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『Ever 17』レビュー:仮説が次々と覆される、先の見えない展開!【終わりよければ全てよし】の成功例

かねてからプレイしようと思っていた『Ever 17』を、先日ようやくクリア。だいぶ古い作品なのでシステム・演出面・ゲームバランスなどに若干の難はありますが、評判どおりの素晴らしい作品でした。

当記事では、ネタバレ抜きでのレビューが極めて難しいことで有名な本作の魅力を "ネタバレ無し" で伝えていこうと思います。

なお、当レビューは PSP版 (Ever17 -the out of infinity- Premium Edition) 準拠となっています。XBOX360版は、キャラ設定・世界観設定などが微妙に変更されているのでご注意ください。

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『Ever 17』の簡単な紹介

西暦2017年5月1日。様々な法律の改正や技術の発展が行われた近未来の日本。

様々な人々が祝日の予定に思いを巡らせる中で、必ず口端に登る施設があった。海洋テーマパーク、《LeMU(レミュウ)》。かつて存在したかも知れぬと夢見られる「レムリア大陸」の名を冠したその施設は、遊園地を丸ごと海の中に沈めるという斬新なテーマパークであった。海中をゴンドラで泳ぎ、視界を覆いつくすほどの魚を見上げながら散歩する。それはまさに現代によみがえった夢の大陸であった。そのLeMUに時同じくして足を運んだ、1人の青年と1人の少年がいた。珍しい観光施設を、しかしろくに楽しめないまま2人の時間は慌しく過ぎ去っていく。

突如、楽しげな歓声を切り裂くようにして耳を劈くような緊急避難警報が響き渡る。折り悪く、施設から逃げそこなった1人の青年と1人の少年。視界には誰も居らず、静まり返るテーマパークに不気味な咆哮が響き渡る。怒涛のごとく襲い掛かる鉄砲水。浸水を防ぐため自分たちごと閉じ込めようとする防水隔壁。何とか一命をとりとめ脱出経路を探すうちに、同じ境遇にある生存者たちを発見する。閉じ込められた生存者は、6人。

地上に直通した第一階層は完全浸水しており、脱出用の通路や非常階段やエレベータも通行不可能。外部への通信も全く通じず、ただ助けを待つことしか出来なくなってしまった。しかし空気も食料も幾ばくかは余裕があり、当分は生存が可能ではある。LeMUの完全圧壊予想時間は今より5日後、5月7日午前4時30分前後。

脱出の目処がまったく立たないものの、即座に自らの命が脅かされる状況でもない。焦燥と弛緩の上で不安定に揺さぶられつつも、LeMUから生きて脱出するために6人の生存者たちは協力して生き残る覚悟と連帯感を固めるのだった。

Wikipedia『Ever17 -the out of infinity-』より引用

※Wikiに重大なネタバレが載っているので、もし未プレイの場合あらすじ以外の項目は絶対に読まないでください

『Ever17 -the out of infinity-』は 2002年に KIDから発売された、いわゆる "ループもの" のノベルゲーム (ビジュアルノベル) です。発売元の相次ぐ倒産・解散に見舞われたため、2007年以降の移植版はサイバーフロントから、2011年の XBOX360リメイク版については 5pb. (MAGES.) から発売されています。

シナリオは『極限脱出』シリーズの打越鋼太郎さんと『ルートダブル -Before Crime * After Days-』の中澤工さんが担当。作曲は『STEINS;GATE』などの科学アドベンチャーシリーズを手掛ける阿保剛さんが担当しています。SFサスペンスなノベルゲームが好きな方々にとっては、非常に豪華な顔ぶれだと言えるのではないでしょうか。

便宜上ジャンルは "恋愛アドベンチャー" という扱いになっていますが、ギャルゲーに "バーチャルな恋愛" を求めるタイプの人にはあまり向いていません。どちらかと言うと推理アドベンチャーやサウンドノベルなどが好きな人向けの作品なのですが、こちらの層はこちらの層で "日常パートの茶番劇" に拒絶反応を起こしそうな気もします。

 

『Ever 17』のゲームシステム&進め方について

本作独自の特殊なゲームシステムなどは特にありません。いくつかの選択肢からストーリーが枝分かれしていく、極めてオーソドックスなノベルゲームです。

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ストーリーは大きく『倉成 武』編と『少年』編の 2つに分かれており、武編では途中から『小町つぐみ』『茜ヶ崎空』いずれかのルートに分岐。少年編では『田中優』『松永沙羅』いずれかのルートに分岐。

武編・少年編に登場するヒロイン 4人 (合計 4ルート) の個別エンディングを全て見終えると、もう 1人のヒロインである『八神ココ』ルート (最終編) への道が解放されます。

