HAGANEYA(@imech_jp)です。

1986年リリース。前作『Hell Awaits』から1年ぶりとなる通算3作目のフルアルバムであり、Def Jam Recordings 移籍後初となる作品です。プロデュースは、同レーベル創設者の1人でもある Rick Rubin さんが担当。

ヒップホップ界隈からキャリアをスタートしたイメージが強い Rubin さんですが、プロデューサー以前にも『Hose』というアート・パンク・バンドのギタリストとして活動していました。1982年リリースのシングル『Mobo』に収録されている20秒程度のハードコア曲 “Girls” を聴くと、なぜヒップホップ畑の彼が本作のプロデュースを承ったか、ひいては Slayer というバンドに興味を抱いたのかが何となく見えてきます。

Metal Blade Records 創設者であり、前作までのプロデューサーを務めた Brian Slagel さんの「このバンドをもっとビッグにしたい」という想いと Rubin さんからのラブコールが重なり Def Jam Records へと移籍した彼ら。メタル系レーベルからヒップホップ系レーベルへの移籍ということでメンバー自身も当時不安に感じていたようですが、肝心の作品は前作を踏襲しつつも “アングラ感” だけが上手い具合に薄まり、攻撃性・テクニックが共に向上しています。

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短い楽曲に色々な要素を詰め込みつつ “過剰なアピールはしない” 潔さ

  1. Angel of Death
  2. Piece by Piece
  3. Necrophobic
  4. Altar of Sacrifice
  5. Jesus Saves
  6. Criminally Insane
  7. Reborn
  8. Epidemic
  9. Postmortem
  10. Raining Blood

どの楽曲も、基本装備として “速さ” を楽曲内の一部に組み込んでいる点は前作と同様です。ただし、前作を凌駕する “29分” という短い時間に収められた10曲は、#1 と#10 を除き全てが2〜3分程度で終わってしまいます。

その理由として、Jeff Hanneman さん(Gt.) は「Metallica や Megadeth みたいな “似たようなギターリフの繰り返し” は避けたかった」、Kerry King さん(Gt.) は「1時間のレコードがトレンドだけど、激しいレコードを作る上ではムダが多い。ムダな曲をカットすれば、もっと激しいレコードを作ることが出来る」という旨の発言をしています(私が勝手に意訳した文章なので微妙に異なるかもしれませんが、ニュアンスとしては大体合っているはずです)。

上記の発言は、まさに “有言実行” と言っても過言ではありません。インターバル的な楽曲・冗長な大作曲などでお茶を濁さず、代わりに “短い楽曲をいかにダレずに聴かせるか?” という点が練りに練られているのです。

#2『Piece by Piece』#3『Necrophobic』#4『Altar of Sacrifice』#7『Reborn』#8『Epidemic』辺りは、イントロで “味を変える” ことによって「速い曲ばっかり聴きたいけど、似たようなのばっかりだと飽きる」というリスナーのワガママな欲求を見事に解消しています。

#5『Jesus Saves』#6『Criminally Insane』#9『Postmortem』も前述の楽曲群と骨格的には似ていますが、前半30秒〜1分をミディアムテンポにすることで他曲との差別化に上手く成功している印象です(Iron Maiden や Megadeth 辺りがよく使う手法)。

そして、#1『Angel of Death』#10『Raining Blood』では、意図的に楽曲構成を複雑かつ長尺にすることで “プレミアム感” を演出。2曲とも、前作における “Hell Awaits” “At Dawn They Sleep” “Crypts of Eternity” 辺りに相当する楽曲ですが、前作に比べると音の分離が良くなっており、体感的な攻撃力が上がったことによって “爽快感” が向上しています。

 

何度も何度も聴いている内に “違い” が見えてくる、職人肌なメタル作品

第一印象で「ただ速いだけのアルバムでしょ?」なんて思っていた方も、繰り返し聴いている内に “違い” に気付き始めるという、ある意味スルメな作品です。

Kerry King さんの「他のバンドの2回分楽しめるじゃん」的な発想が反映された “バンド史上最も短い” フルアルバム” は彼らの最高傑作として多くのエクストリーム・メタラーに愛されており、ニューメタル・メタルコア・デスメタル・ブラックメタル・メロデスなどといったヘヴィ・ミュージックを志すバンド全般の “ネタ元” の一つとして、今も光り輝いています。

余談ですが、個人的には(音質の悪さも含め)ブラックメタル色強めな前作のアングラ感が好みです。ただ、リリースまでの背景を見る限り、本作はそもそもそういった方向を目指しておらず “メジャー感を高める” ことに重きが置かれているため、これはこれで全然アリだと思います。

前作~本作で速さに特化した楽曲を出しまくった反動か、次作『South of Heaven』では(Slayer にしては)メロディアスな歌声やミディアムテンポの楽曲が登場。本作とはやや趣の異なる作品ですが、わかりやすくメリハリが強調された楽曲構成は取っ付きやすく、入門作としても最適です。

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