HAGANEYA(@imech_jp)です。
1977年リリース。"初期Judas Priestの2枚看板" に挟まれているせいか、ちょっとだけ影の薄い印象がある作品です。
本作『Sin After Sin(邦題:背信の門)』は、ヘヴィメタル要素が大幅に増量されることになる次作『Stained Class』と、英国的な憂いを帯びた前作『Sad Wings of Destiny(邦題:運命の翼)』の要素を併せ持っています。ただし、単純に両者を足して2で割った作風というわけではなく、さらに "後年のどの作品にも似ていない" 独特な存在感を放っているのが特徴です。
具体的に本作の特徴を挙げると "コンパクト" "軽快" "ムーディー" みたいな感じでしょうか。前作のプログレッシブ・ロック的な仰々しい世界観とは異なり、コンパクトな印象を受けます。曲単体で見るとむしろ本作のほうが長尺のものが多いのですが、不思議とそれを感じさせない構成です。
ドラムについては、後に『TOTO』の二代目ドラマーとなる Simon Phillips さんが(本作のみ)サポート参加しています。本作 "だけ" が独自の雰囲気を醸し出しているのは、おそらく彼のプレイによるものではないでしょうか。小回りの利いた軽快なドラミングからは、彼のルーツでもあるジャズ界隈の匂いを感じます。
メタル・バンド『Judas Priest』のひな形を確立した "非メタル" 作品
6分半以上という長尺にも関わらず一気に最後まで聴かせてしまうスピード・チューン #1『Sinner』、Joan Baezによるアコースティックな原曲を渋めのハードロックにアレンジした #2『Diamonds and Rust』、マイナー・コード寄りの序盤&終盤と中盤で挿入されるメジャー・コードのパートとのギャップが耳に残る #3『Starbreaker』、温かみを感じるギターサウンドが心地良いAORライクなバラード曲 #4『Last Rose of Summer』、壮大なイントロ・合間に入る疾走ツーバス・二部構成…とギミック豊富な長尺曲 #5『Let us Prey/Call for the Priest』、グルーヴ感を重視したミドル・チューン〜中盤のインスト・パート〜疾走する終盤パート…と前曲同様プログレッシブな展開を見せる #6『Raw Deal』、三連符を採用したムーディーなバラード曲 #7『Here Come the Tears』、70年代の作品とは思えぬ複雑かつ重厚な演奏技術に驚愕する三連符のミドル・チューン #8『Dissident Aggressor』。
どこを切っても "Judas Priestの作品" と言えるサウンドなんだけど、ヘヴィメタル化した後年の彼らにはない "軽さ" があるため、後追いで聴いた私みたいなタイプにとっては不思議な感覚に襲われます。
ちなみに私の言う "軽さ" というのは、昔の作品ゆえの軽さではなく "フットワークの軽さ" といったニュアンスです。
個人的に、本作は "メタル・バンド『Judas Priest』のひな形" を確立した最初の作品であると同時に "メタルではない" 作品といった印象を持っています。基本フォーマットは本作の時点で既に完成されていて、後年の作品で "肉付け" されていったイメージです。
70年代の作品とは思えぬ "オーパーツ" 的な輝き
伝説的なバンドの作品には「この時代にこの音楽性を?」と驚かさせられる作品が少なくありません(それだけ、ロック音楽が "既にやり尽くされてしまった" ジャンルとも言えますが)。
とりわけ、本作は Judas Priest のディスコグラフィの中でも "オーパーツ" 的な輝きを放っている作品です。後に多くの方々に知られることとなるバンドの個性は、この時点で既に確立されています。メタル・ゴッドとしての "覚醒" はもうちょい先の話になりますが、本作も紛うことなき Judas節の作品だと言えるでしょう。
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