HAGANEYA(@imech_jp)です。
2004年リリース。Neil Turbin さんがボーカルを務めた 1st『Fistful of Metal』および、Joey Belladonna さんがボーカルを務めた 2nd『Spreading the Disease』3rd『Among the Living』4th『State of Euphoria』5th『Persistence of Time』の人気曲が14曲収録されたベストアルバムです 。公式サイトで行われたファン投票によって選出された楽曲が収録されています。
ただし、ボーカルを務めているのは3代目ボーカリストの John Bush さんです。彼の初参加作は 6th『Sound of White Noise』であり、それ以前の楽曲を収めたスタジオ作品は存在していませんでした。「John Bush がスラッシュ期の Anthrax の楽曲を歌ったらどうなるか?」を確認出来るという点において、本作はかなり貴重な作品だと言えるでしょう。
なお、本作は2日間に渡って行われた "スタジオ・ライブ" を録音した作品です。とは言えライブ音源特有のラフな質感などは一切無く、高品質なマスタリングが施されたかのようなサウンド・プロダクションを実現しています。
アートワークは、"OBEY" 名義で活動している Shepard Fairey さんが担当。"スラッシュ・メタル" というカタカナ表記から日本独自企画盤だと思われがちですが、意外にも全世界共通のデザインです。
ちなみに、カタカナ表記の理由を一応調べてみたのですが、有力な情報は見つかりませんでした。おそらく「腕に漢字のタトゥーって超クールじゃね?」的な、アメリカ人特有のノリと似たような感じではないでしょうか。ただし、日本のハードコア・バンド『SxOxB』が、Dan Lilker さん(Anthrax の初代ベーシスト)が創設した『Brutal Truth』に与えた影響やその後の交流などを考えると、決して無関係ではないような気もしています。
『In My World』を聴きたいなら "デジパック" 一択
通常盤(US盤・マレーシア盤)
- Deathrider(Fistful of Metal)
- Metal Thrashing Mad(Fistful of Metal)
- Caught in a Mosh(Among the Living)
- A.I.R.(Spreading the Disease)
- Among the Living(Among the Living)
- Keep It in the Family(Persistence of Time)
- Indians(Among the Living)
- Madhouse(Spreading the Disease)
- Panic(Fistful of Metal)
- I Am the Law(Among the Living)
- Belly of the Beast(Persistence of Time)
- Efilnikufesin (N.F.L.)(Among the Living)
- Be All, End All(State of Euphoria)
- Gung-Ho(Spreading the Disease)※隠しトラックとして『Lone Justice』収録
ロシア盤
- Deathrider(Fistful of Metal)
- Metal Thrashing Mad(Fistful of Metal)
- Caught in a Mosh(Among the Living)
- A.I.R.(Spreading the Disease)
- Among the Living(Among the Living)
- Keep It in the Family(Persistence of Time)
- Indians(Among the Living)
- Madhouse(Spreading the Disease)
- Panic(Fistful of Metal)
- I Am the Law(Among the Living)
- Belly of the Beast(Persistence of Time)
- Efilnikufesin (N.F.L.)(Among the Living)
- Be All, End All(State of Euphoria)
- Gung-Ho(Spreading the Disease)
国内盤
- Deathrider(Fistful of Metal)
- Metal Thrashing Mad(Fistful of Metal)
- Caught in a Mosh(Among the Living)
- A.I.R.(Spreading the Disease)
- Among the Living(Among the Living)
- Keep It in the Family(Persistence of Time)
- Indians(Among the Living)
- Madhouse(Spreading the Disease)
- Panic(Fistful of Metal)
- I Am the Law(Among the Living)
- Belly of the Beast(Persistence of Time)
- Efilnikufesin (N.F.L.)(Among the Living)
