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音楽のこと

【鋼】Slayer『Divine Intervention』レビュー

2016年11月23日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1994年リリース。前作『Seasons in the Abyss』から4年ぶりとなる通算6作目のフルアルバムであり、アメリカで50万枚・カナダで5万枚のセールスを記録した作品です。

プロデュースはお馴染み Rick Rubin さんが担当(エグゼクティブ・プロデューサー名義)。共同プロデューサー及びミキサーとして Toby Wright さんも関わっています。

Wes Benscoter さんが手掛けた "磔のガイコツ" のアートワークには、Slayer のイメージカラーとも言える "赤色" が一切使われていないどころか、限りなくモノトーンに近い色合いです。また、前作と同様 "バンドロゴ" が消滅しており、従来作とは毛色が違う作品であるということを暗に示しているように見えます。

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テクニカルな楽曲と相性の良い、Paul Bostaph のタイトなドラム・サウンド

  1. Killing Fields
  2. Sex. Murder. Art.
  3. Fictional Reality
  4. Dittohead
  5. Divine Intervention
  6. Circle of Beliefs
  7. SS-3
  8. Serenity in Murder
  9. 213
  10. Mind Control

Dave Lombardo さんの後任として加入した新ドラマー Paul Bostaph さん(ex:Forbidden) のドラム・サウンドは、前5作とは明らかに質感が異なります。ハードコア由来のザラザラした質感を持つ Dave さんの音に比べ、Paul さんのドラム・サウンドは非常にクリアです。

プロデューサーのさじ加減も多少は絡んでいるかもしれませんが、Paul さんの不純物を取り除いたかのようなタイトなドラムは、変拍子を取り入れた #1『Killing Field』などのプログレ・スラッシュ曲と相性抜群。元々の Slayer の芸風が芸風だけに好みは確実に分かれそうですが、そもそも前作で既に集大成的な音楽性を完成させてしまっていますし "新シリーズ" としては全然アリでしょう。

また、緩急に重きを置いていた前作や 4th『South of Heaven』と比較すると、本作はスピード・チューンの割合が増加しています(数字で表すと7:3)。他の記事でも散々触れていますが、90年代の有名メタル・バンドは基本的にオルタナ方面へ浮気してしまったため、Slayer みたいに "踏みとどまる" パターンは割と珍しいです。

もちろん、オルタナ要素を感じるパートが全く無いわけではないものの、彼らの場合は "モッシュ・パート" 的なテンポ・ダウンなので、むしろメタルコア/ニュースクール・ハードコア的な質感に近いと思います。#3『Fictional Reality』なんて、"As the Palaces Burn" 期の Lamb of God みたいなサウンドだし・・・

そして、個人的に一番気になったのが #5『Divine Intervention』で時折入るアコースティックなギター・サウンドです。過去作では黒魔術的な雰囲気を出すために使われていた音色ですが、本作にその手の要素は無く、むしろ後期 Death や Cynic などのテクニカル・デス系バンドを彷彿とさせる幽玄な雰囲気が漂っています。

 

オルタナ化というより "オルタナ要素を持つ NYHC バンドをメタル仕様にアレンジ" した感じ

繰り返しになってしまいますが、本作で見せた Slayer の音楽的変化は、オルタナ路線に傾倒していった多くの有名メタル・バンドとはやや趣が異なる気がします。

どちらかと言えば、Sick of it All・Madball・Straight Faced といった "オルタナ要素を持つニューヨーク・ハードコア系バンド" をメタル仕様にアレンジしたサウンド、といった印象を受けました。それこそ "Hatebreed や Vision of Disorder 辺りのバンドのご先祖様" みたいな表現が個人的にはしっくり来ます。

本作唯一の残念な点は、"リマスターされていない" ということです。当記事執筆時点で最も新しいと思われる2013年盤も、Amazon カスタマーや Yahoo!知恵袋によると "単なる再発盤" との事で・・・1st~5th のリマスター後の音質と比べると若干ダイナミックさに欠けるのが難点と言えば難点でしょうか。

余談ですが、リマスターされていない理由はおそらく "Dave Lombardo さん脱退後の作品だから" だと思います。

CD世代の作品であることも理由としては考えられますが、私が本作を購入した13~14年前の時点で既に中古CDショップに出回りまくっていましたし、単純に人気が無いのかもしれません。"先入観で駄作のレッテルを貼られている" 印象ですね。

なお、本作よりスピード感は落ちるものの、次作『Diabolus in Musica』は前述の要素をさらに推し進めた音楽性となっており、ニューメタル化した作品とは一概に言えないサウンドが繰り広げられています。

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