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音楽のこと

【鋼】Anthrax『Sound of White Noise』レビュー

2016年11月2日

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HAGANEYA(@imech_jp)です。

1993年リリース。前作『Persistence of Time』から3年ぶりとなる通算6作目のフルアルバムであり、アメリカで50万枚・カナダで5万枚のセールスを記録しています。古巣 Megaforce Records から Elektra Records へ移籍後初となる作品です。

プロデュースは、Alice in Chains や The Offspring などを筆頭にオルタナティヴ/グランジ界隈のバンドを多数手掛ける Dave Jerden さんが担当。

そして、前年に脱退した Joey Belladonna さんの後任として、元 Armored Saint の John Bush さん(Vo.) が本作から参加しています(後に同バンドへ復帰)。

ちなみに、Armored Saint 自体はゴリゴリの正統派メタル・バンドなのですが、Anthrax への加入時期が時期だけに "オルタナ界隈のボーカリスト" みたいな印象を持ってしまいがちなのが辛いところです。John さん加入時唯一の "全編" スラッシュメタルなセルフカバーアルバム『The Greater of Two Evils』ではヘヴィメタル・ボーカリストとしての彼の勇姿を堪能できますので、こちらもチェックしておくと良いでしょう。

さて、本作で半分ぐらいオルタナティヴ・メタル・バンドになってしまった彼らですが、注意深く聴いてみると80年代 Anthrax が培ってきた印象的なリフが "隠し味" 的に仕込まれている楽曲の存在が浮き彫りになってきます。

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新規リスナーにはわからない "初期作のセルフ・オマージュ" は果たして初期ファンに届いているのか?

  1. Potters Field
  2. Only
  3. Room for One More
  4. Packaged Rebellion
  5. Hy Pro Glo
  6. Invisible
  7. 1000 Points of Hate
  8. Black Lodge
  9. C₁₁ H₁₇ N₂ O₂ S Na
  10. Burst
  11. This Is Not an Exit

1分53秒辺りの「ジャッ!ジャッ!ジャッ!ジャッ!」というギターリフで既に前フリが効いていますが、#1『Potters Field』2分26秒以降の疾走パートでは 3rd 〜 5th のスタイルが顔を覗かせています。

このような仕掛けが #7『1000 Points of Hate』ではイントロ&サビ部分に、#9『C₁₁ H₁₇ N₂ O₂ S Na』では Aメロ&サビ部分に、#10『Burst』では Bメロ〜サビにかけて聴くことが可能です。というか、今挙げた3曲は全てスピード・チューンを主体としているので、80年代 Anthrax のファンでも割と楽しめるのではないでしょうか。

また、#4『Packaged Rebellion』#5『Hy Pro Glo』#6『Invisible』辺りの楽曲はオルタナ系バンドのミディアム曲というよりは "正統派メタル・バンドがプレイするミディアム曲" といった趣で、John さんのボーカルとの相性も悪くありません。

そんな中、James Hetfield さんに「完璧」と言わしめた #2『Only』、いかにも Metallica が好みそうなメロディラインを持つ #8『Black Lodge』といったパワー・バラード系の2曲が、単調になりがちな本作の楽曲群に華を添えています。

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先入観を取り除けば "Anthraxの新作"。ただやはり "別バンド" として捉えたほうが受け入れやすい

"オルタナ系 Anthrax の第1弾作品" といったイメージが非常に強い作品ですが、冒頭2曲や #3『Room for One More』#11『This Is Not an Exit』などを除けば、むしろ伝統的なメタルの方法論に則って楽曲が作られている楽曲のほうが多い印象を受けました。

とは言え、"オルタナ系プロデューサーの起用" や "ボーカリストの交代" などによって、前作までの雰囲気が無くなってしまったことだけは間違いありません。

ちなみに、本作は私が一番最初に購入した Anthrax のアルバムになるのですが、13~14年前に初めて聴いた時は案の定「Stone Temple Pilots っぽいバンドだな~」みたいな感想しか出てきませんでした。

結局 "初期の音楽性を知っているリスナーにしかわからないサイン" を出したとしても、新規リスナーはそんなこと知らないわけで「オルタナに魂を売った落ち目のメタル・バンド」ぐらいのイメージでしか受け取られないというか・・・Anthrax に限った話ではありませんが、"大御所バンドなのにフォロワー扱いされてしまう" ことこそが、路線変更したバンドならではの弱点ですね。

Dave Jerden さんの影響を受けつつもヘヴィメタルの質感をわずかに残した本作ですが、次作『Stomp 442』では、オルタナへの比重が一気に上がっています。悪い作品ではありませんが、初期ファンの琴線に触れるリフなどが大幅に減っているので、いよいよ "別バンド" として考えたほうがしっくりくる感じです。

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