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音楽のこと

【鋼】Queensryche『Tribe』レビュー

2016年9月13日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

2003年リリース。前作『Q2K』から4年ぶりとなる通算8作目のフルアルバムです。

クレジット的には4人体制となっているものの、前々作『Hear in the Now Frontier』を最後に脱退した Chris DeGarmo さんが本作で再加入し10曲中5曲の制作に関わっているので、実質 "オリジナル・メンバー5人による復活作" と言ってしまっても良いと思います。

なお DeGarmo さんは、本作制作後に再脱退してしまったため "ゲスト" 扱いとなっていますが、Geoff Tate さんとの確執さえ無ければ(あるいは Geoff さんのバンド追放が早まっていれば)おそらく今でも現役メンバーとして活躍していたはずです。

ただ、Hear〜 のグランジ/オルタナ路線全開な音楽性が DeGarmo さんの手によってもたらされたものである以上、Geoff さんと DeGarmo さんのどちらがバンドに残っていたとしても全盛期の正統派メタル〜パワーメタルが復活することは無かったでしょうし、結果的に両方辞めて正解だった気もします(Geoff さんも2012年に脱退)。

さて、そんな本作は 5th『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』で提示され、6th 〜 7th で急速に接近することとなった "ポスト・グランジ/ニューメタル" 路線の作品です。

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“薄味” だけど耳馴染みの良いトライバル・ヘヴィ・ミュージック

  1. Open
  2. Losing Myself
  3. Desert Dance
  4. Falling Behind
  5. The Great Divide
  6. Rhythm of Hope
  7. Tribe
  8. Blood
  9. The Art of Life
  10. Doin' Fine

前作は "集積回路" をモチーフとしたアートワークとは裏腹に、インダストリアル・メタル要素は薄めでした。

で、案の定というか・・・本作は Tribe(直訳すると "部族")というタイトルから Soulfly などのトライバル系ニューメタルを連想しがちですが、同ジャンルの傾向である "パーカッシブなドラミング" や "呪術的な雰囲気" は、一部の楽曲にとどまっています。

私の聴く限りだと #2『Losing Myself』#3『Desert Dance』#7『Tribe』#8『Blood』辺りが前述の条件に当てはまっている印象です。とりわけ、表題曲の #7 は民族色が強く、Tool と Soulfly を足して二で割ったような奇妙なサウンドが楽しめます。

とは言え、他の楽曲にも "若干" ですがトライバルなドラムが隠し味程度に入っているため、やっつけ感が強目だった前作のアートワーク&作品タイトルと比べると、トータルでの世界観はしっかり作られている印象です。

 

過去2~3作の実験結果を総括した、低迷期脱出の “最後の砦”

今回、Hear〜 や Q2K での「とりあえずグランジ/オルタナ路線に挑戦してみました」感は意外にも少なく、むしろ Promised~ のような統一感ある作風へと回帰しています。

ただし、Promised〜 に比べると楽曲構成や曲順がやや起伏に乏しいです。いずれも低迷期の作品ですが、キャッチーな "Hear/Q2K派" と、渋めの "Promised/Tribe派" で好みが分かれるかもしれません。

ともあれ・・・5th 〜 8th(本作)は、いずれもオルタナ系の作品ですが、本作の小奇麗にまとまった曲構成やアレンジを目の当たりにすると「6th『Hear in the Now Frontier』〜7th『Q2K』期は彼らにとって "実験の真っ只中" だった」ということが何となく見えてきます。

以降の彼らは、再び "コンセプト" 重視の作風へと舵を切ることとなるわけですが、その "方向性の見極め" に大きく貢献したのが、本作を含む "低迷期の作品群" だったと言っても過言ではないはずです。

その証拠に、次作である 9th『Operation: Mindcrime II』にしても 10th『American Soldier』にしても、オルタナティブを経由した音楽性を擁しつつ "存在感" が大幅にアップしています。

もちろん、初期派からしてみれば相変わらず賛否の分かれる方向性でしょう。とは言え "駄作と揶揄されようが我が道を貫く" その姿勢には、もう片方の雄である Dream Theater とはまた別種のプログレッシブな精神性を感じます。

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