HAGANEYA(@imech_jp)です。
2011年リリース。前作『Endgame』から2年ぶりとなる通算13作目のフルアルバムであり、Dave Mustaine さんと双璧をなす唯一の創設メンバー David Ellefson さん(Ba.) が8年ぶりにバンドへ復帰した作品です(彼の復帰に伴い James LoMenzo さんは脱退)。
Megadeth 名義のソロ作である 10th『The System Has Failed』リリース後、バンド名の権利を巡って一時は法廷闘争へと発展するほどこじれた両者の関係。とは言え、5年前の時点で関係はある程度修復されており、今回満を持しての復帰となります。
アートワークは前作と同様 John Lorenzi さんが担当。人数が減ったことを除くと "構図" 的には前作と酷似しており、どことなく地続きのような雰囲気も感じさせます。
その一方で、サウンドは "90年代 Megadeth" のようなメロディアス&グルーヴィーな方向性へと回帰しており、80年代 Megadeth に新世代メタル的な質感を加えたかのような前作とは異なる色合いです。
"David Ellefsonの復活" と "Johnny Kの起用" による、足回りの安定感
歴代 Megadeth では最高クラスの疾走感&攻撃性を持つ前作を聴いた後に本作を聴くと、全編通して落ち着いた印象を受けます。
あくまでも個人的な印象ですが・・・前作は Megadeth ファンというよりも "ヘヴィメタル全般のファン" に向けた作品といった趣であり、このバンドならではの雰囲気がやや欠けているように思いました。
それは(良くも悪くも)Andy Sneap さんの手腕によるものだったのかもしれませんし、もしかすると私の先入観が多少入っているのかもしれません。
ただやはり、本作のプロデューサーに Disturbed などとの仕事で有名な Johnny K さんを起用したのは大正解だと思います。前作よりもベースが主張しているように聴こえるのは、Ellefson さんの復帰だけではなく、彼の貢献もおそらく大きいはずです。
90年代 Megadeth に回帰しつつも、程良くスピード感を兼ね備えた作品
- Sudden Death
- Public Enemy No. 1
- Whose Life (Is It Anyways?)
- We the People
- Guns, Drugs, & Money
- Never Dead
- New World Order
- Fast Lane
- Black Swan
- Wrecker
- Millennium of the Blind
- Deadly Nightshade
- 13
繰り返しになってしまいますが、オルタナ系プロデューサーの強みは "メリハリ" にあると思っています。
ミディアムテンポがメインのニューメタルは(ジャンルの特性上)メロディ以外での差別化が難しく、どうしても重低音を強調したようなサウンド・プロダクションになってしまいがちです。これは、決して本作が "ニューメタルっぽい" とか "重低音を効かせ過ぎている" という意味ではなく・・・むしろ「プロデューサーの得意とするサウンドが良い方向にハマったな〜」という印象を受けた、ということです。
#4『We the People』#5『Guns, Drugs, & Money』#8『Fast Lane』#9『Black Swan』#12『Deadly Nightshade』などのミディアムテンポの楽曲が埋もれずに存在感を主張しているのも、前述の要素が大きく影響しているように思います。
そしてさらに、5th『Countdown to Extinction(邦題:破滅へのカウントダウン)』期に作った #7『New World Order』や #11『Millenium of the Blind』といった作風的に親和性の高い楽曲が収録されたことにより、本作から醸し出される "90年代 Megadeth" 臭はより一層強いものに。
上記のようなお膳立てが整った上で、4th『Rust in Peace』の "テクニカル → メロディアス" な流れを再現した #1『Sudden Death』〜 #2『Public Enemy No.1』があって、さらに NWOBHM スタイルのスピード・チューン #3『Whose Life (Is It Anyways?)』#6『Never Dead』#10『Wrecker』が待機しているという贅沢ぶり。
ミディアム曲と疾走曲が半分ずつ収録された、歴代の作品でも1・2を争う "バランスの良さ" が、本作の一番の魅力だと言えるでしょう。
『United~』『Endgame』それぞれの弱点を補う "バランスの良さ"
ややパンチに欠けるミディアムテンポの楽曲が多かった 11th『United Abominations』、スピード感を重視しつつもメロディが若干おろそかになってしまった気がする 12th『Endgame』といった、過去2作の弱点を払拭してきた素晴らしい作品だと思います。
「Thirteen と言ったらコレ!」といった "キラー・チューンが見当たらない" 点は少々惜しいですが、こんなのは重箱の隅をつつくレベルのいちゃもんですね。1曲1曲のクオリティが高いので、大した問題ではありません。
本作が布石となったかどうかはわかりませんが、次作『Super Collider』ではさらにメロディ・オリエンテッドな作風へと変化しています。この、まるで 7th『Cryptic Writings』~ 8th『Risk』を彷彿とさせる音楽的方向性を見ていると「解散前の流れを再現しようとしているのかな?」とすら思えてくるというか・・・個人的には大変興味深いです。
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