以前、子どもの頃に影響を受けた邦楽について記事を書いたのですが、その続編です。
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候補が結構出てきたので、今回は男性編と女性編に分けて書きたいと思います。まずは女性編から。
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Feel Like dance
1995年11月1日にリリースされた、globeのデビューシングル。globeは好きな曲が多過ぎるので迷ったんですが、やっぱりこれでしょう。
公式MVのコメント欄でも言及されている方が多いですが、リアルタイムでテレビからこの曲が流れてきた時は「これってTRFの新曲?」と率直に感じたのを覚えています。KEIKOさんとYU-KIさんの声質やハイトーンなボーカルが似ているんですよね。
楽曲自体は小室さんお得意の軽快なシンセポップですが、微かにトランス成分が含まれていたりマーク・パンサーさんのラップパートがあったり・・・同じく小室さんが所属している『TM NETWORK』とは、やや趣が異なります。
本作リリース当時は、小室哲哉さんプロデュースのアーティスト(小室ファミリー)による寡占状態がピークに達していた時期でした。現在の邦楽シーンは、秋元系・ジャニーズ・LDH・K-POPの四つ巴といった様相ですが、イメージとしては上記4勢力の合計=小室ファミリーぐらいの規模だった気がします。そういった状況も手伝ってか、"曲は良いんだけど売れ過ぎて嫌われている" みたいな空気感は若干あったかもしれません。
この後、青春パンク・新世代フォーク・新世代R&B・ジャパニーズヒップホップ・モー娘。辺りのブームがほぼ同時に来て、急激に世代交代が行われたのを覚えています。日本のみならず、全世界的にダンスミュージックが主流となっている現在の音楽シーンからすると考えられませんが、当時は「やっと小室ファミリー1強の時代が終わったか・・・」なんて肯定的に捉えられていた印象です。
で逆に、今の10代に「90年代の邦楽最高!」みたいな方々が結構多いみたいですね。小室さんの楽曲が再評価されているのを見ていると不思議な感じですが「それに比べて今の邦楽は・・・」みたいな落胆がセットで付いてくるパターンが世代問わず多いです。
個人的には「いやいや、普通に今も良い曲たくさんあるから!」って思うのですが、確かにそう言いたくなる気持ちも分からなくはありません。私も当時の小室ファミリーブームの時に同じようなこと思ってましたから。でも、AKBとかも20年後ぐらいには再評価されていると思います(そんなもんです)。
Hello, Again 〜昔からある場所〜
https://youtu.be/PfYgH-j7u-c
1995年8月21日にリリースされた、MY LITTLE LOVERの 3rdシングルであり、日テレ系ドラマ『終らない夏』の主題歌。JUJUさんを始め、数多くのアーティストによりカバーされている人気曲です。
マイラバの魅力と言えば、まず "もう一人のTK" こと小林武史さんによる、胸を締め付けられるかのような切ないメロディラインの楽曲が挙げられます。マイラバの曲って基本、欧米圏のオルタナティブ・ミュージックっぽいアプローチのものが多いと思うんですけど、本作にはちょっとだけ日本的な叙情性が隠し味で含まれている気がします。Bメロの "誓ったまま" や、サビの "それは" の辺りでマイナーコード入れてくる辺りは、すごく日本っぽいです。1番のBメロ~サビにかけて惜しげもなく転調ブチ込んでくる感じとかも。
そしてやはり、ボーカル『akko』さんの声質ですね。共感いただけるかどうか分かりませんが、小松未歩さんや akkoさんのような "振り絞って声量の弱さをカバーする" みたいな感じの歌唱法がすごく好きなんです。ちなみに両者とも、ボーカルにオーバーダビング(重ね録り)を採用しています。
このオーバーダビングで収録されたボーカルが、小林さんのオルタナ系サウンドと絶妙にマッチしていて、当時まだ洋楽の知識が全く無かった自分にとっては中々の衝撃でした。
