大きな目標を達成するために必要な準備の一環として、巷ではよく「ゲームや漫画は売るか、もしくは捨ててください」なんて言われることがあります。
彼らに向かって「それができたら苦労しないよ・・・」「そんなもん根性論だろ・・・」なんてことは口が裂けても言えません。ストイックな自己管理によって成功体験を得てきた方々にとって、このような発言は問題外であり "門前払い" を受けてしまいます。
もちろん、根性論・精神論も役に立つことはあるでしょう。例えば、根性論・精神論が大好きな上司や先輩に向かって "頑張ってますアピール" をする時など、日本国内における "人間関係を良好に保つための処世術" としてなら意外と使えるかもしれません。
そんなことを言いつつ以前の私も、根性論・精神論に対しては「なんやかんや言っても、ある程度は持っていないとダメなのかな」なんて思っていました。『続ける技術』を読むまでは。
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『続ける技術』レビュー:精神論に頼らずに継続力を身につけるための入門マニュアル
悪習慣に至るメカニズムや良質な習慣に至るまでのプロセスを知ることにより、現在の自分を軌道修正していくためのキッカケとなる本です。
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さて、この『続ける技術』という本。
書かれてあること自体はごもっともなのですが、具体的な行動に落とし込もうとする過程で結局 "元々持っている自己管理能力で何とか切り抜けざるを得ない" ような対処法が出てくるのです。
- 禁煙したい → タバコ・ライター・灰皿を捨てる
- 甘いものを控えたい → 甘いものを捨てる
この耐え難い究極の決断に対し、"捨てる or 捨てない" という2択に加え "捨てずに共存する" という第3の選択肢を作ってくれるのが、今回ご紹介する『Kitchen Safe』です。
『Kitchen Safe』を開封してみる
では実際に『Kitchen Safe』本体を触ってみましょう。
※Amazonアウトレットで安く出品されていたものを買いました。
同梱されていたのは、単3乾電池・ユーザーガイド・開発者の方からのお手紙の3点。
見ての通り、プラスチック製のとてもシンプルな箱です。
向かって左側にある "Kitchen Safe" ロゴ部分を取り外すと、電池ボックスが現れます。
電池を入れる際は、あらかじめ2個セットしておいて "真ん中から押す" ような感じでやってみてください。1個ずつ入れようとしたのですが、固くて上手く入りませんでした。
『Kitchen Safe』の使い方
まずは、誘惑の元となるものを容器の中に入れます。
フタの中央に円状のダイヤル兼ボタンが付いています。ダイヤルを回して、時間をセットしてみましょう。
ボタンを押すと、5秒のカウントダウンが入った後にロックが掛かります。カウントダウン中であればキャンセルも可能です。
タイマー作動中はフタの両端からツメが出現し、容器の穴に刺さります。
タイマーがゼロになるとツメが引っ込み、フタが自由に開けられるようになります。
『Kitchen Safe』に入るもの
結論から言うと、縦14cm x 横14cm x 高さ14cm 以内に収まるぐらいの物であれば、何でも入れられます・・・と言われても想像がつきにくいでしょうから、試しに色々と入れてみました。
サイズにもよりますが、おつまみやお菓子の小袋はたくさん入ります(写真は千成商会のミックスナッツ)。例えば『亀田の柿の種』だったら、定番の6袋入りパックを買ってきて、そのまま全部放り込んでしまうとか。
『Kitchen Safe』をそのまま "キッチンタイマー" 代わりに使い、仕事や勉強の休憩時にお菓子がアンロックされる、みたいなルールを設けてみても良いですね。
ゲーム機も時間泥棒の代表格です。私の場合は『Newニンテンドー3DS LL』と『PlayStation Vita』を入れて、6~18時までの間は一切触れないようにしています。
ちなみにスペースに余裕があったので、空いたところに『iPhone4』と『iPhone4S』も入れています。さすがに最近の iPhoneは大きいのでゲーム機と一緒には入りませんが、iPhone単体だったら余裕で何台も入れられるかと思います。
『Kindle』は、横に倒すと入ります。読書は時間泥棒に該当しないような気もしますが、漫画をメインで読んでいるタイプの人は必要に応じて取り入れてみてください。
なお公式サイトによると、他にも以下のようなものを収納できるとのことです。
Kitchen Safe Mini
タバコ、現金、クレジットカード、鍵
5.5インチ(140mm)ぐらいまでのスマホ、iPhone XS (5.8インチ)、Galaxy S10 (6.1インチ) / S10e (5.8インチ)
Kitchen Safe Medium ※当記事で取り扱っているモデル
クッキー、キャンディー、錠剤、タバコ、携帯電話、現金、クレジットカード
5.8インチ(147mm)以上のスマホ、iPhone XR (6.1インチ)、iPhone XS Max (6.5インチ)、Galaxy S10+ (6.4インチ)
Kitchen Safe XL
ゲーム機、電源コード、ポテチサイズのスナック菓子、小瓶 / ミニボトルのお酒
