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音楽のこと

【鋼】Queensryche『Empire』レビュー

2016年9月3日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1990年リリース。前作『Operation: Mindcrime』から2年ぶりとなる通算4作目のフルアルバムであり、全米で300万枚・イギリスでは約6万枚・カナダで約10万枚売れた作品として知られています。

いきなり話が若干横道に逸れますが・・・国内で最も売れた Final Fantasy は8ですが、一般的に代表作とされているのは7です。7が支持されたからこそ、続編を期待するアーリーアダプター層は8の購入に踏み切ったと言っても過言ではないでしょう。

これを Queensryche にそのまま当てはめるのであれば、本作の300万枚というセールスはある意味 "Operation〜 に対しての評価" であるとも言えると思います(ちなみに Operation〜 は約100万枚)。

冒頭から「だから何なんだ」的な話を先にしてしまいましたが、決して本作を乏しめようとしたわけではありません。300万枚というセールスに恥じない完成度である、ということが言いたかっただけです。

そんな本作『Empire』からは、「Operation〜 で取りこぼした層にも Queensryche サウンドをアピールしよう」という作り手側の熱意や野心が感じられます。

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"明るい" Operation: Mindcrime

効果的に挿入されるキーボード・サウンドや【2分40秒】辺りからの変拍子パートが "前作と似て非なる" 本作の立ち位置を表している #1『Best I Can』、前作の Breaking the Silence をゴージャスに飾り付けした感じの #2『The Thin Line』、Revolution Calling で確立した Queensryche 流ハードロックが堪能できる #3『Jet City Woman』、渋めのベースに味わい深いギターが絡むアダルトな雰囲気の #4『Della Brown』、ロッキーのテーマを彼ら流に料理した感じの #5『Another Rainy Night (Without You)』、70'sハードロック的な "溜め" 感と荘厳なメタル・サウンドが融合した #6『Empire』、彼らには珍しいアメリカン・ロックに16ビートのハイハットが絡む #7『Resistance』、Tonight, Tonight (Smashing Pumpkins) を彷彿とさせる美しいストリングス・アレンジが心地良い #8『Silent Lucidity』、イントロ〜Aメロのアメリカン・ロック的な流れとサビの哀愁メロハー・サウンドとの極端過ぎるギャップが独特の味を醸し出している #9『Hand on Heart』、Rush を思わせるスペーシーなメロディ&リフに【2分54秒】辺りからの Radiohead を思わせるサイケデリックな間奏パートが違和感なく溶け込む #10『One and Only』、次作への橋渡し的な空気感を持つ不穏なギター・サウンドや終盤のキラキラ系シンセを経て "海辺" を思わせる SE によるアウトロで締めくくる #11『Anybody Listening?』。

基本的には Operation〜 の延長線上にある "正統派メタルを経由したメロディアス・ハードロック" ですが、前作における『Speak』『Spreading the Disease』『The Needle Lies』などのスピード・チューンは一切存在しません。ぶっちゃけ、黄金期の Judas Priest 的な疾走感をこのバンドに求めている方々にとっては退屈な作風でしょう。

その一方で、前作には『Revolution Calling』『The Mission』『Breaking the Silence』『I Don't Believe in Love』『Eye of a Stranger』といったミドルテンポの名曲も山ほど存在しています。ですので、前作を点ではなく "線" で楽しんでいた方は本作も問題なく楽しめるはずです。

また、マイナーコード主体の暗い曲調が多いこのバンドにおいて "明るいメロディラインが時折顔を覗かせる" 楽曲が多く収録されているのも、本作の特徴だと思います。

とりわけ、#7『Resistance』のような全編通して明るい雰囲気の楽曲は、本作以前の彼らの作品では聴くことができません。一応 2nd『Rage for Order(邦題:炎の伝説)』収録曲の "Gonna Get Close to You" もメジャー調の楽曲ですが、元々カバー曲ですし、底抜けに明るいって感じでもないんですよね・・・

 

"前衛的な雰囲気" も "疲労感" も無い、だからこそ "良い"

イメージ的には、前作『Operation: Mindcrime』の精神的なプログレ要素+物理的ハードロック要素をベースに『Rage for Order』の物理的なプログレ要素を復活させつつ、次作『Promised Land(邦題:約束の地 ~プロミスト・ランド~)』の "渋み" もちょっとだけ顔を出しつつある作品、といった感じです。まさに "良いトコ取り"。

ここには、Rage〜 の前衛的な雰囲気も、Operation〜 を聴いた後の疲労感もありません。いや、無いからこそ "良い" のです。

Queensryche というバンドは、ただでさえ "緊張感の塊" みたいな音楽性を持つバンドであり、名盤と言われている作品でも人を選びます。そんな中、Queensryche を知らない方にも気軽に薦められる唯一の "らしい" 作品かもしれません。本作以降のグランジ/オルタナ系作品から入ってしまうと、それはそれでまた誤解を受けそうな気もしますし・・・色々考えると、本作が入門作としてはベストだと思います。

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