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音楽のこと

【鋼】Judas Priest『Rocka Rolla』レビュー

2016年7月20日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1974年リリース。"コカコーラ" もどきのジャケット写真でおなじみの1stアルバムです。一部のリイシュー(再発)盤には “武装した人型の生き物が空を飛んでいる” 感じの格好良いジャケットのものも存在しますが、出オチ感で言えばやはりコチラでしょう。

次作『Sad Wings of Destiny(邦題:運命の翼)』以降しばらく、1年ごとにスタジオアルバムをリリースしていく彼らですが、本作から Sad Wings〜 のリリースまでは2年のブランクがあります。詳しいことはわかりませんが、おそらく "次作以上に" 方向性に悩んでいた時期だったのではないでしょうか。

そんな彼らの深層心理を反映しているかどうかはわかりませんが、本作は とにかく "暗い" し "重い" のが特徴です。

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サバスの暗黒要素を薄めて、サイケ&プログレ要素をゴッタ煮した感じ

70'sハードロック御三家で言うと初期Black Sabbath辺りをお手本にしていたであろうそのサウンドからは、ドゥームメタルの香りがプンプン漂ってきます。次作にも『The Ripper』などのサバス臭い曲が一部ありましたが、どことなくメジャー感がある向こうに比べ、こちらは(全編通して)マイナー臭が強めです

いきなり変則的なリズムのミドル・チューンで幕を開ける #1『One for the Road』、怪しげなメロディの導入部〜マイナーコードのキャッチーなサビ〜サビ直後のメジャーコードの間奏部分…それぞれのギャップが面白い #2『Rocka Rolla』、約1分間のドローン音&サイケデリックなボーカルによるイントロが耳に残る #3『Winter』、Electric Ladylandの#1を彷彿とさせるジミヘン風ギターが延々と鳴り響く #4『Deep Freeze』、牧歌的な雰囲気のインスト曲 #5『Winter Retreat』、ハーモニカ?の味わい深い音色がクセになる #6『Cheater』、陰鬱さとグルーヴが同居したミドル・チューン #7『Never Satisfied』、ムーディーな導入部&間奏や変則的な楽曲構成にストーリー性を感じる8分超の長尺曲 #8『Run of the Mill』、ブルージーなメロディの前半〜高揚感を煽る後半の二部構成になっている #9『Dying to Meet You/Hero, Hero』、寂しげなアウトロで幕を閉じる #10『Caviar and Meths』。

後追い組ならではの視点から見ると、グランジの代表的バンド『Alice in Chains』や、ドローン・ドゥーム界隈のバンドを彷彿とさせる箇所(巷で言われている "ジミヘンっぽいギター" の個人的解釈になるのかも…?)もあるように感じました。

Alice in Chains はサバスの影響下にあるバンドだし、ドローン系バンドも大元を辿ればドゥームメタルに行き着くので、おそらくそういった印象を受けたのかもしれません。

 

実は "90年代の閉塞感" を先取りしていた作品

ハッキリ言って、ここには "メタルゴッドJudas Priest" の姿はありません。次作における『Tyrant』のようなスピード・チューンも皆無です。

しいて言うなら、次作の "大作主義" 的な要素を感じる曲がちらほらと見え隠れしている気がします。例えば#5〜#6の組曲的な構成だったり、長尺の#8だったり、#9の二部構成だったり・・・

実は本作にも "プログレッシブ・ロック" 的なアプローチをしたかったであろう痕跡が残されているんですよね。表面的にはドゥーム寄りの陰鬱なハードロック作品なんですが、(プログレ要素を含め)色々な音楽性を試していたんだと思います。

ともあれ本作を聴くと、次作『Sad Wings of Destiny』がいかにバランスの取れた作品であるかがわかります。

次作と同様、"スピード感の無いJudas Priest" に興味が無い方は、本作を聴く必要はありません。これはむしろドゥームメタルや陰鬱系のグランジが好きな方々に聴いてほしいです。あの "ステレオタイプなヘヴィメタルの教祖" の処女作が、実は "90年代の閉塞的なロックを先取りしていた" という事実に驚くと思います。

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