HAGANEYA(@imech_jp)です。
2009年リリース。前作『Operation: Mindcrime II(以下O:M2)』から3年ぶりとなる、通算10作目のフルアルバムです。
プロデュースには前作を担当した Jason Slater さんと、8th『Tribe』で正式メンバー&プロデュースを兼務していた Kelly Gray さんを起用。Geoff Tate さんの妻でありバンドのマネージャーも務める Susan Tate さんがエグゼクティブ・プロデューサーという形で関与しているようですが、単なる名義貸しなのか制作に携わっているのかは不明です。
アートワークは、5th『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』および 6th『Hear in the Now Frontier』でお馴染み Hugh Syme さんが手掛けています。シュールなモチーフを使って CG 臭い絵を描く印象が強かったせいか、本作の "ミリタリーブーツ×地面" というストレートな画風は割と新鮮でした。
さて、本作は O:M2 と同様の "コンセプト・アルバム" となっています。
第二次世界大戦やイラク戦争を経験した米軍の元兵士による "実体験" をそのまま書き起こしたかのような重苦しい歌詞から Iron Maiden の『A Matter of Life and Death(通称:戦記)』辺りを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、"戦記" の起伏に乏しい楽曲展開に比べると、本作は圧倒的にメロディラインに華があります。
グランジ/オルタナ期の作品ではトップクラス。Promised~ に肉薄する完成度
- Sliver
- Unafraid
- Hundred Mile Stare
- At 30,000 Ft
- A Dead Man's Words
- The Killer
- Middle of Hell
- If I Were King
- Man Down!
- Remember Me
- Home Again
- The Voice
前作で一瞬復活した "あの頃のQueensryche節" は再び消え去り、Promised〜 以降のグランジ/オルタナ系サウンドが復活しています。個人的には、Q2K やTribe の音楽性をベースに、Hear~ の取っつきやすさでまとめ、Promised~ レベルの味わい深さを再現した作品、といった印象です。
また、リズミカルなボーカルが印象的な #1『Silver』や、ミディアムテンポの切れ味鋭いギターリフを軸に据えた #2『Unafraid』は共に、Disturbed を彷彿とさせるものがあります。
個人的に Disturbed = "ニューメタル界のQueensryche" だと勝手に思っているわけですが、Queensryche 側から Disturbed ライクなアレンジの楽曲が出てきたのは意外でした。ジャンルに縛られない両者の姿勢にはどことなく同じような匂いを感じますし、(Geoff さんの脱退が無ければ) 向かおうとしている方向性はかなり近かったような気がします。
作品全体としては、Creed や Staind のようなヘヴィ&メロディアスなポスト・グランジ系サウンドで構成されており、若干の既視感を "説得力" や "オーラ" でねじ伏せている印象です。
#6『The Killer』#7『Middle of Hell』#8『If I Were King』#12『The Voice』のような手垢が付きまくったアレンジも、彼らのフィルターを通すと不思議と "深み" や "渋み" が生まれ、ついつい聴き入ってしまいます。どことなく Promised〜 の雰囲気を持つ #10『Remember Me』で作品全体の雰囲気を引き締めているのも良いですね。
#11『Home Again』の、楽曲中盤から Geoff さんの娘である Emily Tate さんにボーカルが移り変わっていくアレンジも秀逸です。Silent Lucidity(Empire)の再来を感じさせます。
出来の良さを素直に喜べない理由は、やはり・・・
本作は完全に Promised〜 以降の音楽性がベースとなっているので、正統派メタル/パワーメタル期の音を期待されているのであればスルーしてOKだと思います。これは Geoff さん在籍時最後となる次作『Dedicated to Chaos』についても同様です。
で・・・もし、Disturbed や Creed が大好きなのであれば、ぜひ聴いてみてください。きっと私のように満足するはずです。
一つ引っかかるのは、本作が Geoff派(Geoff Tate・Kelly Gray・Jason Slater)主導で制作されたことでしょうか。O:M2 と同様 "結果オーライで出来は良い" んですが・・・いくら作品の出来が良くても、"人間性" に問題があると素直に応援出来なかったりしますね。日頃の行いがいかに大事かを痛感させられます。
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