HAGANEYA(@imech_jp)です。
2006年リリース。前作『Tribe』から3年ぶりとなる通算9作目のフルアルバムであり、1988年に彗星の如く現れた歴史的コンセプト・アルバム『Operation: Mindcrime(以下O:M1)』の正統続編として18年ぶりに制作された "シリーズ完結作" です。
プロデューサーには、米オルタナティブ・ロック・バンド Third Eye Blind の元メンバーでもある Jason Slater さんを起用。ちなみに彼は、10th『American Soldier』11th『Dedicated to Chaos』さらには、Queensryche 名義で出した Geoff Tate さんのソロ・アルバム『Frequency Unknown』のプロデュースも担当しています。
Sister Mary 役には O:M1 から Pamela Moore さんが続投。 そして Dr. X 役に、今は亡き Ronnie James Dio さんを迎え、対外的には万全の状態でリリースされた作品・・・のはずなんですが、後述する "リリースに至る経緯" があまりにも泥沼過ぎる上に、取って付けたような "O:M1の後日談" 的シナリオが足を引っ張り、巷では "失敗作寄りの賛否両論作" といった微妙な評価にとどまっているようです。
"低迷期" をスルーしたか否かで、第一印象が大幅に異なる
- Freiheit Ouvertüre
- Convict
- I'm American
- One Foot in Hell
- Hostage
- The Hands
- Speed of Light
- Signs Say Go
- Re-Arrange You
- The Chase
- Murderer?
- Circles
- If I Could Change It All
- An Intentional Confrontation
- A Junkie's Blues
- Fear City Slide
- All the Promises
本作は、聴く人によって第一印象が大きく異なります。3rd『O:M1』や 4th『Empire』以降の低迷期をスルーしたリスナーの多くは、おそらく "オルタナ色が鼻に付く" と感じたはずです。
一方、低迷期のオルタナ路線を通過してきたリスナーには "全盛期の Queensryche サウンドがやや戻ってきた" と好意的に受け取った方が多いのではないでしょうか。なぜなら、彼らのディスコグラフィを全て通過してきた方々にとって、Queensryche がオルタナ化したのは本作リリース時から10年以上も前の話であり、語弊を承知の上であえて言うならば "免疫が付いている" からです。
実際本作は、オルタナ化以降の Queensryche からは聴けなかった "あの頃の" メロディラインやリフが一部の楽曲で復活しています。
往年の Queensryche サウンドにモダンな音楽性が融合した #3『I'm American』を始め、名曲 Revolution Calling を渋めにアレンジした感じの #4『One Foot in Hell』や Breaking the Silence の緊張感溢れる雰囲気に通ずる #6『The Hands』など、楽曲単体で見ていくと良曲が無いわけではありません。少なくとも、低迷期のオルタナ御三家(Hear in the Now Frontier・Q2K・Tribe)からは考えられないほど "あの頃" の音です。
中盤〜終盤の楽曲も "影の薄さ" は若干気になりますが、コンセプト・アルバム然としたシアトリカルなアプローチと言われれば、そんな気もしてきます。
本作が退屈に聴こえてしまう理由はおそらく "O:M1にシングル集レベルのキャッチーな楽曲が揃い過ぎていた" からであり、"コンセプト・アルバムらしさ" で言うならむしろ本作のほうが上かもしれません。
人が死にまくれば感動作品が出来上がるわけではない
にも関わらず O:M1 ほど感情移入できない原因は、やはり "ストーリー" にある気がします。
参考記事
17年目(!?)の『オペレーション:マインドクライム』|SPILL THE BEANS!~Talkin' Bout A Revolution ※ネタバレ注意
ネタバレになってしまうので詳しくは触れませんが・・・Queensryche に限らず「人が死にまくれば感動作品が出来上がるわけではない」ということを、アメリカ人はもう少し真剣に考えないといけないと思います。
盟友 Dream Theater の『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』も人によってはストーリーが陳腐だと感じられるかもしれませんが、向こうには "驚き" がありました。
"復讐劇" というテーマ以外に売りが無い本作が、Metropolis: Pt. 2 や O:M1 に比べて "弱い" と思われてしまうのも仕方ありません。続編出すのは全然構わないけど "出すなら出すでもう少し練ってほしかった" というのが本音です。
"O:M1の続編" として出さなければ名盤扱いされていたかも
メタルファンにとって "歴史的名盤の続編が聴ける" というのは夢のような話ですが、本作リリースに至る経緯を知ってしまうと、個人的には複雑な心境です。
Geoff さんの妻であり、本作からバンドのマネージメントを担当している Susan Tate さんからの「O:M1の続編を作ろう」という提案に、Geoff さん以外の創設メンバー3人(Michael Wilton・Eddie Jackson・Scott Rockenfield)が難色を示したことや "その理由" を聞くと、いかに3人の態度がファン目線の誠実なものであったかがわかります(詳しくは Wiki をご覧ください)。
クレジットを見てみても3人は明らかに冷遇されており、ほぼ Geoff さんのソロ・プロジェクトみたいな状態にも関わらず "意外と聴ける" というのが何とも皮肉な作品です。
O:M1 の価値を落としたとまでは言いませんが、ストーリーの練り込み不足感を考えると「焦って出すほどの作品でもなかったのかな・・・」と思います。
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