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音楽のこと

【鋼】Anthrax『Among the Living』レビュー

2016年10月27日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1987年リリース。前作『Spreading the Disease(邦題:狂気のスラッシュ感染)』から2年ぶりとなる通算3作目のフルアルバムであり、アメリカで50万枚のセールスを記録した作品です。

プロデュースは、Jimi Hendrix さんや Led Zeppelin などのエンジニアを経て、80年代からは Kiss を始めとする数多くの有名メタル・バンドを手掛けた "レジェンド" Eddie Kramer さんが担当しています。

Master of Puppets』リリース後のヨーロッパ・ツアー中にバス事故で亡くなった Cliff Burton さんに向けて作られた作品としても知られていますが、かと言って悲壮感に溢れた作風というわけでもありません。前作までの正統派メタル要素を抑え、代わりに後の彼らのトレードマークである "ストリート感" が大幅に強化されています。

そのサウンドはむしろ、彼らのサイド・プロジェクト S.O.D. (Stormtroopers of Death) の 1st『Speak English or Die』に近いというか・・・かなり影響を受けまくっており、スラッシュメタルというよりもむしろ "クロスオーバー・スラッシュ" な音楽性です。状況的には、Liquid Tension Experiment が本家 Dream Theater を音楽性で乗っ取ってしまった『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』期に通ずるものがあるかもしれません。

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"Oi! パンク" 的な要素も感じる、異色のスラッシュメタル

  1. Among the Living
  2. Caught in a Mosh
  3. I Am the Law
  4. Efilnikufesin (N.F.L.)
  5. A Skeleton in the Closet
  6. Indians
  7. One World
  8. A.D.I. / Horror of It All
  9. Imitation of Life

Metal Thrashing Mad (Fistful of Metal) → A.I.R. (Spreading the Disease) ラインの冒頭曲 #1『Among the Living』では、遂にメタルとハードコアの比率が2:8ぐらいまで逆転してしまっており、本作の幕開けを飾るに相応しい勢いのある楽曲となっています(ちなみに "Metal Thrashing Mad" が9:1で、"A.I.R." が5:5ぐらいのイメージ)。

また、#2『Caught in a Mosh』0分40秒辺りからのテンポアップする箇所、#3『I Am The Law』3分30秒辺りからのパート、#9『Imitation of Life』1分10秒辺りからのパートはもはや "ハードコアの疾走感" であり、該当箇所だけを切り取って聴くと、"S.O.D.の新作" と言われてもついつい信じてしまいそうです。

さらに、#4『Efilnikufesin (N.F.L.)』#5『A Skeleton in the Closet』#7『One World』などの楽曲では "掛け声" が取り入れられており、Oi! パンクのようなスポーティーな雰囲気作りに一役買っています。ここに、お馴染みの「タンッ!タンッ!タンッ!」という三三七拍子っぽいドラミングが絡むと、巷でも言われている通り "応援団" 状態に。

前作のメロディアスな正統派メタル要素がわずかに残る #6『Indians』や、『Ride the Lightning』を彷彿とさせる(Anthraxにしては)ドラマチックな楽曲構成の #8『A.D.I / Horror of It All』など、ハードコア一辺倒ではない懐の深さも兼ね備えており、意外にもバランスの取れた作品となっています。

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叙情性を抑えつつ "掛け声" を導入したことで、前作と並ぶ "Anthraxの代表作" に

前作の叙情性溢れるメロディアスな作風も素晴らしいのですが、もし本作を前作と同路線で作っていたら "体育会系な掛け声" とバッティングしてしまい、お互いの良さを打ち消し合ってしまっていたかもしれません。

そう考えると、本作のメロディ要素を抑えた作りは妥当だと思いますし、結果的に "タイプの異なる2つの代表作" が生まれたわけで、この路線に進んだこと自体は大正解だと言えるでしょう。

なお、次作『State of Euphoria』も基本的には本作の路線を引き継いでいますが、"やや複雑なパートの導入" や "キャッチーさを増したメロディ" などによって、微妙に質感の異なる作風となっています。

 

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