HAGANEYA(@imech_jp)です。
1998年リリース。前作『Stomp 442』から3年ぶりとなる通算8作目のフルアルバムです。前2作のレーベルである Elektra Records を離れ Ignition Records からのリリースとなっています。
プロデュースは、バンドと前作にリードギタリストとしてゲスト参加した Paul Crook さんが共同で担当。
なお Paul さんは本作にはゲスト参加しておらず、バンド初となる "4人体制" で製作された作品です。ただし、#8 には Phil Anselmo さんがボーカルとして、#3 と #7 には 故Dimebag Darrell さんがギターでゲスト参加しています。
Pantera の主要メンバー2人がゲスト参加しているということで巷では「作風が似ている」との声もありますが、個人的にはそこまで似ているとは感じませんでした。むしろ、Charlie Benante さん(Dr.) が当時のインタビューで言及した「Load や Reload がイマイチだったから、自分達がメタル・シーンを活性化させられるような作品を作ろうとした」という旨の発言通り、前述の2作(特に後者)をかなり意識した感じの作風です。
オルタナ・シーンに追従していた前作を、借り物の身体のままで "追い抜いた"
- Crush
- Catharsis
- Inside Out
- P&V
- 604
- Toast to the Extras
- Born Again Idiot
- Killing Box
- Harm's Way
- Hog Tied
- Big Fat
- Cupajoe
- Alpha Male
- Stealing from a Thief / Pieces(『Pieces』は隠しトラックとして8分3秒辺りに収録)
基本的には前作の延長線上にあるオルタナティヴ・ロック路線のサウンドですが、作品全体にエネルギーがみなぎっているというか・・・色んな意味で "底上げ" されている印象があります。
全編トライバルなドラム・サウンドに John Bush さん(Vo.) のメロディアスなボーカルが乗っかってくる #1『Crush』の熱量は凄まじいですし、続く #2『Catharsis』の爽やか系ハードロック・サウンドも前作の疾走曲 "Fueled" に比べてかなり垢抜けています。#2 の清涼感をそのままミディアムテンポで表現した #3『Inside Out』の、地続き的な雰囲気も心地良いです。
さらに、カントリー風味の #6『Toast to the Extras』や Puddle of Mudd 系ポスト・グランジ曲 #9『Harm's Way』の作風も手伝ってか、本作は彼らの全ディスコグラフィでも群を抜いて "アメリカン" です。
オルタナ系一辺倒かと思いきや、#5『604』#7『Born Again Idiot』 では、3rd『Among the Living』を思わせるハードコア要素が復活していますし、#12『Cupajoe』で微かに見られるグラインドコア要素は、このバンドが Dan Lilker さん(Brutal Truth・S.O.D.) を生んだバンドだということを再認識させられます。
そして、CM か何かで絶対に聴いたことがあるはずなんだけど思い出せない #4『P&V』のカウベル音が醸し出す "ロックの代表的な楽曲" 感が、本作の安定感に大きく貢献しているといっても過言ではないでしょう。こういった "貫禄のある楽曲" が1つ存在するだけで作品全体がグッと締まるわけですから・・・何とも不思議です。
メタル暗黒期を乗り切ろうと奮闘する Anthrax の "熱量" を感じる作品
「スラッシュメタル時代の彼らが持っていた、聴けば即座に Anthrax だとわかる "圧倒的な個性" が本作に果たしてあるのだろうか?」という狭い視点だけで語るのであれば、前作同様に本作も微妙です。
ですが本作には、メタル暗黒期である90年代をどうにか乗り切ろうと奮闘する彼らの爪跡を感じます。前作で一旦オルタナ系サウンドを消化した上で、そこに "メタルのAnthrax" の魂が融合したのが本作、といった感じでしょうか。だからこそ、フォロワーチックな音楽性にも関わらず "引っかかる" のだと思います。
このスタイルでの完成形を本作で実現してしまったこともあってか、次作『We've Come for You All』では、初期 Anthrax に 6th『Sound of White Noise』期のグルーヴメタル・サウンドを掛け合わせたかのような作品となっています。
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