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音楽のこと

【鋼】Queensryche『Operation: Mindcrime II』レビュー

2016年9月15日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

2006年リリース。前作『Tribe』から3年ぶりとなる通算9作目のフルアルバムであり、1988年に彗星の如く現れた歴史的コンセプト・アルバム『Operation: Mindcrime(以下O:M1)』の正統続編として18年ぶりに制作された "シリーズ完結作" です。

プロデューサーには、米オルタナティブ・ロック・バンド Third Eye Blind の元メンバーでもある Jason Slater さんを起用。ちなみに彼は、10th『American Soldier』11th『Dedicated to Chaos』さらには、Queensryche 名義で出した Geoff Tate さんのソロ・アルバム『Frequency Unknown』のプロデュースも担当しています。

Sister Mary 役には O:M1 から Pamela Moore さんが続投。 そして Dr. X 役に、今は亡き Ronnie James Dio さんを迎え、対外的には万全の状態でリリースされた作品・・・のはずなんですが、後述する "リリースに至る経緯" があまりにも泥沼過ぎる上に、取って付けたような "O:M1の後日談" 的シナリオが足を引っ張り、巷では "失敗作寄りの賛否両論作" といった微妙な評価にとどまっているようです。

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"低迷期" をスルーしたか否かで、第一印象が大幅に異なる

  1. Freiheit Ouvertüre
  2. Convict
  3. I'm American
  4. One Foot in Hell
  5. Hostage
  6. The Hands
  7. Speed of Light
  8. Signs Say Go
  9. Re-Arrange You
  10. The Chase
  11. Murderer?
  12. Circles
  13. If I Could Change It All
  14. An Intentional Confrontation
  15. A Junkie's Blues
  16. Fear City Slide
  17. All the Promises

本作は、聴く人によって第一印象が大きく異なります。3rd『O:M1』や 4th『Empire』以降の低迷期をスルーしたリスナーの多くは、おそらく "オルタナ色が鼻に付く" と感じたはずです。

一方、低迷期のオルタナ路線を通過してきたリスナーには "全盛期の Queensryche サウンドがやや戻ってきた" と好意的に受け取った方が多いのではないでしょうか。なぜなら、彼らのディスコグラフィを全て通過してきた方々にとって、Queensryche がオルタナ化したのは本作リリース時から10年以上も前の話であり、語弊を承知の上であえて言うならば "免疫が付いている" からです。

実際本作は、オルタナ化以降の Queensryche からは聴けなかった "あの頃の" メロディラインやリフが一部の楽曲で復活しています。

往年の Queensryche サウンドにモダンな音楽性が融合した #3『I'm American』を始め、名曲 Revolution Calling を渋めにアレンジした感じの #4『One Foot in Hell』や Breaking the Silence の緊張感溢れる雰囲気に通ずる #6『The Hands』など、楽曲単体で見ていくと良曲が無いわけではありません。少なくとも、低迷期のオルタナ御三家(Hear in the Now FrontierQ2K・Tribe)からは考えられないほど "あの頃" の音です。

中盤〜終盤の楽曲も "影の薄さ" は若干気になりますが、コンセプト・アルバム然としたシアトリカルなアプローチと言われれば、そんな気もしてきます。

本作が退屈に聴こえてしまう理由はおそらく "O:M1にシングル集レベルのキャッチーな楽曲が揃い過ぎていた" からであり、"コンセプト・アルバムらしさ" で言うならむしろ本作のほうが上かもしれません。

 

人が死にまくれば感動作品が出来上がるわけではない

にも関わらず O:M1 ほど感情移入できない原因は、やはり "ストーリー" にある気がします。

参考記事

17年目(!?)の『オペレーション:マインドクライム』|SPILL THE BEANS!~Talkin' Bout A Revolution ※ネタバレ注意

ネタバレになってしまうので詳しくは触れませんが・・・Queensryche に限らず「人が死にまくれば感動作品が出来上がるわけではない」ということを、アメリカ人はもう少し真剣に考えないといけないと思います。

盟友 Dream Theater の『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』も人によってはストーリーが陳腐だと感じられるかもしれませんが、向こうには "驚き" がありました。

"復讐劇" というテーマ以外に売りが無い本作が、Metropolis: Pt. 2 や O:M1 に比べて "弱い" と思われてしまうのも仕方ありません。続編出すのは全然構わないけど "出すなら出すでもう少し練ってほしかった" というのが本音です。

 

"O:M1の続編" として出さなければ名盤扱いされていたかも

メタルファンにとって "歴史的名盤の続編が聴ける" というのは夢のような話ですが、本作リリースに至る経緯を知ってしまうと、個人的には複雑な心境です。

Geoff さんの妻であり、本作からバンドのマネージメントを担当している Susan Tate さんからの「O:M1の続編を作ろう」という提案に、Geoff さん以外の創設メンバー3人(Michael Wilton・Eddie Jackson・Scott Rockenfield)が難色を示したことや "その理由" を聞くと、いかに3人の態度がファン目線の誠実なものであったかがわかります(詳しくは Wiki をご覧ください)。

クレジットを見てみても3人は明らかに冷遇されており、ほぼ Geoff さんのソロ・プロジェクトみたいな状態にも関わらず "意外と聴ける" というのが何とも皮肉な作品です。

O:M1 の価値を落としたとまでは言いませんが、ストーリーの練り込み不足感を考えると「焦って出すほどの作品でもなかったのかな・・・」と思います。

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