HAGANEYA(@imech_jp)です。
2003年リリース。プログレッシブ・メタル・バンド Dream Theater による7作目のアルバムであり、それまでにリリースされてきた作品中最もヘヴィな音楽性で知られています。
ちょうど12〜13年前のことです。当時勤めていた職場で「メタルにハマっている」という話をしたところ、歳の近い先輩から「Dream Theater とか Megadeth とか良いよね」という相槌が返ってきました。当時の私は "プログレメタル" という音楽があることを知らず、当然 Dream Theater の名前も知らなかったため、何となく話を合わせていたのを覚えています。
その後、職場の最寄りにある家電量販店に行き、CDを探していたところ唯一置いてあったのが本作です。当時の最新作ですね。
例のごとく、事前情報一切無しの状態で再生したCDから流れてきたのは、どことなく既視感のある超ヘヴィなサウンドでした。海外のロックと言えば "メロコア" と "ニューメタル" しか知らなかった当時の自分には、この音楽を解釈する術がなく「・・・あれっ、これってニューメタル?何か想像していたのと違うかも」と、ガッカリしたのを覚えています。
もちろん、この "違和感" をそのままにするつもりは一切なく「多分、先輩が言ってる作品ってこれじゃないんだろうな」とその後も探し続けた結果、歴史的名盤である 2nd『Images and Words』へと辿り着くわけです。
開き直って "Metallicaのモノマネ" を始めた最初の作品
当時の私が違和感を感じたのも無理はありません。なぜならこのバンドには大きく "2つの流派" があり、私が最初に手に取った作品は、先輩が話しながら頭に浮かべていたであろう "メロディ・サイド" の作風とは対極に位置する名盤だったからです。
Black Sabbath(黒い安息日) の導入部を彷彿とさせるイントロと Enter Sandman(Black Album) にも通ずるヘヴィなリズムでドゥームメタラーの心を鷲掴みにしそうな #1『As I Am』、Static-X風のダンサブルなイントロ〜A Perfect Circle の Rose(Mer De Noms) を思わせる呪術的なボーカル〜5分43秒辺りからのピアノ・パート〜7分15分辺りからの Blackened(...And Justice for All) などやりたい放題の #2『This Dying Soul』、One(...And Justice for All) を彷彿とさせる静かな導入部からのキャッチーなサビが格好良い #3『Endless Sacrifice』、裏打ちリズムをベースにニューメタル的なノリと変拍子を絶妙なバランスで融合した #4『Honor Thy Father』、次曲への組曲的な役割も持ちつつ LaBrie さんの荘厳なボーカルも堪能できる #5『Vacant』、2分48秒辺りからのレトロなストリングス・キーボードの音色~3分50秒辺りからの超速弾きギター~5分22秒辺りからのテンポ・ダウン~9分前後からのクラシカルなパート…と何度も印象的な場面が訪れるインスト・ナンバー #6『Stream of Consciousness』、1~6曲目までのヘヴィな雰囲気とは趣の異なる "美しいメロディのサビ" とは裏腹に当時の "アメリカ同時多発テロ事件" を想起させる歌詞が重くのしかかる名曲 #7『In the Name of God』。
本作以降のヘヴィ・サイドの Dream Theater の楽曲には、かなり色濃く Metallica の影響が現れがちです(特にグルーヴ・メタル期)。『Master of Puppets』のオフィシャルブートレグ(海賊盤風の公式作品)を出すほど好き過ぎるがあまり「自分らのナンバリング作品でも Metallica やっちゃおうぜ」と、悪ノリしてしまったのが本作・・・なのかもしれません。
これ以前にもヘヴィ・サイドの作品として 3rd『Awake』がリリースされていますが、本作のような "Metallicaカバー" 感は特に感じなかったので、乱暴な表現をするならば "開き直ってモノマネを始めた" 最初の作品と言えると思います。
ただ、Dream Theater の取り入れ方が "パクリ" かと言われると、単純にそうとも言い切れないんですよね・・・そもそも "何やらせても本家より上手く出来ちゃう" 上に "超絶技巧によるアレンジが入る" ので、むしろ "本家超え" しちゃってるとも言えます。
もちろん、James Hetfield さん (Metallica) と James LaBrie さん (Dream Thater) の声質・ボーカルスタイルは真逆ですし、作品が表そうとしている世界観も異なるわけで、どちらが優れているかどうかなんて簡単には決められません。あくまでも "技巧" においての話です。
実は弾数が少ない "ヘヴィ系Dream Theater" の代表作
"当時の自分が求めている作風ではなかった" 本作は案の定、数年寝かせることになりました。
購入直後はかなり落胆していた私ですが、Dream Theater の作品を次々と買い集めていく中で改めて本作を聴き直してみたところ、本作が持つ "オルタナティブ系の重厚感と超絶技巧が違和感なく融合" した作風に圧倒され、評価が180度変わりました。完全に "スルメ盤" です。
この手の "Metallica風Dream Theater" が好きであれば、本作に最も近いのが 10th『Black Clouds & Silver Linings』になります。ただ、本作のようにヘヴィ一辺倒といった感じではなく、メロディ寄りの作風とヘヴィ寄りの作風をバランス良くミックスさせた感じなので、攻撃性は(本作に比べると)控えめです。
というか、改めて彼らのディスコグラフィを振り返ってみると、意外とヘヴィ寄りの作品が少ないことに気付きました。そう考えると本作は "貴重な異色作" だったのかもしれません。
ただやはり "入門作" としてオススメできるかと聞かれると・・・「間違いなく名作だけど、入門作にはやめておいたほうが良い」と答えておきます。
なぜなら「Dream Theater って有名だけど、どんな音楽やってるのかな?」と興味を持たれた方がこの作品から入ってしまうと、良くも悪くも "世間一般が評価している本来の作風" ではない彼らのイメージが先に付いてしまうからです。どの作品から聴き始めても基本的にハズレは無いのですが "二面性が非常に強い" バンドなので、ヘヴィな作風が苦手な方の場合「思ってた音楽性と違うから、もう聴かなくていいや」となってしまう恐れがあります。
メロディ派の作風が肌に合わない方もいらっしゃるとは思いますが、一応の "基本フォーマット" として『Images and Words』もしくは『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』から入るのが無難でしょう。で、そちらの作品を聴いてピンと来なかったら、本作を聴いてみてください。
最新情報をお届けします