10.4インチぐらいまでの iPad / iPad mini
参考リンク
kSafe Size Chart|kSafe by Kitchen Safe
また『Kitchen Safe Mini』や『Kitchen Safe Medium』でも、ひと工夫することで大きいサイズの物に時間制限を掛けることが可能です。
- ニンテンドースイッチ → ジョイコンだけ Kitchen Safe に入れる
- iPad → 金庫に iPadを入れて施錠し、鍵だけを Kitchen Safe に入れる
『Kitchen Safe』に入らないもの
前項で Mini と XL についても触れましたが、本項では Medium サイズを例に説明します。
結論から言うと、ポーチに入れた状態の New3DSLLや VITAは高さが 14cmを超えてしまうため入りません。1台だけ入れようとしてもダメでした。
社外品のカバーを装着した状態の Kindleも入りませんでした。
純正カバーについては不明ですが、裸Kindleの時点で斜めに入れないと入らなかったので、おそらく無理だと思います。
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アマゾンボックス風Kindleカバーが "本屋さんでもらえる紙カバー" にも似ててとってもオシャレ
分かりやすさを第一に考えるならコレでしょう。どことなく、書店でもらえる紙のブックカバーにも似てるという良いトコ取りなデザインです。
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『Kitchen Safe』のココが良い!
目の前にあるのに、手が届かない
『Kitchen Safe』を例えるなら、初代ドラクエに出てくる "竜王の城" でしょうか。分からない人に説明しますね。
オープニングを終えて拠点の城 (ラダトーム城) から外に出ると、毒の沼地に囲まれた禍々しいデザインの城が見えます。これが竜王の城です。
実はこれがラスボスの本拠地なのですが、海の向こう側にあるため、すぐに攻め込むことは出来ません。各種イベントをこなしつつレベルを上げ、全体マップを時計回りにぐるりと一周していき、物語終盤でようやく辿り着くことが可能です。
- 竜王の城:目の前にあるのに行けない → 何とかして辿り着きたい
- Kitchen Safe:目の前にあるのに取り出せない → 時間が来るまで別のことをするしかない
到達までのプロセス・動機・条件などは異なるものの、共通しているのは "目の前にあるのに手が届かない" ことです。
『Kitchen Safe』の場合は時間が経てば勝手に開きますが、いずれにしても一旦あきらめるしかありません。そしてこの状態が長く続いているうちに、ある変化が訪れました。
中に入れたものを次第に触らなくなる
イギリス人哲学者『ジェレミ・ベンサム』さんによって設計された建築物として、『パノプティコン』という特殊な形状の刑務所が存在します。
ベンサムは「犯罪者を恒常的な監視下におけば、彼らに生産的労働習慣を身につけさせられる」と主張していた。
パノプティコンは、円形に配置された収容者の個室が多層式看守塔に面するよう設計されており、ブラインドなどによって、収容者たちにはお互いの姿や看守が見えなかった一方で、看守はその位置からすべての収容者を監視することができた。
パノプティコンは民間に委託される予定だった施設であり、少ない運営者でもって多数の収容者を監督することが構想されている。ベンサムの構想では、収容者には職業選択の自由が与えられることになっていて、刑期終了後も社会復帰のために身体の安全が確保され、更生するまでこの施設で労働することができる。パノプティコンは単なる刑務所(建物)ではなく、社会に不幸をもたらす犯罪者を自力で更生させるための教育・改造するためのシステムだった。
Wikipedia『パノプティコン』より引用
私の場合、携帯ゲーム機を『Kitchen Safe』に入れて一定の時間だけ触れないようにしていたら、結局それ以外の時間もほとんど携帯ゲーム機を触らなくなってしまいました。その時にふと、以前どこかで聞いたことのある『パノプティコン』の存在を思い出したんです。
- パノプティコン:"常に監視されている" と思わせることで、囚人の自制心が養われる
- Kitchen Safe:"見えているのに触れない" 環境が続くことで、使用者の自制心が養われる
便利ツールを刑務所や看守に例えるのもどうかと思いますが、そのぐらいの矯正力はあると思います。
これだけ聞くと、中には「それって何か嫌だなぁ・・・」と思われる人もいらっしゃるかもしれません。でも、別にゲームで遊んだって良いんです。単に "起動するのが面倒くさくなる" だけなので。
一人で仕事をしていると、そこらじゅうに罠が仕掛けられていることに気が付きます。それらの罠を意志力だけで突っぱねることは極めて難しく、根性論に固執していると精神を病みスランプに陥ってしまうことも。だからこそ、何かしらの "ルールを課してくれる存在" が必要なのです。
テレワーク環境下でも "アフター5" を再現できる
『Kitchen Safe』の面白いところは、1日にデッドライン (締め切り時間) を何度も配置できることです。
これ、キッチンタイマーと何が違うか分かりますか?
