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音楽のこと

【鋼】Anthrax『Spreading the Disease』レビュー

2016年10月26日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1985年リリース。前作『Fistful of Metal』から1年ぶりとなる2枚目のフルアルバムです。プロデュースは前作と同様 Carl Canedy さんが担当。

なお、メンバーとソリが合わず脱退した Dan Lilker さんの後任として Frank Bello さん(Ba.) が、そして前作限りで解雇された Neil Turbin さんに代わって Joey Belladonna さん(Vo.) が本作から参加しています。

ネイティブ・アメリカンを祖先に持つ Belladonna さんがバンドに持ち込んだトライバルな雰囲気と、Bruce Dickinson さん(Iron Maiden) 系統の伸びやかなハイトーンボーカル。これらの要素も手伝ってか本作は、正統派メタル+スケートパンクな前作の音楽性をベースとしつつ "オリジナリティ" が大幅に上がっています。

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"三三七拍子" な Anthrax の原点を見せつつも、正統派メタル愛に溢れたサウンド

  1. A.I.R.
  2. Lone Justice
  3. Madhouse
  4. S.S.C./Stand or Fall
  5. The Enemy
  6. Aftershock
  7. Armed and Dangerous
  8. Medusa
  9. Gung-Ho

Battery (Master of Puppets) Aメロ直前の導入部を "三三七拍子" を思わせる裏打ちリズムに差し替えたかのようなドラミングが特徴的な #1『A.I.R.』は、以降の作品で多用されることになる作風を確立した楽曲です。元々は前作の "Metal Thrashing Mad" イントロ部分に申し訳程度に入っていた要素に過ぎませんが、これをメインに持ってきたことで彼ら特有の "つかみどころのないユニークな雰囲気" が強調されています。

前述の楽曲に加え、Angel of Death (Reign in Blood) と双璧をなすスラッシュメタルの代表曲 #9『Gung-Ho』や、ハードコア・パンクの要素が強い #6『Aftershock』などの楽曲が、次作以降の "Anthrax節" な音楽性へと繋がっていくわけですが・・・

やはり、#2『Lone Justice』の格好良さは別格ですね。後の作品ではなかなか聴けない NWOBHM 路線のスピード・チューンであり、Belladonna さんのハイトーンの魅力を最大限に活かした名曲だと思います。

他にも、ハードロックな Heading Out to the Highway (Point of Entry) をメタリックにアレンジしたかのような #3『Madhouse』、トライバルなイントロに The Prisoner (The Number of the Beast) 的な開放感を加えた感じの #4『S.S.C. / Stand or Fall』など正統派メタルへの愛に溢れたサウンドが一定数存在しており、こういった要素も本作の大きな売りだと言えるでしょう。

また、ミディアムテンポのインダストリアル・メタル曲 #5『The Enemy』もこの時期のスラッシュメタル・バンドとしては珍しく、彼らの柔軟な音楽性を垣間見ることができます。

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アメリカ以外からは絶対に出てこなさそうな "NWOBHMチルドレン"

後の作品を基準として相対的に見た場合、本作のサウンドは極めて英国的に感じるはずなのですが・・・独特の "明るさ" がそうさせるのでしょうか? NWOBHM の範疇に含まれる作品でありつつも、この音楽はアメリカ以外からは決して出てこないと思います。

この "似そうで似ない" 絶妙なバランス感覚も、Anthrax を世界的なスラッシュメタル・バンドへと駆け上がらせた要因の一つではないでしょうか。

なお、次作『Among the Living』では、三段飛ばしぐらいの勢いで急激にマッチョな音楽性へと "垢抜け" てしまい、その代償として叙情性が薄れていくことに。正統派メタル好きの人間にとっては少々寂しいですが、彼らの芸風を考えると順当な進化ですし、こういった音楽的変遷を辿ったからこそ現在の Anthrax があるのだと思います。

 

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