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音楽のこと

【鋼】Megadeth『Rust in Peace』レビュー

2016年10月13日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1990年リリース。前作『So Far, So Good... So What!』から2年ぶりとなる通算4作目のフルアルバムであり、アメリカで100万枚・カナダで10万枚・イギリスで6万枚のセールスを記録した作品です。

プロデュースは、Whitesnake・Triumph・Guns N' Roses・Jefferson Starship・Mötley Crüe などとの仕事で有名な Mike Clink さんが担当しています。

2nd『Peace Sells... but Who's Buying?』と同様、Ed Repka さんによって手掛けられた "政治家×宇宙人" のアートワークはスラッシュメタル・バンドとは思えないほどに知的な雰囲気であり、本作で加入した2人の新メンバーのテクニカルなプレイスタイルを視覚化しているかのようです。

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"先輩バンドへの敬意" と "後輩バンドへの道筋" が同居したサウンド

  1. Holy Wars...The Punishment Due
  2. Hangar 18
  3. Take No Prisoners
  4. Five Magics
  5. Poison Was the Cure
  6. Lucretia
  7. Tornado of Souls
  8. Dawn Patrol
  9. Rust in Peace...Polaris
  10. My Creation ※2004年リマスター盤収録

SE の多用によってイントロパートに若干のB級感が漂っていた前作に対し、本作収録曲のイントロの多くが "即効性" を重視したスピーディ&テクニカルなリフで構成されています。

中でも King Crimson 系統のインプロ感がクセになる #1『Holy Wars... The Punishment Due』は、イントロ以降の楽曲展開も含め "プログレメタル" と言っても差し支えなく、本作が世に出たのが1990年だということをついつい忘れてしまいそうです。Dream Theater の歴史的名盤『Images and Words』が登場する2年前に Paradigm Shift (Liquid Tension Experiment) のプロトタイプみたいな楽曲を既に生み出していた事実に驚きを隠せません。

Holy〜 ほど入り組んではいないものの #3『Take No Prisoners』も単純なスラッシュメタル曲の枠に収まらないアレンジが施されていますし、Holy〜 とよく似た構造を持ちつつ "緩急の入れ方" で印象が被らない工夫を感じさせる #9『Rust in Peace... Polaris』も秀逸。 #8『Dawn Patrol』と #10『My Creation』でテンポの良さを損ねない程度のミドル・チューンを挟んだ辺りにも、彼らのバランス感覚の良さが窺えます(#10は2004年リマスター盤収録の未発表曲)。

そして、スピード・チューンを中盤以降に配した #4『Five Magics』#5『Poison Was the Cure』からは "2nd時代の名残り" を感じさせると同時に 、"正統派メタル×大作主義" の先駆者 Iron Maiden へのリスペクトが感じられます。

さらに #7『Tornado of Souls』に至っては、Judas Priest タイプの正統派メタルと "Megadeth節" とも言えるスタイリッシュなメロディラインが融合。前述の要素も含め、1st〜3rd 期以上に正統派メタルの影響を感じる楽曲が増えた印象です。

極め付けは、クラシック由来のメロディラインにどことなく Arch Enemy と近いものを感じる #2『Hanger 18』。先輩バンドへ敬意を表すと同時に "後輩バンドへの道筋を示している" 本作は、紛れもなく "メタルの歴史の1ページに名を刻んだ重要作" と言えるのではないでしょうか。

 

Marty Friedman & Nick Menza 組を "正しく" 活かした唯一の作品

やや大味だった前作から飛躍的に手数が増えた

のは間違いなく、本作から参加した Nick Menza さん(Dr.) と Marty Friedman さん(Gt.) の働きによるものでしょう。

Nick さんのタイトなドラミングMarty さんのオリエンタル&プログレッシブなギターソロがバンドにもたらした化学反応は、90年代の Megadeth を "黄金期" "最強の布陣" と呼ばせてしまうほどに強力でした(残念ながら Nick さんは2016年5月に他界されてしまったため、この布陣を二度と見れないのが悔やまれます・・・)。

ただし、この黄金期という呼称が "スラッシュメタル・ファンにとっての" 黄金期を指していたかどうかと言うと・・・何とも言えない所です。次作『Countdown to Extinction(邦題:破滅へのカウントダウン)』から始まるグルーヴ・メタル路線のサウンドも嫌いではないのですが、そっちの路線で行くなら Marty さんと Nick さんを無理して入れる必要は無かった気もします。

ここからは余談。

私にとってマーティ・フリードマンさんは、ライナーノーツなどで頻繁に名前を目にしていた "歴史上の人物" そのものであり、そんな偉人が普通に日本のバラエティ番組に出まくっているという現実が未だに信じられません(もちろん "嬉しい" という意味で)。

彼は "メタル版デーブ・スペクター" でも "メタル版パックン" でもないのですが「そんな扱いでも別にいっか」とついつい視聴者に思わせてしまう人柄の良さを持っていると感じます。マーティさんが出演した『ナカイの窓』放送回での「どこまーーでも・どこまーーでも」の失礼なくだりは、不覚にも笑ってしまった・・・

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