攻略順については、以下の順番がベストです。

小町つぐみ → 茜ヶ崎空 → 田中優 → 松永沙羅 → 八神ココ

ざっくり言うと、武編 → 少年編 → 最終編 の順ですね。実際にプレイしてみると分かりますが、この順番で読み進めていかないと時系列的に混乱する場面が出てくるかと思います。

ちなみに、もし先にトゥルーエンドを見てしまった場合 (100%クリアにこだわりが無ければ) バッドエンドを回収しに戻る必要はありません。

トゥルーエンド後に解放される "小町つぐみ・茜ヶ崎空編エピローグ" および "田中優編エピローグ" についても同様ですが、物語の根幹に関わるような重要な情報は特に出てきませんでした。4つの個別ルートのグッドエンド+トゥルーエンドを見るだけでも問題ないと思います。

 

以下に攻略サイトのリンクを張っておきますので、参考にどうぞ。『ぐるぐる☆ちょっぷ』さんの攻略が最も充実していてオススメです。

参考リンク
Ever17 - the out of infinity - 攻略ページ|ぐるぐる☆ちょっぷ
※選択肢による影響や重要ポイントでの注意喚起など、補足説明が非常に細かい

Ever17 -the out of infinity- PREMIUM EDITION 攻略|Enjoy Game Life
※バッドエンドへの行き方が一番分かりやすいかも

100%の道のりとススメ|覇気がないのはデフォルトです。
※メッセージ100%・選択肢100%を目指す際に詰まりそうな箇所を解説

Ever17攻略サイト|ゲームライン

Ever17 -the out of infinity- 攻略Wiki|ヘイグ

Ever17-攻略|infinity loop

Ever17攻略|BlackOut

 

なお、共通ルートは普通に読み進めていると同じことの繰り返しで眠くなってくるため、メモを取りながらのプレイを推奨します (最終ルートで改めて詳細な説明がされるので必須ではありません) 。セリフ全再生+メモを取りながらだったためプレイ時間は 100時間弱まで膨らんでしまいましたが、早い人なら 20〜30時間ぐらいでトゥルーエンドまで到達できるかと思います。

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※重大なネタバレが含まれているため、画像の一部にモザイクをかけています

ちなみに iPhone+Evernoteで攻略メモを取っていたら、トータル 5万字以上に膨れ上がってしまいました。

ネタバレだらけなので当記事内に載せるわけにはいきませんが、メモを取らなきゃいけないぐらい読み進めづらかったとも言えますし、逆に言うとメモを取りたくなるぐらいのめり込んだとも言えます。

 

『Ever 17』をプレイしてみての率直な感想

"ループものの傑作" という口コミ以外から情報が入ってきにくい

『Ever 17』への巷の感想でよく見かけるのが、"終盤に到達するまでがとにかくダルい" というものです。ノベルゲーム全般の特徴と言ってしまえばそれまでなのですが、中でも本作の "道中のダルさ" は群を抜いていると思いました。

まず、トゥルーエンドに到達するために、ほぼ同じ内容の共通ルートを最低 5周 (バッドエンドを含めると 8周) は繰り返さなければなりません。

もちろん全く同じ内容であれば文章を飛ばしまくっても良いのですが、選択肢によって細部の展開が変わる上、それらの多くが最終ルートへの伏線やヒントになっている場合もあるため、うかつに飛ばし読みできないというジレンマを抱えています。

トゥルーエンド後のエピローグで、本編で描ききれなかった世界観や設定が駆け足で説明されることにも、若干のバランスの悪さを感じました (PSP版にて) 。エピローグにも関わらず、本編の緊張感をわずかに残してしまっているんですよね・・・これはこれで読み応えがあるんですけど、最終ルートの中盤〜終盤あたりから小出しにしていたら、全体的なバランスはもう少し良くなっていた気もします。

ループものノベルゲームの代表格という評価が確立された今ではオススメに挙がることも多い作品ですが、本作の肝である最終ルートに到達する前に挫折してしまう人が一定数いるのは、この辺りに原因があるのではないでしょうか。何せ、本作発売当時のファミ通クロスレビューにて、トゥルーエンドまでプレイしていないレビュアーが微妙な点数 (7・6・7・6=26点) を付けた結果、抗議が殺到し再レビューする羽目になったというエピソードがあるぐらいですからね。

 

また、立ち絵と一枚絵のタッチが異なって見える点や、ギャルゲー準拠なセリフ回しなどが気になる人も中にはいらっしゃるかもしれません (武の立ち絵だけ、わざと下手に書いているように見えるのは気のせいだろうか・・・) 。

