HAGANEYA(@imech_jp)です。
1989年リリース。プログレッシブ・メタル・バンド Dream Theater の記念すべき 1stアルバムであり、次作『Images and Words』があまりに有名になり過ぎたこともあってか、一般的には非常に影の薄い作品です。
実際私も、中古CDショップの棚でこのジャケットを偶然発見した時は「まさか "あの" Dream Theater じゃないよな。同名の別バンド?それとも作品名がドリーム・シアター?」と、半信半疑でレジに持っていったのを覚えています。案の定、開封後に車のカーオーディオから流れてきた音楽は、ゴリゴリのプログレメタルでした。
その後ライナーノーツに目を通し、本作が紛れもなく "あの" Dream Theater であることを知った私は、新種を発見した瞬間の生物学者のようにテンションが上がったのです。
"Rush meets Metallica" とは、本作『When Dream and Day Unite』のこと
よく、このバンドを表現する際に出てくる「"Rush" と "Metallica" を掛け合わせた音楽」というのは、本作の音楽性から来ています。
Metallica 寄りの作品としては他にも 7th『Train of Thought』などがありますが、向こうがどちらかと言うと "...And Justice for All〜Black Album期のMetallica" であるのに対し、こちらは "Ride the Lightning〜Master of Puppets期のMetallica" といった印象です。当時 "プログレ・スラッシュ" と呼ばれていたのも頷けます。逆に Images〜 以降の作品から聴き始めたリスナーは「どの辺が Metallica なの?」と思われたのではないでしょうか(というか私がそうでした)。
変拍子イントロを経て Metallica 風のスラッシーなリフがいきなり飛び込んでくる唐突な展開に初期 Dream Theater のB級感を感じる #1『A Fortune in Lies』、Van Halen を彷彿とさせる YAMAHA DX-7 系ストリングスによるノスタルジックなイントロやメロディアス&キャッチーなサビが耳に残る #2『Status Seeker』、各パートがしのぎを削りあう中 John Myung さんによる超高速ベースがひときわ存在感を放つテクニカルなインスト・ナンバー #3『Ytse Jam』、Kevin Moore さんによるダークなキーボード・サウンドが終末的な空気感を強めに演出している #4『The Killing Hand』、RPGのラスボス戦にありそうな変則的な楽曲構成による前半パートと4分28秒辺りからのリバーブ効きまくりなストリングス・サウンドとのギャップに心を奪われる #5『Light Fuse and Getaway』、Circus Maximus などの後輩バンドに影響を与えたと思われるマイナー調のドラマティック&キャッチーなプログレ・パワーメタルが堪能できる #6『Afterlife』、鍾乳洞を思わせるひんやりとした前半・2分47秒辺りからのツーバス・3分40秒辺りからの疾走パート・6分2秒辺りからの泣きまくりなギターソロ…と彼らの楽曲の中では比較的シンプルな構造を持つ長尺曲 #7『The Ones Who Help to Set the Sun』、Kevin Moore さんの "弾き過ぎない" キーボードが Dream Theater の全楽曲の中でもトップクラスのポップ性を実現している #8『Only a Matter of Time』。
この作品が不幸なのは「次作のメロディラインの耳馴染みが良過ぎて、後追いで本作を聴いた多くのリスナーにとってはメロディが印象に残りにくい」ということです。また、Charlie Dominici さんと James LaBrie さんの "声質の違い" も、本作への偏見を助長する材料となっている気がします。一方、リアルタイムで本作から出会って、こういった先入観を持たれてる方はおそらく少ないはずです。
私自身、当時カーオーディオで初めて本作を聴いた時に「ボーカル違う上にサウンド・プロダクション悪いし、作品の輪郭がイマイチ見えてこないなぁ」と、若干ネガティブな印象を抱いていました。
後に iTunes にCDを取り込み、それなりのオーディオ環境を整え、イコライザーを適切に弄った上で改めて聴いたことでようやく本作の魅力が見えてきましたが・・・後追いリスナーが本作をフラットな状態で受け入れるには、それなりに時間が必要な気もします。
何せ "Dream Theater = LaBrie以降" のイメージがあまりにも強過ぎますからね。相対的な比較によって ”Charlie Dominici=下手なボーカル” と勘違いされているのが非常に歯がゆい・・・
"パワーメタル" 路線と "テクニカル・スラッシュ" 路線の両方を追求した意欲作
プログレメタルには大きく分けて2つの流れが存在します。一つは『Fates Warning』や『Queensryche』辺りを祖とする "パワーメタル" 路線、もう一つが『Watchtower』を祖とする "テクニカル・スラッシュ" 路線です(この辺の細かい分類は人によっても異なるとは思います)。
2nd 以降の Dream Theater は言わずもがな "前者" の方向性と言えますが、この 1st に限って言うならば Watchtower 系統のアプローチも半分ぐらい含まれているように感じます。同じプログレメタルでも、テクニカル系のバンドは苦手という方もいらっしゃいますし、本作の評価が割れるのはその辺りの理由も絡んでいるのかもしれません。
余談ですが、本作を聴いていてふと、ノルウェーのプログレメタル・バンド Circus Maximus のことを思い出しました。まず "張りのあるハイトーンボーカル" が似てますし、どことなく一部の楽曲(#2・#4・#6など)も似ている気がします。Circus Maximus が Dream Theater の影響下にあるバンドだという認識は元々あったのですが、中でも 1st からの影響が最も強いのだな・・・と気付かされました。
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