Best Collection ~Complete Best~
Hello, my friend
1994年7月27日にリリースされた、ユーミンこと松任谷由実さんの 25thシングル。フジテレビ系の月9ドラマ『君といた夏』の主題歌として聴いたのが初ですが、案の定ストーリーは全く覚えていません。
メジャーコードとマイナーコードが継ぎ目なく自然に融合したAメロ。そして、Aメロの空気感を引き継ぎつつも普遍的な構成に徹するサビ。これらが "アンニュイな雰囲気" として1つにまとめられ、統一感を感じる楽曲になっているのが印象的です。あと、この曲に限らずですが、ユーミンの年齢不詳かつ特徴的な声質も魅力の一つですね。
大昔から感じていることなのですが、ユーミンの楽曲がすごいのは "独特なコード進行やメロディラインを普遍的な曲としてカモフラージュしている" というところです。このスタンスは、おそらく影響元の一つと思われるエレクトリック・ライト・オーケストラやビートルズ辺りにも通ずる気がします。
実際、この曲もミリオンセラーを記録していますし、90年代邦楽の名曲の一つとして語り継がれています。そして、こんなマニアックな構成の楽曲を何の違和感も感じずに自然と受け入れている、日本のリスナーのセンスの良さですね。
別の記事でも書きましたが、日本の音楽の強みは "メインストリームで実験できる" ことであり、加えて "異質なものを普遍的なものとして受け入れられる、耳の肥えたリスナーが多い" 点にあると個人的には思っています。海外だと実験的な音楽は "実験音楽" 的なカテゴリーにしっかりと隔離されがちな印象ですし、「ポップスはポップスらしく」「ロックはロックらしく」みたいな感じで、結構ジャンル間の障壁が高めな印象なんですよね・・・
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飛躍し過ぎかもしれませんが、こういうのって日本人の "無宗教" 的な宗教観なんかも割と影響している気がします。『聖☆おにいさん』とか『女神転生』みたいな作品って、まず海外から出てきませんからね。
松任谷由実40周年記念ベストアルバム 日本の恋と、ユーミンと。 (通常盤)
雨のちスペシャル
https://youtu.be/cyx8qIgvhAs?t=5s
1997年11月21日リリース。國府田マリ子さんによる通算7枚目のシングルであり、一時期 NHK『みんなのうた』でも流れていました。
國府田マリ子さんのことを知ったキッカケは、文化放送の『Come on FUNKY Lips!』というラジオ番組です。ちなみに全曜日聴いてました(火→PENICILLIN、水→今田耕司&東野幸治、木→SOPHIA松岡充)。調べてみたら、國府田さんは1997年4月~1998年9月までの担当だったようで「思っていたよりも短かったんだな~」というのが率直な印象です。当時は中2だったので、年を取った今よりも時間を長く感じていたのかもしれません。
さて、國府田さんと言えばもちろん声優としての顔が圧倒的に有名なわけですが・・・そもそも私、アニメも声優も全くと言っていいほど詳しくありません。そもそも知ったキッカケが "月曜深夜に放送されているAMラジオのお姉さん" としてだったので、私の中では今だに女性歌手としての印象が強いです。
とは言え、そちら界隈に全く興味を持たなかったわけではなく、しばらくは『アニメージュ』を定期購読してみたり、椎名へきるさんなど他の声優についても勉強していた時期もありました。ですが結局、アニメ・漫画への熱量が高い同級生達に圧倒されてか、自然と興味を失っていった覚えがあります。もちろん、決してアニメや漫画が好きな方々に対して引いていたとか白い目で見ていたとかではなく、当時の心境としては「声優としての國府田さんに興味を持たずに、楽曲だけ聴くのって邪道かもなぁ」なんて感じでしたね。
その後、高校でビジュアル系にハマり、20代は海外のロックやメタルをひたすら聴き漁り・・・といった感じで、声優の楽曲が好きだった過去を半ば黒歴史扱いしていました。
