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音楽のこと

【鋼】Iron Maiden『The Number of the Beast』レビュー

2016年7月31日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1982年リリース。初代ボーカル Paul Di'Anno さんから2代目ボーカル Bruce Dickinson さんに交代後、初のフルアルバムです。

ボーカリストが交代した一方で、ドラムは初期2作『Iron Maiden(邦題:鋼鉄の処女)』『Killers』を支えてきた Clive Burr さんが引き続き担当。これによって、Clive Burr さんと Bruce Dickinson さんとの共演が実現した唯一のスタジオ作品となっています。

初期2作のパンキッシュなリズムと、次作『Piece of Mind(邦題:頭脳改革)』以降のメタリックな歌唱法が同居した独特のグルーヴ感を持つ本作は、一般的に "最高傑作" と認識されていることで有名です。残念ながら Clive Burr さんは2013年に亡くなられているため、この質感を二度と再現できなくなってしまったのが悔やまれます。

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メタルバンドとして一皮むけるために、避けて通れなかった "ボーカリスト交代"

初期2作の手触りを感じつつもメジャーコードの増加&楽曲構成の複雑化によって新たな一面を見せている #1『Invaders』、ブルージーな前半〜終盤に向けて走り出すドラムが格好良い #2『Children of the Damned』、ヘヴィメタルの扉を開けたことを宣言するかのようなハイトーンボーカルが爽快な #3『The Prisoner』、Paul Di'Anno色を再現したかのような歌唱法が新鮮な #4『22 Acacia Avenue』、不思議なメロディの変拍子イントロがトレードマークのスピード・チューン #5『The Number of the Beast』、タイトル名や楽曲のメロディ&リズムから情景が浮かんできそうな #6『Run to the Hills』、ドラムのシャッフル・ビートに合わせて各パート激しい演奏が繰り広げられる #7『Gangland』、英国的なコード進行が独特の存在感を放つ #8『Total Eclipse』、ミドルテンポ・パート~場面転換パート~疾走インスト・パートといったプログレメタル的な方法論を導入している #9『Hallowed Be Thy Name』。

前作・前々作までと明確に異なる点は、"メジャーコードの割合が増えた" ことです。これは、Bruce さんが加入し、ヘヴィメタル的な表現力の幅が広がったことによる相乗効果だと思います。

とりわけ『The Prisoner』のサビ部分なんかは、前ボーカルの Paul さんが同じように歌ったとしても、Bruce さんの伸びやかなハイトーンと同様の高揚感を聴き手に与えることは難しいのではないでしょうか(もちろん彼には彼ならではの良さがあります)。

諸説ありますが、ボーカルが交代した理由の一つに技術的な問題があったと言われています。真偽はさておき、明らかに前作までとは表現力が圧倒的に上がっていますし、ヘヴィメタル・バンドとして一皮むけるために Bruce さんを起用したのは正解だったということですね。

 

過渡期の作品にも関わらず問題作・実験作呼ばわりされない、ユーザーフレンドリーな完成度

本作は紛れもなく "過渡期の作品" であるにも関わらず、実験作や問題作ではなく "代表作" という評価を得ています。Judas Priest の過渡期の作品に問題作扱いされているものが多いことを考えると、向こうと状況がまるで異なるのは面白いですね。

ただ、個人的な意見を述べさせていただくと、本作よりも 1st『Iron Maiden』もしくは 5th『Powerslave』辺りから入ったほうが、Iron Maiden というバンドのことをより理解しやすい気がします。

前述の2枚はそれぞれ "パンク路線の代表作" と "メタル路線の代表作" であり、いずれの作品もバンドのアイデンティティーが極端に振り切れているのが特徴です。一方で、本作は "両者の良いトコ取り" といった側面も強いので、どことなく優等生的なサウンドに感じてしまう時があるんですよね・・・あくまでも主観です。

逆に言うと「よくここまで違和感なく "路線変更" をスムーズに行えたよなぁ」と感心させられるバランス感覚を備えている作品だと思います。

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