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オープニング曲も (個人的には) 未プレイ者のプレイ意欲をかきたてるには少々パンチが弱い気がします (オリジナル版および XBOX360版) 。また PSP版オープニングの『頭文字D』で流れていそうなトランス調の楽曲は、迫りくる危機感の演出に重きを置き過ぎたせいか、深海の神秘的な雰囲気が全く活かされていないのが惜しいところです。

こればかりは好みの問題なので一概には言えませんが、例えば『ふしぎの海のナディア』の OP曲のような "水" を感じさせる爽やかな曲調だったら、未プレイ者への取っ掛かりとしては良さそうな気もしました。もっとも、こっちはこっちで雰囲気が明るくなり過ぎちゃうかもしれませんけど・・・

総じて言えるのは、本作に興味を持ってもらうための武器が極めて少ないということです。

ネタバレ無しで本作の魅力を伝える場合、「このノベルゲー全クリしたんだけど、似たような作品って他にあるのかな?」といった方々への "次の1作" としてオススメする以外に良い紹介方法が思いつきません。

かくいう私自身、シュタインズ・ゲートと似たような作品を探していたら本作に出会ったという経緯がありますし、それ以外のルートではおそらく辿り着けなかったと思います。

 

OP映像やプロローグの時点で既に、プレイヤーへのミスリードは始まっている

巷でよく『STEINS;GATE』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』などが好きな方々にオススメされているのを見かけますが、それはあくまで “キャラ設定” や “演出” 部分においてであり、物語の根幹をなす謎解き部分の独自性は高いと思います。

むしろ、共通ルート・個別ヒロインルートでプレイヤーを欺き、最後の最後でひっくり返すという点では『CHAOS;CHILD』などのほうが作風としては近いかもしれません。いわゆる "叙述トリック" というやつですね。

『CHAOS;CHILD』レビュー:ギャルゲー・サイコホラーゲーの皮を被った、大人向け道徳の教科書

そもそも「真犯人は誰なのか?」といった要素も実はそこまで重要ではなかったりします。なぜなら、おそらく "本作のテーマはそこではない" から。

続きを見る

オープニングムービーやプロローグの時点で既に、プレイヤーへのミスリードは始まっています。

各ヒロインの個別ルートにて本作品の謎は少しずつ明らかになっていくのですが、それらもミスリードの演出に一役買っています。

ちなみに私の場合、各ルートをクリアする度に考察しながらプレイしていたにも関わらず、オープニングとプロローグの仕掛けについては最終ルートでネタバラシされるまで気付けませんでした (自分の勘が悪いだけかもしれませんが) 。ループもの・並行世界・タイムトラベル・能力者設定などといった “この手の作品あるある” に慣れていればいるほど、裏をかかれるのではないでしょうか。

また、流し読みしてしまいがちな日常パートの至るところにも、ヒントやミスリードさせるためのトラップが散りばめられています。

最終ルートに到達する前にプレイをやめた場合、それらの描写は単なる怪奇現象で終わってしまうのですが、もちろん “全てに意味がある” のは言うまでもありません。バラバラになったパズルのピースが最後の最後で “然るべき場所に” 1枚 1枚はまっていく様はなかなかに爽快です。

ちなみに、当記事内にもミスリードを誘う表現を仕込んでいます (具体的な箇所は言いません) 。

 

詳しくは言えないけど "今こそ" プレイすべき

本作の一番の売りであるトリック部分との関連性は若干薄めなのですが、作中に登場する “とある設定” が不気味なほど現実世界と被ることにゾッとさせられました。

この作品は “今こそ” プレイすべきです。

おそらく、しばらくの間 本作のリメイクは出せないだろうし、場合によっては今後一切出せない可能性すらあると思います。版権の問題ではなく、別の理由で。

何なら、上記の言い回しすら軽めのネタバレになってしまっているかも・・・気付いちゃったらごめんなさい。

 

まとめ

まとめると、こんな感じです。

  • クセが強いせいか、口コミ以外から情報が入ってきにくい
  • "ループもの" のお約束を逆手に取ったミスリードだらけの展開
  • 預言書なのか?と思うほど現実世界と重なる不気味な設定

傑作と言っておきながら、記事内容を読み返してみるとネガティブなことばっかり書いてました。

惜しいんですよ、この作品。終盤レベルの緊張感が序盤~中盤でも保たれていれば、さらに評価は上がっていたはずです。

裏を返せば、序盤~中盤で思いっきり足を引っ張っているにも関わらず、ノベルゲーム界の頂点の一つとして君臨しているとも言えます。

共通ルートの繰り返しに耐えられず脱落した場合 "佳作" 止まりで終わってしまう作品ですが、当記事を読んで少しでも興味がわいたら、ぜひプレイしてみてください。もちろん最後まで。

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