その認識が変わったのは、30代になってからです。要はうるさい音楽を聴き過ぎたというか、その他もろもろの洋楽自体を聴くのが退屈になってきたんですね。でもって、自然と日本の音楽をジャンル問わず聴くようになって、その流れで「そう言えば昔、こんな曲よく聴いてたな~」と思い出し、まさに今この記事を書いています。
で、これまた不思議な巡り合わせなんですが・・・実はこの曲、今は亡き松原みきさんが作曲を担当しているんです。
https://youtu.be/k-KAY_Glmn4
最近流行っているので知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、松原みきさんはシティ・ポップ最重要アーティストの一人として知られています。調べてみたところ、90年代からは作曲家として多数のアニメソングを手がけており、國府田さんの楽曲を担当したのもその流れだったということですね。
パッと見はいかにも「みんなのうた!」って感じですが、確かによくよく聴いてみると松原さんっぽいメロディラインだし、ベースが主張してくる辺りが完全にシティ・ポップ。ちょっとテンポアップしたらセルフカバーできそうな雰囲気は感じます。
春の手紙
1993年2月3日リリース。大貫妙子さんによる通算22枚目のシングルです。
インド政府公認ヨガインストラクターこと片岡鶴太郎さんが主演を務めていた TBS系ドラマ『家栽の人』の主題歌としても知られています。ドラマの内容については正直ほとんど覚えていませんが、タイトル通り "家庭裁判所で少年と向き合う裁判官の物語" といったシリアスなものでした。この手のドラマを親が好んで観ていたので、つられて私も一緒に観ていた感じでしょうか。
さて、大貫妙子さんと言えばシティ・ポップ(和製AOR)の大御所であり、山下達郎さんらと伝説的なバンド『シュガー・ベイブ』を組んでいたことでも有名です。同ジャンルの竹内まりやさん・松任谷由実さん・山下達郎さんなどに比べると知名度は若干落ちますが、つい最近『YOUは何しに日本へ?』で取り上げられたことにより、今まで大貫さんを知らなかった層を新たに開拓しているようです。
リアルタイムで聴いていた当時の私はシティ・ポップなんて言葉は当然知りませんし、ただただ単純に「何て良いメロディなんだ・・・」と感動していました。基本的にシティ・ポップはどのアーティストも好きなんですが、大貫さんはちょっと別格ですね。
まず、声が良い。幻想的な曲にも、フレンチ・ポップのような軽快な曲にも合うし、聴けば一発で本人だと分かる。替えの利かない声質だと思います。
そしてやはり、曲が唯一無二。1番と2番の Bメロでメロディラインをガラッと変えているのですが、2番Bメロの高揚感を出すために1番Bメロをあえて抑えめにしているのがグッときます(家栽の人で使用されているのも2番パート)。タイアップ曲だからキャッチーさに全振り・・・ではなく、フルで聴いた時の楽曲展開をものすごく大切にしているのが印象的です。
あとがき
記憶を辿ってみたら、10代の時点で知らず知らずのうちにオルタナやシティ・ポップから多大な影響を受けていたということが分かりました。邦楽恐るべし。
ちなみに、國府田マリ子さんの箇所だけ商品リンクをベストアルバムではなく当時収録されていたアルバムにしています。これ、当時定価で購入した思い出のアルバムなんですが、今回ご紹介した『雨のちスペシャル』以外にも『笑顔で愛してる』『愛と勇気の健忘症』『悲しみの白い鳥』『風がとまらない』など名曲揃いの作品だったりするんですね。そしてなぜか、亀田誠治さん・井上うにさん・西川進さんなどといった、椎名林檎さん周辺のミュージシャンがアレンジや作曲を担当しているという豪華っぷり。
声優系シンガー特有のややクセのある歌唱法なので好みは分かれるかもしれませんが、個人的には隠れた良盤だと思っています。前述した楽曲以外も粒ぞろいなので、もし興味があればアルバム全編通して聴いてみてください。
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