YouTubeには、特定の国からの視聴が制限されている動画がいくつか存在します。
例えば、坂道シリーズ(乃木坂46・欅坂46)の公式MVは、アメリカなどの国では視聴することができません。
※ただし代表的なMVは、視聴制限された対象国からでもVEVOで観ることが可能です。坂道シリーズのVEVO版公式MVは日本国内からは視聴不可。
また、BNK48『恋するフォーチュンクッキー』の MVなどは逆に、日本国内から視聴することができません。コメント欄も非表示だし、チャンネル登録者数も不明。
いずれのケースでも MVの "内容" 自体を知ることは可能ですが、まずそれらの MVは正規の方法でアップされたものではありません。今さらこんなことを言うのも野暮ですけどね。
まあ↑の件はともかくなんですが、それ以上に残念なのは "海外ファンのコメントが読めない" "本家とVEVO版で視聴回数が分散してしまう" ということです。むしろこっちが致命的。
前者については、ぶっちゃけ「海外の反応を気にする日本ホルホル野郎じゃねーか」って言われたらそれまでですが・・・私も人間ですし、人並みにリアクションは気になります。外国人のコメント読んでると、日本人と見ているポイントが異なる人なんかもいたりして結構面白いですからね。
ただ、後者に関して言うならば「何でわざわざ分けるかな?」と率直に疑問を抱いてしまいます。K-POPアイドル辺りがよくやる "Japanese version" とかなら(中身が全然違うので)まだ分かるんですが、VEVO版って本家MVと中身一緒ですからね。本当に意味不明。
さて、そんな日本国内では視聴を制限されているYouTube動画を "日本国内から" 視聴する方法が実は存在します。合法性・違法性については国ごとにルールが異なりますが、基本的には合法です。
日本で視聴できないYouTube動画を観る方法
大昔から知ってる人にしてみれば「今さら?」って思われるかもしれませんが、結論を言ってしまうと "IPアドレスの偽装" をします。
IPアドレスを実社会で例えるなら "住所" です。
我々がインターネットに接続する際は必ず、パソコンやスマホなどの機器ごとに IPアドレスが割り当てられています。ネット接続時に IPアドレスが識別されることによって、どこの国や地域からアクセスしているかを判別しているわけですね。
簡単に言うと、このIPアドレスをアメリカ・イギリス・タイなどの国の IPアドレスに(動画を観ている間だけ)書き換えてしまおうという話です。
何となく難しく思われるかもしれませんが、実際の作業はめちゃめちゃ簡単です。
『SoftEther VPN』のインストール
まずは、IPアドレスを一時的に書き換えてくれる『SoftEther VPN』というソフトをインストールしましょう。
ダウンロード
SoftEther VPN(公式サイトのダウンロードページへ飛びます)
ダウンロードページのプルダウンメニューを開くといくつか種類が出てきますが、今回インストールするのは『SoftEther VPN Client』です。
- ダウンロードするソフトウェアを選択 → SoftEther VPN (Freeware)
- コンポーネントを選択 → SoftEther VPN Client
- プラットフォームを選択 → ご利用中のもの(Windows/MacOSX/Linux)を選択
- CPUを選択 → Intel (x86 and x64)
全て選び終えると、下のほうにダウンロード可能なファイルがズラッと表示されます。
これらを全部ダウンロードする必要はありません。リストの一番上に太字のリンクがありますので、それだけをクリックしてダウンロードすればOKです。
多くのソフトと同様、セットアップウィザードは案内に沿って進めていけば問題ないので割愛します。
ただし、一番最初に表示される "インストールするソフトウェアの選択" については、[SoftEther VPN Client] のほうを選んでください。すぐ下の説明を読めばすぐに分かりますが、管理ツールだけインストールしても VPN接続できません。
『SoftEther VPN』を使ってVPN接続する方法
『SoftEther VPN クライアント接続マネージャ』を起動すると、以下のようなウィンドウが表示されます。
この中の [VPN Gate 公開 VPN 中継サーバー] と書かれた文字をダブルクリックしてみてください。
すると、中継サーバーの一覧が表示されます。
チェックする箇所は基本的に [国・地域] と [回線速度] ぐらいで大丈夫です。
今回は、タイ(Thailand)を選択してみました。
該当箇所をダブルクリックするか、もしくは右下の [選択したVPNサーバーに接続] をクリックすればOK。
※ダブルクリックだと反応しない場合があるので、素直にボタンを押したほうが早いです
さて、ここで「VPN通信が禁止されている国・地域ではVPN Gateを使用しないでください。」という警告メッセージが表示されます。
一瞬ドキッとするかもしれませんが、ご安心ください。合法的な使用であれば、VPN接続は世界の主要国で許可されています。ただし、見ての通り社会主義国や中東地域はヤバそうなので、基本的にはやめておいたほうが無難です。
VPN接続を許可している国 | VPN接続を禁止している(orグレーゾーン)国 |
---|---|
アメリカ | アラブ首長国連邦 |
