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音楽のこと

【鋼】Megadeth『Youthanasia』レビュー

2016年10月15日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1994年リリース。前作『Countdown to Extinction(邦題:破滅へのカウントダウン)』から2年ぶりとなる通算6作目のフルアルバムであり、アメリカで100万枚・カナダで10万枚・イギリスで6万枚のセールスを記録しています。

プロデューサーに Max Norman さん、アートワークに Hugh Syme さんといった前作同様の布陣に加え、4th『Rust in Peace』から加入した Nick Menza さん(Dr.) と Marty Friedman さん(Gt.) も続投。Dave Mustaine さんの薬物中毒再発を除けば、"安定期" とも言える好状況の中で生まれた作品です。

ただし本作は、前作で既に兆しを見せていたグルーヴ・メタル要素が完全に花開いた時期の作品であるため、バンドの状況が良いにせよ悪いにせよ、スラッシュメタル原理主義者からの評価は芳しくありません。

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温かみのある Megadeth サウンドは "ここ" から始まった

  1. Reckoning Day
  2. Train of Consequences
  3. Addicted to Chaos
  4. A Tout le Monde
  5. Elysian Fields
  6. The Killing Road
  7. Blood of Heroes
  8. Family Tree
  9. Youthanasia
  10. I Thought I Knew It All
  11. Black Curtains
  12. Victory
  13. Millennium of the Blind ※2004年リマスター盤収録

まず、前作と本作で圧倒的に異なるのが "音圧" です。本作は #6『The Killing Road』と #12『Victory』を除き、ミディアムテンポの楽曲で構成されています。

疾走曲とミドル曲の割合自体は前作と一緒ですが、ミドル・チューンの魅力を引き出しやすくするためか "音が全体的に前のめり" になっている印象です。そのため、Queensryche『Promised Land』などに匹敵するぐらい、リマスター前の "原盤" のサウンド・プロダクションが良好だと感じます。

Mustaine さんの古巣 Metallica の作品に無理やり当てはめるとすれば、Countdown〜 は『...And Justice for All(邦題:メタル・ジャスティス)』で、Youthanasia は『Metallica(通称:ブラック・アルバム)』辺りが妥当でしょうか。いずれもミディアムテンポの作品ですが、前作がやや無機質な感触だったのに対し、本作には "血が通っている" 感じです。

ただ厄介なことに、この "血の通ったMegadeth" は、かつて自身が確立した "インテレクチュアル・スラッシュメタル" と相性が芳しくありません。「あちらを立てればこちらが立たず」と言うか、この "温かみ" を表現するためには、過去のスタイルが邪魔だったのかも・・・

 

やや単調気味だった前作の弱点を補う、バラエティに富んだ楽曲構成

もろ Cowboys from Hell (Pantera) なリフと LAメタルチックな明るいメロディを融合した #2『Train of Consequences』もそうですが、#3『Addicted to Chaos』#5『Elysian Fields』のサビパートや #8『Family Tree』のイントロパートなど、大陸的なメジャー・コードを取り入れた楽曲が本作から登場しています。

前述のアメリカナイズな楽曲群に加え、#4『A Tout Le Monde』#10『I Thought I Knew It All』などの前作の雰囲気を持つマイナー調のミディアム曲が入ることで、やや単調気味だった前作の弱点を補うかのようなバラエティに富んだ構成となっているのが本作の特徴です。

また、#1『Reckoning Day』#13『Millenium of the Blind』のギターソロ・パートや #7『Blood of Heroes』のBメロ〜サビにかけてのメロディラインでは、演歌をルーツの一つに持つ Marty さんの魅力が最大限に発揮されています。

 

音楽性の変遷に左右されない "独自のメロディライン"

そんな中、#9『Youthanasia』#11『Black Curtains』の2曲に漂う "The Megadeth" な初期の香りが脈々と受け継がれたサウンドを目の当たりにすると、"本質的な部分は決して揺るいでいない" ということに気付かされます。

結局のところ Metallica にしても Megadeth にしても、音楽性の変遷とは関係なく "独自のメロディライン" を持っているバンドは変化にめっぽう強いです。90年代という暗黒期にも関わらず、全盛期の勢いを落とさず安定的なセールスを実現出来たのも、これが理由ではないでしょうか。

そして、本作の "バラエティに富んだメロディアス路線" を前作の "乾いたサウンド・プロダクション" で再構築したのが次作『Cryptic Writings』です。前作と本作の作風をしなやかに融合した Cryptic~ によって、90年代の Megadeth サウンドは完成形へと近づいていきます。

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