HAGANEYA(@imech_jp)です。
1996年リリース。スラッシュメタル・バンド Slayer が、自身のルーツの一つである "ハードコア・パンク" に焦点を当てて制作したカバー+未発表曲入りのアルバムです。
プロデュースは Rick Rubin さんが担当(エグゼクティブ・プロデューサー名義)。ミキシング及び共同プロデュースを Dave Sardy さんが担当しています。また、アートワークは 6th『Divine Intervention』と同様、Wes Benscoter さんによるものです。
さて、本作にはカバー曲だけではなく、3つのオリジナル曲が収録されています。ただし、直近で制作されたのはアルバム最後の『Gemini』1曲のみ。
#4『Can't Stand You』#5『DDAMM (Drunk Drivers Against Mad Mother)』の2曲は、1984〜1985年に Jeff Hanneman さん(Gt.) のサイド・プロジェクト『Pap Smear』向けに書いた "4つの未発表曲" の内、2曲をリメイクしたものとなっています。
短めの原曲を1トラックにまとめたことによる "二部構成" 感がメタル系カバーと好相性
通常盤
- Disintegration / Free Money(Verbal Abuse)
- Verbal Abuse / Leeches(Verbal Abuse)
- Abolish Government / Superficial Love(T.S.O.L.)
- Can't Stand You(Pap Smear)
- DDAMM (Drunk Drivers Against Mad Mothers)(Pap Smear)
- Guilty of Being White(Minor Threat)
- I Hate You(Verbal Abuse)
- Filler / I Don't Want to Hear It(Minor Threat)
- Spiritual Law(D.I.)
- Mr. Freeze(Dr. Know)
- Violent Pacification(D.R.I.)
- Richard Hung Himself(D.I.)
- I'm Gonna Be Your God (I Wanna Be Your Dog)(The Stooges)
- Gemini(Slayer)
欧州盤
- Disintegration / Free Money(Verbal Abuse)
- Verbal Abuse / Leeches(Verbal Abuse)
- Abolish Government / Superficial Love(T.S.O.L.)
- Can't Stand You(Pap Smear)
- DDAMM (Drunk Drivers Against Mad Mothers)(Pap Smear)
- Guilty of Being White(Minor Threat)
- I Hate You(Verbal Abuse)
- Filler / I Don't Want to Hear It(Minor Threat)
- Spiritual Law(D.I.)
- Sick Boy(G.B.H.)
- Mr. Freeze(Dr. Know)
- Violent Pacification(D.R.I.)
- Richard Hung Himself(D.I.)
- I'm Gonna Be Your God (I Wanna Be Your Dog)(The Stooges)
- Gemini(Slayer)
国内盤
- Disintegration / Free Money(Verbal Abuse)
- Verbal Abuse / Leeches(Verbal Abuse)
- Abolish Government / Superficial Love(T.S.O.L.)
- Can't Stand You(Pap Smear)
- DDAMM (Drunk Drivers Against Mad Mothers)(Pap Smear)
- Guilty of Being White(Minor Threat)
- I Hate You(Verbal Abuse)
- Filler / I Don't Want to Hear It(Minor Threat)
- Spiritual Law(D.I.)
- Sick Boy(G.B.H.)
- Mr. Freeze(Dr. Know)
- Violent Pacification(D.R.I.)
- Memories of Tomorrow(Suicidal Tendencies)
- Richard Hung Himself(D.I.)
- I'm Gonna Be Your God (I Wanna Be Your Dog)(The Stooges)
- Gemini(Slayer)
一応、輸入盤が全14曲・国内盤が全16曲となっていますが、#1『Disintegration / Free Money』#2『Verbal Abuse / Leeches』#3『Abolish Government / Superficial Love』#8『Filler / I Don't Want to Hear It』の4曲は、前半・後半で異なる楽曲が収録されています。つまり、厳密には "+4曲" だということですね。
ぶっちゃけ「分けてほしかった」方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、あえて1トラックにまとめたことで "二部構成" 感が出ており、メタル・カバーの利点が発揮されている印象です。とりわけ #3 なんかは "継ぎ目" が分かりづらかったりしますし、違和感なく1つの楽曲として融合していることがわかります。
各カバー曲は、基本的に "原曲よりもスピードアップ" しています。ただし前述の "二部構成" 曲については、切り替わりのタイミングでテンションが落ちるのを防ぐためか、どちらか一方の楽曲にテンポを合わせているようです。
例えば #1 は、後半の Free Money に合わせて "前半の Disintegration が原曲よりもテンポアップ" しています。逆に #3 は、前半の Abolish Government に合わせて "後半の Superficial Love が原曲よりもテンポダウン" ・・・といった感じで、いたずらに速度を上げているというよりは "全体のバランスを考えた上で、速くするか遅くするかを曲単位で決めている" 印象です。
『Sick Boy』『Violent Pacification』といった "本家 Slayer では絶対にありえない" メジャー・コードの楽曲はカバー・アルバムならではの楽しみであり、本作を初めて聴いた方はあまりのギャップに驚くと思います。
オリジナル曲の #4 と #5 は原曲が元々ハードコア系なので、他のカバー曲と全く違和感がありません(雰囲気を統一してることも大きいですが)。
一方で、最後の『Gemini』は本作リリースの数ヶ月前に完成した楽曲ということもあってか、露骨に作風が浮いています。終盤以外がほぼドゥーム・メタル系の激遅サウンドなのも印象的です。言い方はアレですが、スピード・チューンが続くため "口直し" 的な役割で収録されたのではないでしょうか。
Show No Mercy的な "ギャップ" と、Reign in Bloodの "前のめり" 感を兼ね備えた作品
Anthrax がセルフ・カバー・アルバム『The Greater of Two Evils』で原曲よりも速度を若干落としたのに対し、Slayer はカバー作で "速度を上げる" ことを選択。"セルフ・カバー" と "他人のカバー" という違いはあれど、それぞれのバンドの音楽的方向性に沿ったアレンジだと感じます。
本家と雰囲気が異なるという点では 1st『Show No Mercy』と同じような感覚で聴けますし、速さを追求しているという点においては 3rd『Reign in Blood』のスタンスとどことなく似ているかもしれません。
カバー・アルバムではあるものの、ちょうど 6th と 7th『Diabolus in Musica』の間の時期にリリースされているため、ファンにとってもメンバーにとっても "ナンバリングのスタジオ盤" 的なテンションで聴ける作品だと思います。アメリカで "25万枚" と、オリジナル作品と遜色無いセールスを記録していることからも、評価の高さが窺える作品です。
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