イギリス | イラク |
カナダ | イラン |
-- | オマーン |
-- | 中華人民共和国 |
-- | トルコ |
-- | ベラルーシ |
-- | ロシア |
タイについては、おそらく大丈夫だと思います(中国も大丈夫そうです)。
検索するとなかなか物騒な記事が引っかかりまくりますが、それらの情報はあくまでも "タイ国内で通常の方法でネット接続している" という条件下での話です。タイに限らず、どの国にも言えることですけどね。
そもそも VPN接続する理由は "個人情報を守るため" ですから、日本から素性を隠して、タイのアーティストの公式MVを観るぐらいであれば全く問題ないでしょう。
まあ・・・何かあった時は完全に自己責任ですので、私もその辺りは覚悟した上で人柱やっています。どうしても不安な方は、当記事にて知識を得るだけにとどめておいてください。
繰り返しになりますが、アメリカ・イギリス・カナダなどの国は VPNの合法利用を正式に許可していますので、基本的にはこちら3ヶ国をメインに使っていけば良いかと思います。
[接続に使用するVPNプロトコルの選択] というポップアップウィンドウが表示された場合は、そのまま [TCPを使用] を選んで OKボタンをクリックしちゃって問題ありません。
ちなみに、簡単に説明しますと TCPが "安全重視" で、UDPが "速度重視" といった感じです。TCPで動作が不安定になるようであれば、UDPを試してみるのも良いかもしれません。
実際に BNK48『恋するフォーチュンクッキー』の公式MVへとアクセスしてみると、視聴制限のアイコン&警告文がなくなり、普通に動画が観れるようになっているはずです。
【MV Full】Koisuru Fortune Cookie คุกกี้เสี่ยงทาย / BNK48
https://www.youtube.com/watch?v=mfqJyKm20Z4
日本からの通常アクセス時には表示されなかったコメント欄も、きちんと表示されています。タイ国内だけで115,312件のコメント・・・?
スマホからVPN接続する方法
スマートフォンでもVPN接続は可能です。まず先に、手動でサーバ情報を入力する方法をご紹介します。
なお、ブラウザであらかじめ『VPN Gate』のページを開いておいてください。サーバー情報入力の際に必要となります。
設定の際に使うのは、先ほどのページ内にある DDNS名・IPアドレス(ISPホスト名)の箇所です。
iPhoneでVPN接続する方法
1.[設定] → [一般] → [VPN] → [VPN構成を追加...] の順にタップ。
2.[構成を追加] メニューにて所定の入力欄に、利用したい国の VPN中継サーバー情報を入力。
- 説明 (Description) → 任意のタイトル ※Thailand,USA,Canadaなど
- サーバ (Server) → IPアドレス or ホスト名
- アカウント (Account) → vpn
- RSA SecurID → OFF
- パスワード (Password) → vpn
- シークレット (Secret) → vpn
- すべての信号を送信 (Send All Traffic) → ON
一番上のタブ(タイプ)は [L2TP] のままで大丈夫です。
サーバの欄には、xxx.xxx.xxx.xxx(xxxには数字が入ります)といった形でIPアドレスを入力するか、vpnxxx.opengw.net といった形でホスト名を入力いしてください。どちらの方式でも構いませんが、IPアドレスは数値が変化する場合もあるため、基本的にはホスト名の形式で入力したほうが良いかもしれません。
[アカウント] [パスワード] [シークレット] 欄には全て vpn と入力してください。
3.全ての入力が終わったら、右上の [保存] をタップ。
4.利用したいVPNにチェックマークが付いているのを確認したら、[VPN構成] の右端にあるボタンをタップ。これで VPN接続がスタートします。
AndroidでVPN接続する方法
1.[設定] → [その他の設定] → [VPN] の順にタップ。
2.右上の + をタップして [VPNプロファイルの編集] を開き、所定の入力欄に、利用したい国の VPN中継サーバー情報を入力して [保存] をタップ。
- 名前 (Name) → 任意のタイトル ※Thailand,USA,Canadaなど
- タイプ (Type) → L2TP/IPSec PSK
- サーバーアドレス (Server address) → IPアドレス or ホスト名
- IPSec事前共有鍵 (IPSec pre-shared key) → vpn
- 転送ルート (Forwarding routes) → 0.0.0.0/0
※ [L2TPセキュリティ保護] [IPSec ID] [DNS検索ドメイン] [DNSサーバー] は空欄で大丈夫です。
3.先ほど作成したプロファイルをタップし、[ユーザー名] [パスワード] の両方に vpn と入力して [接続] をタップ。
『OpenVPN』を使ってVPN接続する方法
先に手動設定によるVPN接続方法をご紹介しましたが、残念ながら私の環境では接続できませんでした。スマホの場合、OSのバージョンを始め様々な原因が絡んでいるとのことで、どうしてもダメなら手動接続は諦めるしか無さそうです。