断ちたい物を『Kitchen Safe』に入れてロックを掛けると、そこからアンロックされるまでの時間が "制限時間" になりますよね。
裏を返せば、断ちたい物がアンロックされた後〜次にロックを掛ける時刻までの時間も "(遊びの)制限時間" になるということです。
- 8:00~17:00 → 仕事の制限時間
- 17:00~8:00 → 遊びの制限時間
厳密に言うと睡眠や食事の時間などもあるのですが、分かりやすくするため極端な時間配分にしてみました。
だから…例えばゲームなんかの場合だと「次にロックを掛けることになる◯時◯分までの間に次のステージまで進めよう」みたいな感じで自ずと "短期目標" を作ろうと脳が働き出します。その結果、ロックを掛けずにダラダラとプレイするよりもゲームに没頭できるし、無駄の無い動きを心がけるようになっていくわけです。
よく「仕事も遊びも本気でやれ」なんて言いますよね。本気で遊ぶとその分、仕事にも打ち込めるようになると思うんです。
テレワークなどでついついダラ〜っとしがちなのは "行動を縛ってくれる人がいない" からだと思うんですね。時間管理も自分でやらなければいけません。
それを強力にサポートしてくれるのが、まさに『Kitchen Safe』だというわけです。これを使って擬似的に "サラリーマン" 的な環境を生み出すことにより、テレワーク環境下でも "就業時間" の束縛感と "アフター5" の解放感が得られるかと思います。
ランニングコストを安く抑えられる
"報酬系" という言葉を聞いたことがありますか?
報酬系とは、欲求やモチベーションに関わる脳内神経回路・神経伝達物質のことであり、中でも有名なのが "ドーパミン" です。
SNS・ネットサーフィン・ソシャゲ・ギャンブル・酒・タバコ・ドラッグなどがやめられなくなる理由は、報酬系を刺激する罠が至るところに仕掛けられているからだと言われています。そして、報酬系が悪い方向に作用すると "依存症" になるわけです。
世の中は依存症を誘発するトラップに溢れているため、たとえ対処法を知っていたとしても簡単には逃れられません。
このように、ネガティブなものと紐付けられて話題に挙がることもある "報酬系" ですが、上手く利用できれば強力な武器にもなり得ます。『Kitchen Safe』もそんな武器の1つです。
以前の私は、休憩時間に毎回スナック菓子を食べることで、仕事への意欲を保っていました。その方法も悪くはなかったのですが、体調不良に悩まされることが多い上にランニングコストも高いため、途中でやめてしまったんですね。
この "いつでもお菓子やゲームに手を伸ばせる" といったヌルい環境から卒業させられ、「○時~○時までの間、我慢できたらご褒美をあげますよ」といった状況を強制的に作り出してくれるのが、まさに『Kitchen Safe』を導入するメリットです。
そもそも、手を伸ばせばいつでも届く位置にあるものを、我々の脳は本当にご褒美と認識しているのでしょうか?下手すると、ご褒美だと思っていたはずのものが「ゲームやらなきゃ」「お菓子を食べなきゃ」といった具合に、ノルマと認識している可能性すらあるかもしれません。
『Kitchen Safe』を使ってみて実感したのは、"我慢した時間が長ければ長いほど、ご褒美へのありがたみが増す" ということです。これは、好きな時間にゲームをダラダラとやっていた頃には得られなかった感覚であり、プレイ時の満足感は確実にアップしました。
このように、ニンジンの数で釣るのではなく "1つのニンジンを目の前にぶら下げ続ける" というのが『Kitchen Safe』のスタンスなので、結果的にランニングコストを安く抑えられるということですね。
あとがき
これさえあれば、ゲームや漫画を捨てなくても目標達成に向かって走り続けられる!
一言で言い表すと『Kitchen Safe』は、そんなツールだと思います。半信半疑で使い始めてみたら、良い意味で "サラリーマン時代の時間感覚" が戻ってきました。
- 10時のおやつ・3時のおやつを、関係ない時間にたくさん食べてしまう。
- 上司からの監視の目が無いテレワーク環境下で、イマイチ仕事に集中できない。
- 勉強しなければならないのにソシャゲのイベントが気になり、ついついスマホに手が伸びてしまう。
上記のような場面に心当たりがあるのであれば、ぜひ試してみてください。自制心だけでは耐えられないような状況を打破するキッカケになるかと思います。
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