HAGANEYA(@imech_jp)です。
1988年リリース。前作『Among the Living』から1年ぶりとなる通算4作目のフルアルバムであり、アメリカで50万枚のセールスを記録した作品です。プロデュースは、Suicidal Tendencies などとの仕事で有名な Mark Dodson さんが担当。
アートワークは、モンキー・パンチさんの代表作 "ルパン三世" の作風に多大な影響を与えたことで知られる漫画家(兼 風刺画家) Mort Drucker さんが手掛けています。
その、メタル・バンドらしからぬサイケデリックなアートワークに一瞬「大丈夫か?」と不安になる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、肝心のサウンドは前作の延長線上の作風となっています。
ハードコア要素が強い前作を踏襲しつつ "ややメタル側に揺り戻した" サウンド
- Be All, End All
- Out of Sight, Out of Mind
- Make Me Laugh
- Antisocial
- Who Cares Win
- Now It's Dark
- Schism
- Misery Loves Company
- 13
- Finale
基本的には、前作で確立したクロスオーバー・スラッシュ路線を踏襲している上に、前作と同様全ての楽曲が走っています。この時点で、スピードメタルのファンとハードコアのファンは安心して本作を手に取って大丈夫だと言えるでしょう。
前作との違いとしては "楽曲構成がやや凝っている" ことが挙げられます。サイドプロジェクト『S.O.D.』の音楽性を逆輸入しハードコア要素が強くなり過ぎた前作に比べると "ややメタル側に揺り戻した" 感じでしょうか。とは言え、1st『Fistful of Metal』や 2nd『Spreading the Disease(邦題:狂気のスラッシュ感染)』の正統派メタル路線が復活したわけではなく、あくまでもスラッシュメタルの範疇においてです。
また、前作と比べると "どことなく陰りのある" メロディラインも印象的です。ただ、次作のシリアスな雰囲気に比べると、まだまだ "元気なAnthrax" のほうが勝っているように感じます。
ちなみに個人的に気になるのは、#4『Antisocial』と #8『Misery Loves Company』の2曲です(他の曲も良曲揃いですが、前作とスタイルがほぼ一緒なので割愛します)。
まず #8 ですが、前作にありそうで無いタイプの楽曲だと感じました。Iron Maiden 的なギャロッピングと Anthrax お得意の裏打ちドラムが部分部分で融合しており、該当箇所だけを聴くとドラマーが2人いるように聴こえます。
また #4 は、フランスのハードロック・バンド『Trust』のカバー曲です。Nicko McBrain さんと、故・Clive Burr さんが入れ替わりで在籍していたバンドとして有名であり、サウンドにもどことなく Iron Maiden を思わせる雰囲気があります。
Anthrax によってカバーされた同曲は原曲よりもスピード感が大幅に上がっているため、満足感はかなり大きいです。しかも、スピード感の向上に伴って "イントロのエモコア感" も原曲以上に増しており、Anthrax の柔軟な立ち位置を反映したかのような選曲&アレンジにセンスの良さを感じます。
『Spreading~』とはまた異なる形で Anthrax のルーツに触れられる作品
前作・前々作が有名過ぎて相対的に影が薄くなってしまっていますが、本作も紛れもなく "名作" クラスだと言い切って問題無いでしょう。
とりわけ『Among〜』の作風が好きなのであれば、セットで聴くことをオススメします。『Spreading〜』とはまた異なる形で、Anthrax のルーツに触れることができる作品です。
なお、次作『Persistence of Time』は、90年代の波に飲み込まれることをギリギリの所で防いだ "スラッシュ期最終作" となっています(彼らの音楽的葛藤が見え隠れしており、巷では賛否両論となっているようですが・・・)。
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