HAGANEYA(@imech_jp)です。
2013年リリース。前作『Dedicated to Chaos』から2年ぶりとなる通算12作目のフルアルバムであり、Geoff Tate さんから Todd La Torre さんにボーカルが交代してから初の作品です。
プロデューサーには、全盛期の Queensryche を始め Metallica や Rush のレコーディング&ミキシング・エンジニアを務めたこともある James "Jimbo" Barton さんを起用。ここ数作品のプロデュースを担当していた Kelly Gray さんや Jason Slater さんなどの "Geoffチーム" は、司令塔である Geoff さんと共にお払い箱となっています。
さて、本作は 4th『Empire』〜 5th『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』期に端を発する "バンド内のゴタゴタ" からようやく解放された楽器隊の3人(Michael Wilton さん・Eddie Jackson さん・Scott Rockenfield さん)が、楽曲制作だけに集中出来る環境を手に入れ誕生した "ヘヴィメタル回帰" 作です。ここに来るまで約20年・・・長い!
"2度目のセルフタイトル" も "収録時間の短さ" も、前向きな "再デビュー" への姿勢の表れ
- X2
- Where Dreams Go to Die
- Spore
- In This Light
- Redemption
- Vindication
- Midnight Lullaby
- A World Without
- Don't Look Back
- Fallout
- Open Road
本作を一通り聴いてまず気付くのは "収録時間の短さ" です。何と本作は、最近のメタル・アルバムにしては珍しく "約35分" とコンパクトにまとまっています。
当然のことながら、1曲あたりの時間は3〜4分。大作主義なプログレを好むリスナーの中には、物足りなさを感じている方もいらっしゃるようですが・・・よくよく考えてみると Queensryche って別に大作主義なバンドってわけでもないんですよね、元々。ですので、個々の楽曲の短さは特に気になりませんでした。
彼ら自身、本作の制作にあたっては "量より質" を意識したとのこと。引き合いに出されている "70〜80年代のVan Halenのレコード" も言われてみれば確かに30〜35分程度ですし、無理に10〜15分の長尺曲を入れて50分前後のボリュームで出すよりは「一刻も早く "新生Queensryche" の音をファンに届けたい」という気持ちのほうが大きかったのではないでしょうか(ただ「時間に余裕が無かった」とも言ってます)。
ともあれ、今の感覚からしてみれば、35分は "長めのEP" です。完全に狙ったわけではないにせよ、この短さは彼ら自身の処女作『Queensryche EP』を彷彿とさせます。作品タイトルに "バンド名" を冠したのも、おそらく「もう一度、一から歴史を作っていこう」という姿勢の表れなのではないでしょうか。
『Empire』の次に本作が来ていたら、メタラーから文句を言われてなかったかも
・・・と、収録時間の短さだけに言及していても仕方ないので、本作の作風にも触れておきます。
結論を先に言ってしまうと、本作は "オールドファンが求めていた Queensryche サウンドの正統進化系" とも言える作品です。まるで Promised〜 以降が無かったことにされているかのような心地良い緊張感は "あの頃のQueensryche" そのものであり、少なくとも "頭の固いメタルリスナーを納得させられる程度の説得力" は復活しているように感じます。
作品全体を包むシンフォニック・ゴシックメタル的なアレンジは、いかにも00年代以降のサウンドといった趣です。
また、Revolution Calling をメジャー・コードに置き換えたようなサビの高揚感が魅力的な #5『Redemption』や、Speak (Operation: Mindcrime) に Megadeth 風のシニカルなリフを注入した感じの #9『Don't Look Back』辺りは、確実に "あの頃のQueensryche" に新風を吹き込んでおり、本作が単に80年代の懐古的なサウンドを目指した後ろ向きな作品ではないことを物語っています。
Judas Priest や Iron Maiden とは事情の異なる "復活" 作
大変残念なことに・・・自己顕示欲を誇示したいだけの理由で、この "偉大なバンドの復活作" に脊髄反射で不当な低評価を下している無神経な方々が一部存在するようです。
が、この作品を酷評するのはさすがに "あまのじゃく" 過ぎるというか、そういった根拠の無い評価は無視して構わないと思います。あと、今さら15年前に脱退した Chris DeGarmo さんの面影を求めるのはさすがにナンセンスですし、困難な状況下で看板を必死に守ってきた現在の彼らに対して失礼です。
なお、事情は異なりますが "復活作" という括りだけで言えば Judas Priest『Angel of Retribution』や Iron Maiden『Brave New World』などが挙げられます。しかし、前述の作品群が比較的 "大作主義的" な作風であったのに対し、新生Queensryche は真逆の作風を提示してきました。何なら『Virtual XI』期の Maiden の環境と若干似てるような・・・
別に "大作が良い" とか "コンパクトが良い" とかの話をしたいわけではないのですが・・・"中心人物を追い出したバンド" と "再加入させたバンド" の違いが、どことなく作風に反映されているように感じました(気のせいかも)。
最新情報をお届けします