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音楽レビュー

【鋼】Dream Theater『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』レビュー

2016年8月18日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1999年リリース。『Falling Into Infinity』から2年ぶりとなる5作目のフルアルバムであり、前作までキーボードを担当していた Derek Sherinian さんの後任として、本作から Jordan Rudess さんが加入しています。

本作によって完成した布陣は、2010年にドラムの Mike Portonoy さんが脱退するまで固定されることになるため、いかに Jordan さんとバンドとの相性が良かったかがわかります。バンドに限らず、優れたスキルだけでチームを良好なまま保ち続けることは難しいですし、おそらく彼の人柄の良さも大きく関わっているはずです(前任の2人が悪かったという意味ではなく)。

私が本作と出会ったのは、実は 2nd『Images and Words』よりも先になります。3rd『Awake』および 4th『Falling Into Infinity』の2作を聴いたことによって、私の Dream Theater に対する興味は急激に上がり「そろそろ世間で言われている "名盤" に手を出してみよう」と思い、Images〜と並ぶ名作として有名な本作を手に取りました。先に聴くことになった理由は "たまたま中古で見つけた" からです(当時2,000円前後でした)。

そういった経緯もあり、当時はこの作品が "2ndに収録されている『Metropolis Pt. I: The Miracle and the Sleeper』という曲の続編" であるという知識も一切無く、さらには "コンセプト・アルバム" であることも知らない状態で聴きました。

そこで私が率直に感じたことは「なるほど・・・これが Dream Theater か」という、根拠の無い "納得感" です。既に別の作品を3作も聴いているにも関わらず、なぜか本作からは "謎の説得力" を感じたのを覚えています。

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"世にも奇妙な物語" みたいなシナリオは必見だけど、音だけでも楽しめる

催眠療法士のセリフに続いて LaBrie さんの暖かみのある歌声が聴こえてくる #1『Regression』、 Metropolis Pt.I を想起させるイントロもさることながら "彼らにしては珍しく" テクニカルなプレイを抑え美しいメロディの表現に徹しているインスト曲 #2『Overture 1928』、前曲からの組曲的な構成を持ちつつ2分38秒辺りからのラフなハードロック・パートが良いアクセントになっている #3『Strange Deja Vu』、次曲への繋ぎの役割を果たす1分程度のバラード曲 #4『Through My Words』、パイプオルガンによるシアトリカルな雰囲気の前半パートを経て4分11秒辺りからのキーボード&ギターの応酬が物語の劇的な展開を表している #5『Fatal Tragedy』、エクストリームなアプローチの楽曲の中に Radio Head・Metallica・Pink Floyd など様々なバンドのオマージュが隠されている #6『Beyond This Life』、冒頭の女性ボーカルに続く LaBrie さんのバラードが Act.1 の終幕を告げる #7『Through Her Eyes』。

Tool を彷彿とさせる中東風の楽曲の中に Metropolis Pt.I の一部メロディ(と喘ぎ声)が違和感なく溶け込んでいる #8『Home』、前曲とは対照的に "やや強引にねじ込んだ" Metropolis Pt.I のメロディ・2分32秒辺りからのキュートなジャズピアノ・3分7秒辺りからの超高速ベース…とゴッタ煮状態にも関わらず不思議と統一感を感じる #9『The Dance of Eternity』、Queensryche系のシリアスなメロディによる前半パートを経て Overture1928 をドラマティックにアレンジした後半パートへと続く #10『One Last Time』、普通に良いバラード曲というだけでなく "歌詞の内容" を知っているとより感情が乗っかってくる #11『The Spirit Carries On』、前曲から一転 "不穏な空気" に支配されたサウンドが予想外の結末への "前フリ" となっている #12『Finally Free』。

全12曲が1枚に収録されていますが、厳密には #1〜#7 までを Act 1、#8〜#12 までを Act 2 とした "二部構成" です。にも関わらず、#7 → #8 が割と間髪入れずに始まってしまうので、個人的にはもうちょい無音時間を入れたほうが "LP" 感が出て良くなった気がします。

