HAGANEYA(@imech_jp)です。
2007年リリース。前作『The System Has Failed』から3年ぶりとなる通算11作目のフルアルバムであり、Roadrunner Records 移籍後初となる作品です。
プロデュースは、前作からの Jeff Balding さんに加え、Arch Enemy 他多数のメタル・バンドを手掛ける人気プロデューサー Andy Sneap さんが共同で担当。
実質ソロ作だった前作からメンバーはガラッと変わり、元 Eidolon の Shawn Drover (Dr.) / Glen Drover (Gt.) 兄弟、元 White Lion の James LoMenzo さん(Ba.) が本作から参加しています。なお Shawn さんは、2004〜2014年までの10年間バンドに在籍しており、メンバーの流動が激しい Megadeth において Marty Friedman さんと並ぶ在籍年数を誇るメンバーです。
アートワークは、本作から 14th『Super Collider』までの4作を、全て John Lorenzi さんが担当。メタル・シーン自体の復権も手伝ってか、以降の Megadeth は需要・音楽性共に安定感を増していき "第2次黄金期" とも呼べる状態へと突入していくわけですが、アートワーク・デザイナーやバンド・メンバーの継続的な起用からも "バンドのコンディションの良さ" がよく伝わってきます。
"ノリやすい曲順" は、多少の欠点を吹き飛ばしてしまう
- Sleepwalker
- Washington Is Next!
- Never Walk Alone... A Call to Arms
- United Abominations
- Gears of War
- Blessed Are the Dead
- Play for Blood
- À Tout le Monde (Set Me Free)
- Amerikhastan
- You're Dead
- Burnt Ice
"逆Cryptic Writings" という表現は回りくどいでしょうか。本作は、終盤にスピード・チューンを詰め込んだ 7th『Cryptic Writings』とは逆で、序盤に疾走感を感じる楽曲が集中しています。
普通のメタル・バンドであれば "飽きられないように勝負曲を早めに出す" のが定番でしょう。ただ Megadeth の場合、たまに前述のようなトリッキーな曲順で攻めてくることがあるため、本作のような "ノリやすい" 楽曲構成はある意味貴重だと言えます。
とりあえず、三連符パートをベースに疾走パートやプログレッシブな要素をバランス良く織り交ぜた #1『Sleepwalker』、Painkiller を彷彿とさせるギターリフと Mustaine 色濃厚なメロディラインが融合した #2『Washington Is Next!』、Vortex の遺伝子を受け継ぐキラー・チューン #3『Never Walk Alone... A Call to Arms』などの冒頭3曲がとにかく "強力"。『Ascendancy』辺りの Trivium にも通ずるスラッシー&モダンなリフが印象的な #4『United Abominations』も悪くありません。
序盤のあまりの充実度に「EPだと思えば・・・」なんて揶揄する声が出てくるぐらい、"掴む力" に長けた作品です。このレベルのスタートダッシュを実現したのは、3rd『So Far, So Good... So What!』以来ではないでしょうか。
一方、序盤にわかりやすい楽曲を集中投下したことで相対的に "中盤以降が単調に聴こえてしまう" という弊害も生んでしまっているのが本作の難点と言えば難点です。過去作で例えるなら 5th『Countdown to Extinction(邦題:破滅へのカウントダウン)』の "Skin o' My Teeth1強" 状態に近い気がします。
とは言え、じっくり聴き込むと #7『Play for Blood』#9『Amerikhastan』などギターソロが魅力的な楽曲もあったりして、意外と侮れません。Christina Scabbia さん(Lacuna Coil) とのデュエットによるパワー・バラード曲 #8『A Tout le Monde (Set Me Free)』も、中だるみの緩和に一役買っている印象です。
また、The Conjuring (Peace Sells... but Who's Buying) の張り詰めた雰囲気を蘇らせたかのような #10『You're Dead』、中盤以降の叙情的な疾走パートが心地良い #11『Burnt Ice』などの終盤2曲は初期 Megadeth 好きにはたまらない展開だと個人的には思っています。
Rust~ 期に肉薄する、ツインギターの "親和性の高さ"
本作の欠点とも言える "中だるみ" 感については、次作『Endgame』で大幅に解消されています。
ただやはり "一聴してすぐわかる Megadeth 臭" の濃さで言えば、本作は00~10年代の作品では "圧勝" でしょう。やはり『Never Walk Alone... A Call to Arms』という "00年代 Megadeth のアンセム" が誕生したことが大きいというか・・・キャッチーな曲の存在って大事ですね。
また、フルアルバムとしては本作のみの参加となってしまった Glen さんと、Mustaine さんの "ツインギターの親和性の高さ" は、4th『Rust in Peace』期の Marty さんに匹敵するものがあります。さすがにあの "演歌ソロ" のオリジナリティには敵いませんが、それでも本作は "Megadeth 史上最も Rust~ 期の作風に肉薄した" と言っても過言では無い作品です。
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