HAGANEYA(@imech_jp)です。

1995年リリース。前作『Sound of White Noise』から2年ぶりとなる通算7作目のフルアルバムであり、脱退した Dan Spitz さんの後任として Meat Loaf での活動も有名な Paul Crook さん(Gt.) がゲスト参加しています。

プロデュースは、Dog Eat Dog・Urge Overkill・Cibo Matto などオルタナティヴ界隈のバンドとの仕事が多い Butcher Bros. という製作チームが担当。

Storm Thorgerson さんによる “塊魂” みたいなアートワークに加え、左下にひっそりと刻印された “非メタル系のバンドロゴ” がとても印象的です。Pink Froyd・Dream Theater・The Mars Volta などプログレ系のイメージが強いデザイナーの方ですが、本作にプログレ要素はありません。割と幅広いジャンルのアーティストを手掛けており、本作もその中の一つといった感じです。

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90年代オルタナティヴ・ミュージックの雛形+ハードロック

  1. Random Acts of Senseless Violence
  2. Fueled
  3. King Size
  4. Riding Shotgun
  5. Perpetual Motion
  6. In a Zone
  7. Nothing
  8. American Pompeii
  9. Drop the Ball
  10. Tester
  11. Bare

前作(6th)で大幅なスタイルチェンジを遂げた Anthrax ですが、じっくり聴いてみると実は 3rd 〜 5th 辺りの面影を残す楽曲がちらほらと存在していました。そういった “スラッシュ期の名残” が目立ちにくいのは、紛れもなく John Bush さんにボーカルが交代したことが理由であり、”バンドの顔役” が変わることによる影響力がいかに大きいのかを痛感させられます。

上記理由から考えると、5th『Persistence of Time』よりもむしろ “前作” こそが過渡期の作品であり、本作でようやく新生 Anthrax サウンドの方向性が固まったと言っても良いのではないでしょうか。

#1『Random Acts of Senseless Violence』#4『Riding Shotgun』#5『Perpetual Motion』#9『Drop the Ball』#10『Tester』などの楽曲に顕著な “跳ねるリズム+やや乾いたメロディライン” は、この手の音楽の草分けである Helmet 辺りからの影響を強く感じます。日本ではあまり有名ではありませんが、Helmet は90年代ニューメタル・バンドの主なパクリ元・・・というか “フォーマットを作った” バンドの一つなので、当時の Anthrax も(直接的にせよ間接的にせよ)何かしらの影響は受けているはずです。

また、White Zombie 系のダンサブル・ナンバー #6『In a Zone』や、Stabbing Westward の同名タイトル曲と作風もうっすら似ている #7『Nothing』など、インダストリアル・メタル界隈のバンドからヒントを得たと思われる楽曲もあったりと、わかりやすく “90年代オルタナティヴ・ミュージック” の雛形をなぞっています。

なお、#2『Fueled』#3『King Size』#5『Perpetual Motion』などの疾走曲については、ヘヴィメタルの質感というよりは Motörhead・The Hellacopters・Entombed といったハードロック系のバンドに近いアプローチです。同じスピード・チューンでも、正統派メタル〜スラッシュメタルの系譜の延長線上にあった前作の楽曲とはまるっきり雰囲気が異なります。

そして、元スラッシュメタル・バンドとしては明確に “異色” と言えるバラード曲 #11『Bare』の妙な清涼感。さすがにここまで来ると「あ・・・これはもう別バンドだな」と腑に落ち、“Belladonna期に別れを告げなくてはいけない寂しさ” と “新生Anthraxへの新鮮味” といった相反する感情が同時に襲ってくるわけです。

 

没個性的だけどスタイリッシュな “新生” Anthrax

何というか・・・やはり “前作以上に没個性的” であることは否定出来ないし「スラッシュ時代を偏執的に愛するファンからは絶対に受け入れられないサウンドなんだろうな」と率直に感じました。

結局のところ、本作を先入観無しで受け入れるためには “Anthraxという名前の別バンド” だと思うのが一番手っ取り早いのでしょう。下手に共通点を探そうとしても、前作のような面影を本作に見出すのは少々厳しいのかもしれません。

無論、当記事で言及した欠点はあくまでも “スラッシュ期・Belladonna期” を基準にしたものであり、本作から Anthrax に入った方にとっては “高品質なオルタナティヴ・ロック作品” であるということを付け加えておきます(余談ですが、私はオルタナ経由でメタルを聴き始めたクチなので、本作みたいなサウンドは基本的に大好物です)。

なお、本作の路線が気に入ったのであれば、次作『Volume 8: The Threat Is Real』もイケるはずです。本作以上にメロディアスになっているので、すんなり受け入れられるかと思います。

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