というわけで、次に『OpenVPN』というアプリを使って VPN接続する方法をご紹介します。当記事ではAndroid版を利用しますが、iOS版もおそらく同じ感じでしょう。
iPhone/iPadの方は App Storeから、Androidスマホの方は Google Playから『OpenVPN』をインストールしてください。
iPhone/iPad:OpenVPN Connect
Android:OpenVPN Connect – Fast & Safe SSL VPN Client
続いて、前項でも出てきた『VPN Gate』というサイトを開き、VPN接続を利用したい国の OpenVPN設定ファイルもダウンロードしておきましょう。
ホスト名形式と IPアドレス形式の2種類ありますが、どちらか1つでオッケーです。
『OpenVPN』を起動すると、ネイビー色のホーム画面が表示されます。
既に面倒くさそうな雰囲気が漂っていますが、実際に使うのは一番下の [OVPN Profile] のみです。上2つは使用しません。
[OVPN Profile] をタップすると、[Import Profile] という画面が表示されますので、先ほどダウンロードした OpenVPN設定ファイルをインポートしましょう。
設定ファイルをタップしてオレンジ色にする → [IMPORT] → [ADD] の順にタップしていけばオッケーです。私は面倒くさかったのでやりませんでしたが、ADDをタップする前にタイトルを入力することもできます。
これで設定は全て終わりました。さっそく VPN接続してみましょう。左端のボタン&接続リクエスト右下の [OK] を順にタップしてください。
VPN接続がオンになりました。
画面の上のほうには接続状態を示すグラフが、下のほうには IPアドレス・ホスト名・ポート・プロトコルなどの情報が表示されています。
『VPN Gate』のサイトへ行き、本当に海外の IPアドレスに書き換わっているかどうか確認してみました。タイの国旗が表示されているので大丈夫みたいですね。
タイ以外の国では視聴できない BNK48の『恋するフォーチュンクッキー』も、きちんと視聴できるようになっています。
おまけ:乃木坂46や欅坂46の公式MV(本家)がアメリカなどの国で視聴できない理由
ここからは余談です。
なぜ坂道シリーズのMVが一部の国・地域で弾かれるのかと言いますと、YouTubeと SME(坂道シリーズのレコード会社)との契約問題が絡んでいます。簡単に言うと「YouTube Red(現:YouTube Premium)と契約しないレコード会社は、同サービス対象国の視聴者には見せないよ」と YouTubeサイドから圧力を掛けられている、という話ですね。
ロックバンド『ゲントウキ』の田中潤さんによると、下記レーベルのMVは YouTube Redサービスのローンチ国(アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・メキシコ・韓国など)で視聴することができないとのことです。※2017年2月15日時点
- 残響レコード(té、ハイスイノナサなど)
- スターダスト(ももクロ、エビ中、超特急など)
- テイチク(石川さゆり、天童よしみ、BEGINなど)
- 日本コロムビア(ささきいさお、水木一郎、04 Limited Sazabysなど)
- ビクター(サザンオールスターズ、星野源、斉藤和義など)
- ポニーキャニオン(aiko、GLAY、工藤静香など)
- AKS(AKB48、SKE48、HKT48、NGT48)
- DREAMUSIC(加山雄三、森山良子、岡本真夜など)
- P-VINE(あぶらだこ、トクマルシューゴなど)
- SME(坂道シリーズ、ポルノグラフィティ、西野カナなど)
- UKプロジェクト(銀杏BOYZ、勝手にしやがれ、TOTALFATなど)
- Up-Front/zetima(ハロプロ系、森高千里、堀内孝雄など)
- YAMAHA(中島みゆき、岡村孝子、ゆよゆっぺなど)
やや昔の情報ですので現在は情勢が変わっているかもしれませんが、これらのレーベルのMVが一部の国で観れないとなると、レコード会社や所属アーティストの方々にとっては痛手でしょうね・・・
参考記事
乃木坂46、初のシンガポール公演が終了 MV海外配信&ドキュメント番組放送決定|Real Sound
YouTubeで日本のMVの多くが海外から視聴できず 背景にはGoogleとの規約問題、国内レーベルの葛藤|ねとらぼ
日本の多くのMVが海外からは見ることができない、知られざる構造的問題|togetter
YouTube、"Red" 契約に署名しないクリエーターのビデオを全面削除へ|TechCrunch Japan
あとがき
ちなみに、URLを入力するだけで視聴制限が掛かった動画を観れる『ProxFree』というサイトやブラウザ拡張機能の『ProxFlow』を試してみましたが、いずれのツールも動画を再生することはできませんでした。
YouTube側で対策されてしまったのでしょうか?原因は不明です。
ともあれ、手軽に導入できるツールだとすぐに使えなくなる場合もあったりするので、最初から高機能なツールを使ったほうが良いのかもしれません。
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