HAGANEYA(@imech_jp)です。
2006年リリース。前作『God Hates Us All』から5年ぶりとなる通算9作目のフルアルバムです。
プロデュースはオルタナ界隈のバンドとの仕事で有名な Josh Abraham さんが担当。過去作と同様、エグゼクティブ・プロデューサー名義で Rick Rubin さんもクレジットされています。
アートワークには、全盛期の3作品(3rd〜5th)を手掛けた Larry Carroll さんを26年ぶりに起用。ところが、インド・ムンバイのカトリック・セキュラー・フォーラム(CSF)などを皮切りに "描写" への批判が相次いだため、白地の背景からバンドロゴ部分をくり抜き、隙間から元の絵が若干見切れるという別バージョンのアートワークも存在しています。
さて、本作はオリジナル・ドラマー Dave Lombardo さんの復帰後初となるスタジオ作品です。前任者 Paul Bostaph さんの影響が色濃く表れていた過去3作のテクニカルなサウンドは何処へやら、まるで 5th『Seasons in the Abyss』の次にリリースされていてもおかしくないような作風が戻ってきています。
"Dave Lombardo 復帰" の影響がダイレクトに表れた、前のめりなスラッシュ・サウンド
通常盤
- Flesh Storm
- Catalyst
- Skeleton Christ
- Eyes of the Insane
- Jihad
- Consfearacy
- Catatonic
- Black Serenade
- Cult
- Supremist
限定版
- Flesh Storm
- Catalyst
- Skeleton Christ
- Eyes of the Insane
- Jihad
- Consfearacy
- Catatonic
- Black Serenade
- Cult
- Supremist
- Final Six
#4『Eyes of the Insane』を除く全ての楽曲に疾走パートが導入されている本作は、過去作で例えるなら 3rd『Reign in Blood』。スピードは若干落ちますが、同路線を待ち望んでいたのであれば "必聴" と言っても過言ではないでしょう。
前作の "露骨な Slipknot 臭" は一切せず、ミディアムテンポのパートも前々作『Diabolus in Musica』に見られたニューメタル由来のものとは毛色が異なります。
#1『Flesh Storm』はどことなく "Angel of Death" を、#2『Catalyst』は "War Ensemble" を彷彿とさせることからも、明らかに "ステレオタイプな Slayer サウンドを好む当時のファン" を狙い打ちした作品といった印象です。
一方で、初期のどこか危なっかしさを抱えた雰囲気はやや薄れてしまったような気もします(私の先入観もだいぶ入っているかもしれません)。
パッと見ではかなり忠実に80年代 Slayer を再現しているようにも思えるのですが、何となく物足りなさを感じてしまうのです。これが "最高傑作の焼き直し" に手を出してしまったがゆえの弊害なのでしょうか。
"スラッシュメタルの Slayer" を求めるファンの期待に応えた "復刻版" 的な作品
以前、スピード・メタルが大好きな友人に Children of Bodom を聴かせたら大ハマりしてしまい「チルボド以外で何かオススメ無い?」と聞かれたことがあります。その際に Soilwork や In Flames といった他のメロデス系バンドを薦めてみたのですが、その彼はあまりピンと来ていませんでした。
話が横道に逸れてしまいましたが・・・例えば彼に「Reign in Blood みたいなアルバムを教えてくれ」と頼まれたら、今の私は本作 "だけ" を真っ先にオススメするでしょう。
個人的には「Reign in Blood みたいなのばっかりだと飽きるから、God Hates Us All みたいな別路線に積極的に挑戦していくほうが見ていて面白いかな」というスタンスだったりするわけですが、やはりスラッシュメタルの Slayer を求めている方々にとっては、これ以上ないほどの "復活作" ではないでしょうか。
なお次作『World Painted Blood』では、メタルコア・シーンを意識した同時代性の高い音楽性が繰り広げられています。前後のアルバムの作風からもわかりますが、"Reign in Blood の復刻版" みたいな作風を持つ本作は、00年以降の Slayer としては "逆に" 異色作だったのかもしれません。
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