カーネギーさんの著書としては、『人を動かす』と『道は開ける』が2大代表作として知られています。
前者は "外" に向かって問題解決を試みるための本ですが、後者は逆に "内" に向かって問題解決を試みるための本だと言えるでしょう。
もっとも、アメリカの古~い自己啓発本ということもあり、キリスト教的な価値観の描写などに、一部「・・・ん?」と引っ掛かる箇所も無くはないです。とは言え、現代の日本人にも参考になる対処法がたくさん載っています。
かくいう私も、精神的にドン底だった2013~2014年の2年間は、本書によく助けられていました。読んでいて、ついつい「偉人のあんた達とは違うんだよ・・・」と弱音を吐きたくなる時もありましたが、2015年あたりから態勢を立て直し、今も何とか生き延びています。
1日24時間を "人生の縮図" と考える
何となく、人生=地続きのものだと考えてしまいがちです。一方、人は寝ることによって、ある意味 "1日1回、死んで生まれ変わっている" とも言えるでしょう。
「毎日23時59分に寿命が来て死ぬ」と考えると、何だかダラダラしているのがもったいなくなってきます。もっとも、その考えのまま実際に具体的な行動へ取り掛かれるかというと、日によってまちまちではあるのですが・・・
明日のことは "配慮" すべきである。
細心の注意を払って計画し準備すべきである。だが "心配" するには及ばない。
『道は開ける』29ページより引用
来るかどうかも分からない "明日の不運" について勝手に悲観することで、本来出せるはずのパフォーマンスが出なくなってしまっては本末転倒です。
長い目で見た目標設定などは大事ですが、将来を憂う必要はないということですね。
基本スタンスは「別に死んでもいいや」という開き直り
とうとう医者は、あと二週間ほどの命だと宣告した。目の前が真暗になった。
遺言をしたためてから、ベッドにもぐり込んで、臨終の時を待った。もはや、あがいても悩んでも役に立たない。
あきらめの境地になり、楽な気分で眠りに落ちた。ここ数週間、二時間とつづけて眠ったことはなかったが、この世の苦労も終りに近づいたとあって、乳飲み子のように眠った。
憔悴と消耗は失せはじめた。食欲はもどり体重も増えてきた。
二、三週間後には松葉杖をついて歩けるようになり、六週間後には仕事にもどることができた。
『道は開ける』38~39ページより引用
本書の事例集を読んでいて気付いたのですが、先人の方々の多くが、ほぼ同様の経緯を辿ってドン底を抜け出しています。
それが、生きるか死ぬかの瀬戸際で "死や絶望を前向きに受け入れようとした" ということです。
これは別に「自殺願望を持て」という話をしているわけではありません。
むしろ本書に出てくる先人達は、現世的・物質主義的な価値観に縛られ過ぎたことで精神が蝕まれているわけで。どちらかと言うと「このまま死んだら、あれもこれも手放さなければならない」という "未練" から精神面・体力面に支障をきたしている印象を受けました。
つまり、「死んだら死んだで仕方ない」と開き直ることによって "心の重荷を下ろす" ことに成功し、結果として生き延びることができたということなのでしょう。
"病は気から" なんて言葉もありますが、本書で紹介されている方々の復活劇は、それに近いものを感じます。
作業療法
「作業療法」というのは、労働が薬剤と同様の効果を持つと診断された際に、精神分析医が用いる専門用語である。
だが、別に目新しいものではない。古代ギリシアの医師たちはキリストの生誕より五百年も前に、このことを主張していた!
『道は開ける』95ページより引用
"仕事や予定をギュウギュウに詰めて動きまくることで、悩む暇すら無くなる" という話。
やや乱暴な対処法だし限度はあるかとは思いますが、この考え方も一理あると思いました。
別に「ブラック企業の従業員みたいに働け」というニュアンスではないと思います。仕事に限らず、趣味の予定を詰めまくったりしても良いわけですからね。
実際、暇になるとダラダラとネットサーフィンしたり、動画サイトやテレビのくだらないワイドショーなどをボーッと眺めたりしちゃいますからね。で、まとめサイトのしょうもない釣り記事やコメント欄の罵り合いなんかを見つけて、気分が悪くなっちゃったりして。
結局、暇になったらなったで "何かで埋めようとしてしまう" のが人間の性だと思います。
どうせ暇を埋めるんだったらネガティブな情報からは距離を置き、なるべく自分の身になりそうな予定で埋め尽くしたほうが、悩みの種を取り除くことへと繋がりやすいのかもしれません。
自分専用の "名言帳・格言帳" を作る
感銘を受けた作品のために、ノートか切り抜き帳を用意すること。
その中に、あなたを感動させ向上させる詩、短い祈りの言葉、引用文などをはっておくことにする。そうすれば陰気な雨の午後など、何となく気分がクサクサしてきたときに、このノートの中から気分を晴らしてくれるような詩や祈りの言葉が見つかるだろう。
例の診療所の患者の中には、長年こういうノートをつくっている人が多数いる。彼らはそれを精神的な「静脈注射」と呼んでいる。
『道は開ける』333ページより引用
最近は休みがちですが、以前は名言・格言をまとめた記事をブログに投稿していました。
ちなみに今でも、Evernoteには未投稿の名言・格言が山ほどストックしてあります。また気が向いたら、まとめてブログに投稿するかもしれません。
自分専用の名言・格言帳をつくるメリットは確実にあります。なぜなら、本書の内容だって "全部が全部ピンと来るものばかりとは限らない" からです。
例えば記事冒頭で触れたとおり、キリスト教色の強い描写などは、他宗教の読者を置いてけぼりにしてしまう可能性があります。とりわけ、実質 "無宗教" の国に住んでいる我々日本人なんかだと、そう感じてしまう方が多い気がしますね。
あとがき
『道は開ける』は、自己啓発本の草分け的存在の1つと言われています(ただおそらく、元祖は『原因と結果の法則』)。
本書に大きく影響を与えた『原因と結果の法則』も20代前半の頃によく読んでいたのですが、向こうはどちらかと言うとスピリチュアル色が強いんですよね。誰にでも当てはまりそうな言葉選び&ポエムのような簡潔な文章でとっつきやすい反面、内容が具体性に欠けるため、能動的に取り込もうとしないと「とにかくポジティブになろう!」みたいな解釈だけで終わっちゃいがちなのが難点です。
そう考えると本書は、数々の事例集や著者自身の見解などを盛り込むことによって誕生した、【具体性とボリュームを増強した『原因と結果の法則』】と言えるかもしれません。
『道は開ける』は "悩みが深ければ深いほど、あなたに寄り添ってくれる" 本です。
「もうこれ、完全に詰んだな・・・」と諦めてしまいそうなシチュエーションを乗り切った方々の事例が大量に載っているため、心に刺さるものが1つは必ず見つかるかと思います。
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