HAGANEYA(@imech_jp)です。
個人的には、Killswitch Engage『Alive or Just Breathing』とともに "ニューメタルシーンにトドメを刺した" 作品の一つだと勝手に思っている Shadows Fall の3rdフルアルバム『The Art of Balance』ですが、そんな前作をブラッシュアップしたのが本作『The War Within』です。
一聴してすぐわかりますが、明らかに楽器隊の音圧が上がり、全体的にダイナミックな音に仕上がっています。
プロデュースを担当したのは前作同様 "Zeuss(ゼウス)" こと Chris Harris さんですが「同じプロデューサーでここまで変わるのか?」と耳を疑ってしまったほどです。スタジオ作品の "音の分離の良さ" において、盟友Killswitch Engage に水をあけられていた感のある Shadows Fall ですが、この作品によってクオリティが追いついたと言っても過言では無いでしょう。
ブルース・ディッキンソン期の安定感溢れるアイアン・メイデンを彷彿とさせる進化
前作と比べると疾走感はやや落ちましたが、その代わりに "緩急の付け方" が上手くなっています。全編通して突っ走りまくるだけではなく、効果的にミドルテンポのパートが挿入されていたり、前作以上に Brian Fair さんが歌っていたり・・・
Amazon にて "Iron Maidenの現代版" といった評価を見かけましたが、まさにそんな印象です。前作までが "Paul Di'Anno期(1st〜2nd)" の荒々しいメイデンだとすれば、本作は "Bruce Dickinson期(3rd〜)" の安定感溢れるメイデンを彷彿とさせる進化を遂げているように感じます。
"アコースティック・ギターによる弾き語り" からの "ツーバス連打" で幕を開ける #1『The Light That Blinds』や、Killswitch Engage からの影響を感じさせるミドルテンポなAメロが新鮮な #2『Enlightened by the Cold』、どことなく Iron Maiden を彷彿とさせる #3『Act of Contrition』。前作に負けず劣らず、前半から攻めまくっています。
清涼感あるBメロ~サビの疾走パートが特徴的な #4『What Drives the Weak』は、Shadows Fall がバンドとして一回り成長したことを体感できる名曲。紛うことなき "Shadows Fall印" の爽快感溢れるサウンドですが、意外にも過去作に似たようなスタイルの曲は見当たらなかったりします。
ミドルテンポと疾走パートが5:5の割合で絶妙に混ざり合った #『Stillness』、Brian Fair さんのヘタウマボーカルが堪能できる #6『Inspiration on Demand』、ニューメタル×メロデスな感じで従来の Shadows Fall には無いダークな雰囲気を醸し出す #8『Ghosts of Past Failures』、本作で最もハードコアに攻めまくる #9『Eternity is Within』、#1と同様、イントロのアコギ・パートからドラマチックに疾走しまくる #10『Those Who Cannot Speak』。
本作は疾走曲がとにかく多く、息もつかせぬ展開がひたすら続きますが、前作に若干あった "聴き疲れ" を起こす感じは、本作では最小限に抑えられています。
メタルコア系バンドの多くは、バラード曲や全編ミドルテンポの曲を途中で挟むパターンが多いと思うのですが・・・本作の何がスゴいかと言うと "休憩用の曲を用意せずに聴き疲れも防止している" というところです。
休憩パート・疾走パートを両方カバーしている曲を上手く取り入れることによって、スピード感を落とさずにリスナーの集中力を保たせている感じでしょうか。普段はそこまで意識して聴いているわけではありませんが、割と高度なことをやっているような気がします。
過去作にやや欠けていた "リスナーへの配慮" が、本作では細かい所まで行き届いている
わかりやすく言うと、本作は "より多くのメタルリスナーが気持ち良く聴けるよう丹念に作り込まれた" 作品であり、この点が前作までとは決定的に異なります。
あえて意地悪な表現をしろと言うのであれば "売れ線サウンドを意識し始めた" と言えなくもないですが「彼らは本作で "セルアウト" してしまったのか?」と聞かれると、答えは "否" です。それよりも "過去の作品に欠けていた要素を満遍なく補ってきた" という表現のほうがしっくり来ます。
疾走感・爽快感を何よりも優先するのであれば、本作もしくは次作『Threads of Life』ぐらいまでがギリ許容範囲かな・・・といった印象です。
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