- Be All, End All(State of Euphoria)
- Gung-Ho(Spreading the Disease)
- Anthrax(Fistful of Metal)※日本盤ボーナストラック
デジパック盤(ドイツ盤)
[Disc1]
- Deathrider(Fistful of Metal)
- Metal Thrashing Mad(Fistful of Metal)
- Caught in a Mosh(Among the Living)
- A.I.R.(Spreading the Disease)
- Among the Living(Among the Living)
- Keep It in the Family(Persistence of Time)
- Indians(Among the Living)
- Madhouse(Spreading the Disease)
- Panic(Fistful of Metal)
- I Am the Law(Among the Living)
- Belly of the Beast(Persistence of Time)
- Efilnikufesin (N.F.L.)(Among the Living)
- Be All, End All(State of Euphoria)
- Gung-Ho(Spreading the Disease)
[Disc2]
- Anthrax(Fistful of Metal)
- Lone Justice(Spreading the Disease)
- In My World(Persistence of Time)
収録曲についての詳細は、当ブログの各作品ごとの記事にて既に触れていますので、興味があればそちらも読んでみてください。
それと、可能であれば通常盤や国内盤ではなくデジパック盤(DIG)を手に取られることをオススメします。Wikipedia では "Bonus disc(Japanese edition)" と表記されていますが国内盤は15曲なので、おそらくですが誤りでしょう。
上記の通り、通常盤(US盤)には Anthrax と In My World が収録されていません。また、Lone Justice は一応収録されているものの "#14の隠しトラック" 扱いですので、独立して収録されているデジパック盤のほうが聴きやすいかと思います。それにしても、Lone Justice は言わずもがなですが、"5thの屋台骨" である名曲 In My World がボーナストラック扱いなのは正直どうなんだろう・・・
1st曲はパワーアップ。3rd曲のフットワークの軽さは・・・やや減退気味?
さて、再録された楽曲についてですが、John さんの声質に合わせてか全体的にダウンチューニングが施されています。
また、楽曲によっては BPM が遅くなるパートもあったりするので、原曲の完全再現というよりは "原曲の良さを活かしたリメイク" という表現がしっくり来る感じです。一応 "ライブ盤" なので、テンポの不安定さは仕方ないっちゃ仕方ないかもしれません。
ただし、スピード感がそのまま持ち味に直結している "Caught in a Mosh" "Among the Living" "A.I.R" "Be All, End All" 辺りの楽曲は、原曲の軽快さを知っていると若干魅力が落ちているような気もします(3rdの楽曲がやや弱い印象)。"Lone Justice" のイントロのモタつき感も若干気になるかなぁ・・・
ただし、これは好みの問題ですので、こちらのアレンジのほうが気に入る方もいらっしゃるでしょう。
逆に "Deathrider" "Metal Thrashing Mad" "Panic" "Anthrax"といった 1st の楽曲は、元のサウンド・プロダクションが荒いせいかパワーアップして聴こえます。とりわけ Metal Thrasing Mad は、ダウンチューニングの影響で原曲とはまた異なる "ダークな雰囲気" があり「これはこれでアリかも」といった感じです。
"John Bush起用" と "オルタナ期の低迷" に因果関係が無いことを証明した傑作
前年にリリースされた 9th『We've Come for You All』と比較しても音質が非常に良く、しかも "スラッシュ期の名曲を(2004年当時の)現陣営で再録" ということで、初期作を聴いたことが無い方にとってはある意味 "ナンバリングの新作" 的な感覚で聴ける美味しいアルバムではないでしょうか。
John さんのややダミ声寄りのボーカルも意外と相性が良く、本作によって "オルタナ期の低迷" と "John Bush起用" に因果関係は無かったということが証明されています(と私は思います)。もちろん、Belladonna さんの個性的なハイトーンボーカルが唯一無二なのは間違いありませんが、John さんのどんなジャンルにも適応できる器用さもなかなか捨てがたいところです。
本作を最後に John さんと Rob Caggiano さんは脱退し、以降メンバーチェンジが頻繁に繰り返されることになります。7年後にリリースされることとなる 10th『Worship Music』では Belladonna さんが復活していますが、本作での活躍ぶりを考えると、John さんのボーカルも悪くなかったなぁ・・・と思う今日この頃です。
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