さて、本作は "コンセプト・アルバム" と呼ばれる類の作品となるわけですが・・・個人的にはあまりそういったことを意識せず、普通に "格好良いプログレメタル" として楽しめました。

中には「良さが理解出来なかったら、何十回〜何百回聴け」などと仰る方もいらっしゃいますが、個人的には「その手の言い分が通用するのは、せいぜい3回〜多くても10回だろう」と思います。そこまでしっかり聴かせた上で作品の意図が伝わらないのであれば、これはもう "作り手側の配慮が足りなかった" と言われても仕方がないわけです。

そういった点を踏まえると、本作は(勘が良ければ)"1回通しで聴いただけですぐに良さが伝わる" タイプの作品と言えます。

"輪廻転生" なんてテーマ、正直どうだって良いんです。もちろん、歌詞カードとにらめっこしながら聴けばより世界観を楽しめるのは事実ですが "歌詞カードとにらめっこしなくても楽しめる" のが、この手の作品を音楽だけで再現することの醍醐味ではないでしょうか。

実際、本作は(本作に限らずこのバンドは)あえて歌詞を追いかけずとも "音の表現力" だけで情景が浮かぶような作りになっています。SE や台詞が効果的に散りばめられているので、"音だけでも楽しめるコンセプト・アルバム" とも言えるでしょう。

ちなみに、以下のブログが非常にわかりやすくストーリーをまとめてくれているので、気になる方は参考にされてみてください。

参考記事
metropolis PT.2 解説|YAMAOKAブログ ※Act 1

metropolis pt2第二幕|YAMAOKAブログ ※Act 2

「どうだって良い」と言っておきつつ、最後の "世にも奇妙な物語" みたいな終わり方は結構ゾッとします。それにしても、バカみたいなハッピーエンドの映画ばかり作る(イメージが強い)アメリカから、この "伏線貼りまくりな" シナリオが生まれたという事実がいまだに信じられません。

あと、本作が巧いな〜と感じるのが、Act 1を "サクッと" 駆け足で終わらせ、Act 2を "じっくり" 聴かせるような作りにしているところです。こう書くと語弊がありますが、要は "ライトな聴き方も出来るよう配慮されている" ということであり、このことが本作の "取っつきやすさ" へと繋がっているのだと思います。

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"旧Dream Theater" と "新生Dream Theater" のターニングポイント

あえて "粗探し" をするのであれば、Jordan さん加入以降の作品によくみられる "力くらべ" 感が既に顔を出し始めていることと "先人へのオマージュが過ぎる" ことぐらいでしょうか。人によっては不快感に感じるかもしれない#8の喘ぎ声は、いかにもアメリカ人が考えそうな描写なので "ご愛嬌" ですね。

オマージュに関しては、個人的には肯定派なので逆にどんどんやってもらって構わないかな・・・といった感じです。人によっては Genesis・ELP・Pink Floyd・Kansas などのパクリと感じる箇所が結構あるみたいですが、そもそもそういった先人をルーツに持つジャンルのバンドなわけで「それ言い出したらキリが無いでしょ」と思います。

ただ、Jordan さん加入のきっかけとも言えるサイド・プロジェクト『Liquid Tension Experiment(通称:LTE)』からの影響が強過ぎるがあまり "本家まで飲み込まれてしまった" のは、Kevin〜Derek派としては若干残念ではあります。LTE もあれはあれで一つのプロジェクトとしては素晴らしいのですが、Dream Theater には "バトル" ではなく "芸術作品" を望んでいるので「何とか "棲み分け" 出来なかったかなぁ・・・」といった想いはいまだに大きいです。既にこの作風が定着してしまった以上、今更グダグダ言っても仕方ないことですが・・・

繰り返しになってしまいますが、本作は後の作品にやや見られる "やり過ぎ(弾き過ぎ)" 感もそこまで無く、2nd〜4th までが好きな方もすんなり聴ける作品だと思います。

 

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