" が数作ごとに切り替わっていく印象があるのですが、本作はやや "後者" 寄りの作風です。

スピード・チューンの印象が強い前々作『Stained Class』〜前作『Killing Machine(JP:殺人機械、US:Hell Bent for Leather)』までの流れから一転、本作はミドル・チューンが大半を占め、かつ "ギターソロを必要以上に前面に押し出さない" という、70'sハードロックに歩み寄ったかのような音楽性を見せています。また "バラード曲が一切存在しない" のも特徴です。

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ステレオタイプな Judas Priest のイメージとは対極に位置する名盤

Judas Priest と言えば『The Hellion〜Electric Eye』『Painkiller』あたりの音楽性をイメージされる方が多いかと思いますが、このバンドって実は "実験作だらけ" なんですよね。数ある要素の中でたまたま "疾走曲" や "ハイトーンボーカル" が強めにフィーチャーされただけであって、それらの要素に依存せずに生み出した名曲・名盤もたくさん存在します。本作は彼らの "ステレオタイプなイメージ" とは対極に位置する名盤です。

余談ですが、本作はバージョンによって若干曲順が異なります。US盤は『Breaking the Law』が1曲目に収録されていますが、UK盤では3曲目に収録されています。私も両方持っているのですが、2004年リリースのリマスター盤で曲順が変わっていることに気付かず「何か、リマスター前と違うけど・・・音質が良くなっただけでここまで印象変わる?」と見当違いな感想を抱いたのを覚えています。

実際、曲順が変わったことにより「前のほうが良かった」と感じる方もいらっしゃるようですが、実はリマスター後の曲順のほうが正しいみたいですね。ちなみに、6曲目と7曲目の曲順もバージョンによって違うみたいです。

人によっては違和感を感じる序盤3曲の並びですが "順番が変わろうと、どの曲も名曲" であることには変わりがありません。

ドラムのリズムが特徴的なスピード・チューン #1『Rapid Fire』、ストロングなリフのA・Bメロ〜ランナーズ・ハイに陥ったかのようなサビの高揚感が心地良い #2『Metal Gods』、ロックファン&メタルファン両方にウケそうな程良いスピード感の #3『Breaking the Law』、次作のアメリカン・ハードロック路線を先取りしたかのような #4『Grinder』、Rage Against the Machine などの90'sオルタナ勢に影響を与えていそうな #5『United』、#4同様 Point of Entry の空気感を感じる #6『You Don't Have to Be Old to Be Wise』、ポップなアメリカン・ロック・テイストの #7『Living After Midnight』、"間" を効果的に使ったイントロ〜Led Zeppelinを彷彿とさせるリフ〜地を這うようなスローテンポに中音域のボーカルがハマる #8『The Rage』、"Judas印" のスピード・チューン&終盤に掛けて "レースゲームのBGM" さながらの超格好良いインスト曲へと移行していく #9『Steeler』。

本作のハイライトは、ベタですが『Metal Gods』と『Steeler』にあると思っています。後に自身のキャッチコピーにもなる『Metal Gods』からは「突っ走るだけがヘヴィメタルじゃない、ヘヴィメタルとは奥深い音楽なんだ」と言わんばかりの、彼らのプライドが伝わってきますし、『Steeler』からは「リフだけでオーディエンスを熱狂させてやる」という意志を感じます。

 

メタルの "お約束" 的な展開が苦手な方にこそ聴いてほしい

駄作のレッテルを貼られてしまった『Point of Entry』や『Turbo』同様、ミドルテンポ主体&ハードロック成分強めな作品ですが、不思議と本作は "名盤" 扱いされることが多いです。

実際「どこが違うの?」と聞かれると何とも言えないのですが、あえて挙げるなら "信念を感じる" ところでしょうか。『Point of Entry』には "アメリカ市場を狙った" という言葉が付いて回りますし、『Turbo』には "流行に流されてシンセを導入した" という言葉が付いて回りがちです。そういった "ビジネス的な事情" を意識させないところが、もしかすると受け入れられた理由なのではないでしょうか。

本作『British Steel』はその音楽性から、ヘヴィメタルシーンのみならず、90年代以降のオルタナティヴ・ロック・バンド等にも影響を与えているであろうことが容易に想像できます。メタルの様式美的なサウンド・お約束の展開(ギターソロなど)が苦手なタイプの方でも、本作は比較的聴きやすい部類に入るのではないでしょうか。『Motorhead』のような "ハードロック要素強め" なメタルバンドが好きな方にオススメです。

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