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音楽のこと

【鋼】Metallica『Metallica (The Black Album)』レビュー

2016年9月27日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1991年リリース。前作『...And Justice for All』から3年ぶりとなる通算5作目のフルアルバムです。

米国で1,600万枚以上・世界的には3,000万枚以上のセールスを記録しており、さらに Billboard 200 に383週(ビルボード公式サイトによると396週?)チャートインしています。ちなみに(ベスト盤・サントラ・ロック以外のジャンルを除くと)この実績は、Pink Floyd『The Dark Side of the Moon(邦題:狂気)』の923週に次ぐ2番目です。

プロデュースは、Loverboy・Bon Jovi などのミキシング・エンジニアを経て Motley Crue を始めとした数多くのロック/パンク/メタル・バンドを手掛ける Bob Rock さんが担当。

彼が担当した Motley Crue 『Dr. Feelgood』の "音作り" に興味を持ったメンバーが、Nirvana・Alice in Chains・Soundgarden といったグランジ・バンドに大きく影響を受けて誕生した本作は、Pantera や Machine Head などと共に "グルーヴ・メタル" というジャンルの繁栄を後押しすることとなります。

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90年代の Black Sabbath

  1. Enter Sandman
  2. Sad but True
  3. Holier Than Thou
  4. The Unforgiven
  5. Wherever I May Roam
  6. Don't Tread on Me
  7. Through the Never
  8. Nothing Else Matters
  9. Of Wolf and Man
  10. The God That Failed
  11. My Friend of Misery
  12. The Struggle Within

前作の "聴こえないベース" でよほど叩かれたのか、本作はとにかく重低音を効かせまくっているのが特徴です。リマスター無しでのサウンド・プロダクションの良好さで言えば、Queensryche『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミストランド〜)』と良い勝負かもしれません。

ニューメタル以降の典型的なダウンチューニング・サウンドのような "物理的な重さ" には敵いませんが、この手のバンドの源流であるがゆえの説得力やオーラは群を抜いています。

それは、2nd〜4th までの冒頭曲に見られる "アコースティックなイントロ → スラッシュメタル" という定番パターンを崩してきた #1『Enter Sandman』を聴けば明白。過去作のグルーヴ・メタル路線の楽曲とは比較にならないほどのスケール感です。

地を這うようなリフが The Sleep (Cowboys from Hell) を彷彿とさせる #2『Sad but True』や #10『The God That Failed』、スピード感とグルーヴ感を兼ね備えた #7『Through the Never』、勇壮なイントロからの Walk (Vulgar Display of Power) なサウンドが印象的な #6『Don't Tread on Me』などからは、Pantera と同時代性を共有していたことを色濃く感じさせます。

また、前述の楽曲群と毛色は似ていますが、#5『Wherever I May Roam』の呪術的なメロディラインや #11『My Friend of Misery』の陰鬱な雰囲気は、Alice In Chains や Soundgarden を通り越してドゥーム・メタルの祖 Black Sabbath に接近してしまったかのような重厚感です。

ちなみに、ゴリゴリのスラッシュメタル・ファンからは認められそうにないですが、#3『Holier Than Thou』#12『The Struggle Within』のようなスピード・チューンも存在しますし、#4『The Unforgiven』#8『Nothing Else Matters』などのバラード曲では、前作からさらに歌心がアップした James Hetfield さんの哀愁たっぷりなボーカルが堪能できます。

前述のような疾走曲・バラード曲がバランス良く配置されているので、実は意外とダレません。ロクに聴いてもいないくせに "遅い" の一言で片付ける方々も中にはいらっしゃいますが、別にヘヴィ一辺倒な作品というわけでもないんですよね。前作と同様、イメージ先行で誤解されている側面は多少あるかもしれません。

 

ヘヴィ・ミュージックの "幅" を広げた作品

冒頭でも書きましたが本作は、全世界で3000万枚も売れてしまったことによって "90年代のメタル・シーン=ニューメタル" みたいな極端な状況を作り出してしまった作品です。

この点について否定的に語る方もいらっしゃいますが、個人的には「メタル音楽の懐が広くなった」と好意的に捉えています。というか「00年代でメタル・シーン完全復活したんだし、そこまで目の敵にしなくても・・・」といった感じです。

本作のスゴイ所は、後追いでこの作風に行き着いたのではなく "自ら生み出した" ということに尽きると思います。グランジ・シーンからの影響を Merallica流に咀嚼しつつ "新たな潮流" を発生させた功績は、決して小さくはないでしょう。

Megadeth『Youthanasia』も Anthrax『Sound of White Noise』も Testament『Low』も Fight『War of Words』も、本作の成功が無ければ世に出ていなかったはずです。もっとも、Anthrax は本作の1ヶ月前に "Bring the Noise" でラップコアやってたりするので、後続のバンドにもたらした影響力としては良い勝負なのかもしれない・・・

なお、本作の作風が好みなのであれば次作『Load』もおそらくイケるはずです。ただし、メタリックな質感は抑えられ "ラフなハードロック・サウンド" へと若干変化しているのは事実なので、どうしても受け付けないという方はいらっしゃると思います。

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