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音楽のこと

【鋼】Dream Theater『Dream Theater』レビュー

2016年8月26日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

2013年リリース。ロック/メタル・バンドにとっては、付ける際に最も覚悟を要すると思われる "セルフタイトル" を冠した作品です。

彼らに限らず、バンド名を冠する作品は "聴き手のハードルを無駄に上げてしまう" ことが多いため、個人的には過度な期待は持たないようにしています(というか "バンド名=作品タイトル の時って、既存スタイルの最高傑作ではなく、むしろ "異色作" が生まれることのほうが多い気がするのは私だけでしょうか?)。

ともあれ、期待せずに本作を聴いてみた率直な印象は「随分とコンパクトにまとまっていて取っつきやすいな」というものでした。前作『A Dramatic Turn of Events』と同様の "メロディアス" 路線であると同時に、真逆の性格を持つ作品だと思います。

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セルフタイトルだからこそ "好き放題やってみた" 感じの作品

ネオクラ系プログレ・サウンドによる組曲が映画の予告編のごとく3分弱の楽曲に凝縮されている #1『False Awakening Suite』、Portnoy期を思わせるヘヴィなサウンドがメロディアス路線の本作において独自の存在感を放っている #2『The Enemy Inside』、2ndのメロディアス・ハード路線を00年代以降で最も的確に再現した #3『The Looking Glass』、Black Clouds & Silver Linings 前半のダークな雰囲気と LTE 路線のテクニカル曲を融合させつつ聴き手を置き去りにしないようシンプルにまとめ上げた #4『Enigma Machine』、幻想的な冒頭パートを経て徐々にシンフォニックなパワー・バラードへと盛り上がっていく #5『The Bigger Picture』、映画音楽的な静かなイントロからのヘヴィなサウンドに一瞬意表を突かれるも印象的なサビのメロディに心を奪われる #6『Behind the Veil』、The 1st Chapter (Circus Maximus) を逆輸入したかのような優雅な雰囲気のサウンドが心地良い #7『Surrender to Reason』、アンプラグドな雰囲気の前半と電子的なキーボード・サウンドとのギャップが味わい深さを引き出している #8『Along for the Ride』、【3分22秒】辺りからのサイバーなキーボード・サウンドや【11分10秒】辺りからの渇いたベース&ドラム…など従来の彼らの大作曲には無いモダンなアレンジが幻想的なパートの美しさをより引き立てている #9『Illumination Theory』。

短めの楽曲が大半を占め、一番最後に20分超の大作曲を持ってくる辺りは 8th『Octavarium』や Iron Maiden 『Powerslave』などの構成と似ています。

楽曲単体で見ても、Octavarium と同様1曲1曲が独立した雰囲気を持っていますが、同時に 1st『When Dream and Day Unite』や 6th『Six Degrees of Inner Turbulence (Disc1)』の "好き放題やってみた" 感もあり、一言で言うと "コンセプトが無い作品" といった印象です。

その一方で、テクニカル・パートの多用を控えつつ、耳を引くメロディは前作以上に増量しています。2nd『Images and Words』の空気感で 3rd『Awake』のキャッチーな楽曲を再現している感じでしょうか。

あと、本作特有だと思ったのが "イントロ~Aメロでヘヴィ路線だと思わせつつ、Bメロ辺りから一気にメロディが押し寄せてくる" というアプローチです。もし Mike Portnoy さんが今も在籍していたら、おそらく全編ゴリゴリのヘヴィ・サウンドを貫いていたような気もしますし、こういったところに "新生Dream Theater" の風通しの良さを感じます。

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"プログレ・ハードの血を受け継ぐ、メロハー系Dream Theater" 復活の予兆

本作は、聴き込まずとも楽曲の魅力が伝わりやすい作りになっており、即効性は非常に高いです(ポスト・グランジ/ニューメタル系の乾いたサウンド・プロダクションは、人によって若干好みが分かれるかも)。

唯一気になるところを挙げるとすれば、どの曲も小綺麗にまとまり過ぎているせいか "印象に残りにくい" ことでしょうか。本作を象徴する超名曲 The Looking Glass はともかく、ヘヴィ系 or メロディアス系といった作品の方向性とは関係ないところで、個々の楽曲に "売り" となる圧倒的なメロディラインがやや欠けている印象を受けました。

これは、Judas Priest の『Redeemer of Souls』を聴いた時の感触と似ています。明らかに "黄金期のファン層" を狙い撃ちした作風だとは思うのですが・・・時代背景なんかも関わっていたりするのでしょうか。

ただやはり、"かつての Dream Theater が戻ってきつつある" という期待感は、作品を重ねるごとに徐々に高まっています。次作『The Astonishing』は、本作の路線をベースに、さらに70'sプログレ・オリエンテッドな方向性へと進んでおり、まさに「待ってました!」といった心境です。

私にとっての Dream Theater とは "アメリカン・プログレ・ハードの血を受け継ぐ、メロハー系プログレメタル" であり、数多のフォロワーを生み出した 2nd~3rd 期の作風に他なりません。前述のいわゆる "Rush" 路線が嫌いな方々が一定数いらっしゃることも重々承知ですが、本流はやはり "こちら" でしょう。

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