HAGANEYA(@imech_jp)です。

1994年リリース。前作『Empire』から4年ぶりとなる通算5作目のフルアルバムとなります。

ちなみに、以前『Operation: Mindcrime』の記事でも軽く触れましたが、私にとっての Queensryche デビューは本作です。

つかみ所のないアートワーク&音楽性に加え、同郷のメタル評論家でもある伊藤政則さんによる難解なライナーノーツ。そして、テキトーなオーディオ機器で再生しても “それなりに聴けてしまう” 音質の良さ。メタルを聴き始めた当時の私にとっては色々と正体不明のバンドでしたが、それでもついつい素性を探りたくなるような不思議な魅力を持っていました。

さて、”ワゴンの常連” としても知られている本作『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』ですが、安い=駄作というわけではありません。

もっとも、伝統的なヘヴィメタル以外を受け入れられない方々からは “グランジ/オルタナティブに魂を売った作品” といった不名誉なレッテルを貼られているようですが・・・まるで “産業グランジ” と化した次作以降の気怠い音楽性を考えれば、本作に漂う緊張感は余裕で Queensryche らしい作風と言えるのではないでしょうか。

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“日本語訳が欲しくなる” 本編と “本編を脅かす” ほどのボーナストラック

心臓の鼓動~心電図の音といった意味深な SE で始まる #1『9.28 a.m.』、壮大かつオリエンタルな雰囲気や Alice in Chains にも通ずるうねりのあるサウンドが彼らの新機軸を感じさせる #2『I Am I』、Pull Me Under (Images and Words) と As I Am (Train of Thought) を足して2で割ったようなグルーヴ・メタル・チューン #3『Damaged』、精神病院の様子を描いたヘヴィな歌詞にアコースティック・ギターとストリングス・サウンドが美しく絡みあう #4『Out of Mind』、Geoff さん自身のパーソナルな内容を描いた歌詞に呼応するかのような感情的なメロディラインが印象深い #5『Bridge』、強い緊張感に支配されたスローテンポの楽曲に絡む Geoff さんのサックスが都会的な退廃感の演出に一役買っている #6『Promised Land』、ファラオのように (聖飢魔II) 辺りをシンプルにした感じの Jazzy なアレンジにポエトリー・リーディング調の淡々としたボーカルが溶け込む #7『Disconnected』、ロック・オペラ的な楽曲構成が作品の “格” をワンランクアップさせている #8『Lady Jane』、バンドの社会派な一面が垣間見える歌詞にコマーシャルなニューメタル・サウンドが好相性な #9『My Global Mind』、シアトリカルなアレンジのミドル・チューンに乗せて Geoff さんのハイトーンボーカルが堪能できる #10『One More Time』、全編ピアノ演奏による楽曲と Geoff さんの表現力豊かなボーカルだけで楽曲の魅力を最大限に引き出している #11『Someone Else』。

なお日本盤には “Someone Else のバンド・サウンド・バージョン” や、ラスト・アクション・ヒーローのサントラにも収録されている『Real World』が収録されています。

Someone~ は Sentenced みたいなノリノリゴシック調のアレンジになっていて、これはこれで格好良いです。Real~ の時代劇みたいなイントロには意表を突かれますが、その後の楽曲展開はいつもの Queensryche 流パワー・バラードといった感じで、これまたクール。いずれも、Promised~ 本編の空気感を崩すどころか “本編を脅かすほどのキラー・チューン” ですので、できれば輸入盤ではなく日本盤を入手することをオススメします。

 

欧州的な暗さ → 米国的な暗さへの路線変更が生んだ “Operation: Mindcrime 1.5”

元々 Queensryche はステレオタイプなプログレメタル的サウンドを標榜するバンドといった感じではなく、”全盛期” と括られている80年代のディスコグラフィを振り返っても、似通った作りの作品は存在していません。そしてそれは、”グランジもどき” と一部リスナーから揶揄されている本作も同様です。

コンセプト・アルバムを思わせる SE や歌詞から “Operation: Mindcrime 1.5” 的な解釈もできるし、真逆の作風である “Empireの姉妹作” とも解釈できそうな作品ですが・・・

いずれにしても、この “内省的” かつ “渇いた” 音の響きは非常に90’sアメリカ的であり、欧州的な暗さを表現していた以前までの彼らにはない “渋味” が感じられます。アプローチはだいぶ異なりますが、Tool をプログレとして聴けるタイプのリスナーには比較的受けが良さそうです。

余談ですが、本作の “終盤に行くにつれて徐々に靄が晴れていく” 構成には、どことなく『夜明けの口笛吹き』を彷彿とさせるものを感じました(記事内容的には Pink Floyd の 1st だと思われるかもしれませんが、奥山キイチさんによる同名フリーゲームのほうです)。

 

プログレメタルの “多様化” に貢献するも、自らの首を絞めるキッカケとなった作品

ぶっちゃけ、EP 〜 Empire までで括りたくなる方も多いかと思います。ただ、個人的には EP 〜 Promised Land までを “全盛期” ということで一括りにしたいところです。

前作までの作風を基準にすると変わり種に見えてしまいがちですが、本作は Pain of Salvation などの “枠にとらわれないプログレメタル・バンド” が出てきやすい下地を作った草分け的な作品だと思いますし、Operation~ と同様、歴史的価値は非常に高いと感じています。

ちなみに本作は Operation~ と並ぶ100万枚を売り上げているものの、それ以降は 2006年に『Operation: Mindcrime II』が登場するまで、右肩下がりででセールスが伸び悩むこととなります。

Promised~ 自体は非常に意欲的・挑戦的な素晴らしい作品だと思いますが “中途半端に売れてしまった” がゆえ、次作『Hear in the Now Frontier』以降のオルタナティブ/グランジ路線で “イケる” と本人達(というか Geoff Tate さん)に勘違いさせてしまった戦犯的な存在とも言えるかもしれません。

せめて、本作レベルの個性を保ったままグランジ/オルタナ路線へ移行していればファン離れはもう少し抑えられたのかもしれませんし、もっと欲を言えば Operation: Mindcrime ~ Empire 路線を貫く90年代 Queensryche が見たかった気もします。

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