HAGANEYA(@imech_jp)です。
『METAL RESISTANCE』を一言で表すとすれば "メタル幕の内弁当" です。国内外のエクストリーム・ミュージック・ファンは、好き嫌いはともかく一度は聴いておくべき作品だと言えます。
各楽曲についての率直な感想
#1『Road of Resistance』#5『Amore -彗星-』#10『NO RAIN, NO RAINBOW』
『Road of Resistance』では欧米圏のクサメタルファンを、そして『Amore -彗星-』『NO RAIN, NO RAINBOW』では国内のクサメタルファンをカバーしています。
Road of Resistance は、ご存知 DragonForce『Through The Fire And Flames』の公認パロディ。ただ、構成は非常に似ているものの、正直言うと Road of Resistance のほうが高揚感は遥かに上です。何度も何度も訪れる "山場" が、最後の最後まで聴き手を飽きさせません。こんな名曲をド頭に持ってくる潔さがとてもクールです。
『Amore -彗星-』は、下手すると超ダサくなってしまいそうなメロディラインですが、超一流のアレンジが加わることによって、ダサカッコイイ良曲に仕上がっています。神バンドの貢献力は言わずもがなですが、この曲は SU-METALさん以外が歌ってしまうと楽曲の魅力を引き出すことが難しいかもしれません。
#2『KARATE』
以前『KARATE』のことを "ニューメタル" と表現しましたが、実は単なるニューメタルではありません。
ミドルテンポの楽曲にも関わらず手数が多く、ちゃっかり Djent 風味のリフまで入れてたりします。ベースの BOH さんも『何気に難しい』とのこと。
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すっかり本格派!メタルアイドル『BABYMETAL』が新曲『KARATE』のMVを公開
質感が変わりました。今までのBABYMETALは若干コミックバンド的な作りのMVが多かった気がしますが、本格派の空気感が出てきたように思います。
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#3『あわだまフィーバー』
を彷彿とさせるイントロから始まる、インダストリアル・メタル・チューン。
A〜Bメロの浮遊サウンドからメロコア風味のサビへと繋がっていくあたりは、THE MAD CAPSULE MARKETS そのもの。同じく上田剛士さんが作曲を担当した『ギミチョコ!!』が好きなら文句無しにハマるであろう1曲です。
#4『ヤバッ!』#7『シンコペーション』
ベビメタ以降に出てきたメタル系アイドルユニットに多く見られる、ポストハードコア系の楽曲です。
やり尽くされ過ぎて陳腐になりそうなチョイスですが、SU-METAL さんが唄うことによって、その他大勢との格の違いが浮き彫りとなってしまっています。既に "何をやるか?" から「誰がやるか?」の段階にシフトしていると感じました。
#6『META!メタ太郎』
ちょいサイケなイントロ&歌声から始まったかと思えば、急にウォー・メタルへと変貌する『META!メタ太郎』は、従来の BABYMETAL が持つ "遊び心" と、本格サウンドが違和感なく融合する不思議な楽曲です。
個人的には、BABYMETAL の分岐点となるような1曲だと感じました。
#7『From Dusk Till Dawn』
余談ですが、EU/US盤ではシンコペーションの代わりに『From Dusk Till Dawn』が収録されています。
悪くはないのですが、どちらかと言うとインスト寄りなので "つなぎ" 的な役割の楽曲に聴こえてしまいます。欧米圏のファンがちょっとだけ可哀想かも。
#8『GJ!』#9『Sis.Anger』
YUIMETALさんと MOAMETALさんの2人による『GJ!』はニューメタル系の楽曲。『Sis.Anger』は、グラインドコア風味のスラッシュメタル。Sis.Anger の曲名はおそらく、メタリカの『St. Anger』が元ネタでしょう。
前作でも2人のユニット曲はありましたが、今回はポップ度と引き換えにエクストリーム度が向上しています。ただ、個人的には前作収録曲『おねだり大作戦』『4の歌』のほうが好きかも。
#12『THE ONE』
『THE ONE』は以前の記事で書いたとおり "プログレ・メタル" です。
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今度はプログレメタル?BABYMETALが2ndアルバム収録曲『THE ONE』のMVを公開
いかにもDream Theaterのフォロワーバンドとかがやってそうな「あまりにもベタ過ぎるプログレメタル」ですが、何だかんだで良い曲です。
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この曲は改めて言うまでもなく最高です。ただ、あまりにも忠実に "欧米圏の真面目なプログレメタル" を再現しているので、遊び心が無いと感じていました・・・が、#11『Tales of The Destinies』を聴いたことで、ネガティブな印象は一気に吹き飛んでしまうことに。
#11『Tales of The Destinies』
THE ONE が、Dream Theater で言うところの『Metropolis Pt.1』だとすれば、この曲(Tales of The Destinies)はまさに『Metropolis Pt.2』です。
順番的には本家と逆になりますが、Tales of The Destinies には次曲『THE ONE』のフレーズの一部が含まれています。それはまるで『Overture 1928』に Metropolis Pt.1 のイントロが含まれているかのような仕掛け。何とも "粋" なパロディです。
さらに言うと『Tales of The Destinies 』は『THE ONE』以上に変態度が高いです(マスコアの要素が強いかも?)。アイドル的なボーカルを変態メタルに無理やりブチ込んだことにより、今まで聴いたことのない音楽がそこに広がっていました。
THE ONE を聴いて「BABYMETAL結構良いじゃん」と興味を持ったプログレメタル好きが『Tales of The Destinies』によって、ズブズブと底なし沼へとハマっていくであろうことが容易に想像できます。こりゃスゴイ。
最後に
BABYMETAL の偉大な功績は、過去の "世界を目指した日本のアーティスト" 達が切り拓いてきた道の上に成り立っています。
THE MAD CAPSULE MARKETSしかり、DIR EN GREYしかり、Perfume・きゃりーぱみゅぱみゅさんしかり・・・それらの過去のアーティスト達から音楽性やコンセプトのヒントを得て、より先鋭化したプロジェクトこそが『BABYMETAL』です。そして今では、SU-METALさん・YUIMETALさん・MOAMETALさん3人の実力も伴ってきています。
私は以前、BABYMETAL についての記事を書いた際に「ニューメタル → メタルコアの次のシーンが "アイドル×メタル" になるなんてことはあり得ない」と書きました。
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スルーを決め込んでいた日本のメディアも注目せざるを得ないほどに巨大化してしまったベビメタ。その理由を独断と偏見で考察してみます。
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ですが、本作『METAL RESISTANCE』の異質さを目の当たりにしたことで「もしかすると、今目の前で起きようとしている突然変異は、"サブジャンル" レベルの突然変異では無いのではないか?」という気がしてきました。我々は、世界のロック/メタル史に名を残すかもしれないアーティストの成長を、現在進行形で目に焼き付け続けているのかもしれません。
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