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音楽のこと

【鋼】Slayer『Seasons in the Abyss』レビュー

2016年11月22日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1990年リリース。前作『South of Heaven』から2年ぶりとなる通算5作目のフルアルバムであり、アメリカで50万枚・カナダで5万枚のセールスを記録した作品です。プロデュースは前作・前々作同様 Rick Rubin さんが担当。ミキシングを Andy Wallace さんが担当しています。

前作同様 Larry W. Carroll さんが手掛けた "赤い額縁×頭蓋骨" のアートワークは、過去4作と比較しても 3rd と同等かそれ以上に病んでおり "精神的な重さ" を感じる作風といった印象です。

作品自体は前作の延長線上とも言えるメリハリを意識した構成ですが "緩急を付ける場所が前作と異なっている" ため、通して聴いた際に受ける印象はだいぶ異なります。

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"Reign in Bloodの再来" 的なワクワク感。"South of Heaven寄り" の楽曲構成。

  1. War Ensemble
  2. Blood Red
  3. Spirit in Black
  4. Expendable Youth
  5. Dead Skin Mask
  6. Hallowed Point
  7. Skeletons of Society
  8. Temptation
  9. Born of Fire
  10. Seasons in the Abyss

Angel of Death (Reign in Blood) の姉妹作であるかのようなイントロやスピード感を持つ #1『War Ensemble』をいきなりド頭に持ってきたことにより、ミディアムテンポの冒頭曲から始まる前作と "ノリ" を強制的に変えさせられるため、結果として焼き直し感の払拭に成功しています。

むしろ前述の #1 の印象もあり、初見では「3rd っぽいかも?」と感じる方も結構いらっしゃるかもしれません。

ところが、その後の流れは #2『Blood Red』#4『Expendable Youth』#5『Dead Skin Mask』とミディアムテンポの楽曲が続きます。Bメロのリフが Master of Puppets (Master of Puppets) っぽいスラッシュ曲 #3『Sprit in Black』を除けば、アルバム前半は前作以上に "まったり" 系です。

このままのノリで行くのかと思いきや、アルバム後半ではスピード系の楽曲とミディアム系の楽曲の割合が逆転します。

#1 をよりシンプルにしたハードコア寄りのスラッシュ曲 #6『Hallowed Point』、"Rust in Peace" 期の Megadeth を思わせる鋭利なギターリフ&テクニカルな構成が光る #8『Temptation』、#6 のハードコア要素をさらに強調した感じの #9『Born of Fire』と、この辺りの楽曲は 3rd に収録されていてもおかしくなさそうなスピード・チューンです。

そして、本作唯一となる6分超えの長尺曲 #10『Seasons in the Abyss』は前半パートが完全にドゥームメタル系のサウンドとなっており、前作の冒頭曲 "South of Heaven" とよく似た雰囲気を持ちつつも、重厚感はグレードアップしています。

 

前作の "NWOBHM" 枠に、ハードコア路線の楽曲を入れたことによるフットワークの軽さ

スピード・チューンとミディアム・チューンの割合は5:5と、前作と一緒ですが「1曲目を Reign〜 路線のスラッシュ曲にしただけで、こうも印象が変わるのか」と驚かされます。

また、前作にあった "正統派メタル路線の疾走曲" の代わりに "ハードコア系の疾走曲" が台頭しているのも本作の特徴です。

具体名を出すと・・・前作で言うところの "Behind the Crooked Cross" や "Read Between the Lies" 系の楽曲が無くなり、抜けた穴を #1・#6・#9 みたいなシンプルな作りの疾走曲が埋めています。曲順だけではなく、実は音楽性自体も微妙に変わっていたということですね。

なお、本作リリースから2年後の1992年に Dave Lombardo さん(Dr.) は Slayer を一度脱退し、後任ドラマーとして Paul Bostaph さん(ex:Forbidden) が加入。Paul さん加入によってドラムがタイトになった次作『Divine Intervention』では変拍子なども導入され、過去5作とは微妙に方向性の異なる音楽性となっています。

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