HAGANEYA(@imech_jp)です。

1997年リリース。前作『Youthanasia』から3年ぶりとなる通算7作目のフルアルバムであり、アメリカで100万枚・カナダで5万枚のセールスを記録した作品です。なお “ヒザの故障” が理由で、本作を最後に Nick Menza さんが脱退しています。

プロデュースは、Michael Jackson さん・Whitesnake・George Benson さん他多数アーティストのセッション・ギタリストを務め、1990年代以降は Faith Hill さん・Rascal Flatts・Lonestar などのプロデューサーを歴任した Dann Huff さんが担当。

後者の3組がいずれもカントリー・ミュージック畑の方々であることと、Giant というメロディアス・ハードロック系バンドに在籍していた Dann さん自身の出自も影響してか、本作は Megadeth 史上最も “歌心” のある作品となっています。

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非メタル系の楽曲に合わせて調整された、落ち着きのあるサウンド・プロダクション

  1. Trust
  2. Almost Honest
  3. Use the Man
  4. Mastermind
  5. The Disintegrators
  6. I’ll Get Even
  7. Sin
  8. A Secret Place
  9. Have Cool, Will Travel
  10. She-Wolf
  11. Vortex
  12. FFF

本作は私が初めて購入した Megadeth のアルバムになるのですが、第一印象は「ブラック・アルバム期の Metallica みたいだなぁ・・・」「ボーカルの人、何だか歌い辛そう」といったものでした。

今にして思うと超薄っぺらい感想ですが、これは単純に “当時の私がブラック・アルバム以外の Metallica をマトモに聴いたことが無かった” のが理由です。ついでに言うと、メタルについての予備知識も一切ありませんでした。

で、本作を聴いたことがある方は大体おわかりかと思いますが、上記第一印象の大半は #1『Trust』#2『Almost Honest』#7『Sin』などの楽曲によるものです。言い訳がましいかもしれませんが、ライナーノーツに何かと Metallica を意識したような表現が多くみられたのも、本作への先入観を固める要因の一つとなっていた気がします。

しかしながら、#4『Mastermind』#9『Have Cool, Will Travel』などの Megadeth 度高めなリフ・メロディを持つ楽曲には、やはり引っ掛かるものを感じたというか「爬虫類系のボーカルによく合うメロディラインだな」と興味深く聴いていたのを覚えています。

カーラジオ風 SE から始まる #3『Use the Man』や、AOR な渋い雰囲気がプンプン漂う #6『I’ll Get Even』などは、Dann さんプロデュースによる恩恵を最も受けたと思われる味わい深い2曲です。本作のやや乾いたサウンド・プロダクションは、この2曲のための調整と言っても過言ではないでしょう。

あと、どことなく “桃色吐息 (高橋真梨子)” を彷彿とさせるメロディラインの #8『A Secret Place』や、#1 の3分13秒辺りからのイエテボリ風アコースティック・ギターソロは・・・Marty さんが持ち込んだ要素でしょうか?この、米国産メタル・バンドとは思えない “歌謡曲” 臭は、90年代 Megadeth の大きな武器の一つだと思います。

 

ワゴンに埋もれがちな原因1:スピード・メタラーの “偏食” を助長するような楽曲構成

さて、本作を語る上で外せないのが “疾走曲の多さ” です。

初期 Megadeth を思わせるスラッシュ曲 #5『The Disintegrators』、The Trooper (Piece of Mind) な終盤ギターリフの畳み掛けが鳥肌モノの Iron Maiden リスペクト曲 #10『She-Wolf』、Tornado of Souls 〜 Skin o’ My Teeth の系譜に連なる #11『Vortex』、どこからどう聴いても Motorbreath (Kill ‘Em All) な #12『FFF』など、本作にはスピード・チューンが4曲も入っています。

このスピード・チューンの多さは『Countdown to Extinction(邦題:破滅へのカウントダウン)』以降の90年代 Megadeth では突出しているのですが、見ての通り “4曲中3曲がアルバム終盤に追いやられている” ため、アルバムを序盤の数曲だけ聴いて判断するタイプのリスナーには “一生届かない” のです。これは、本作唯一の致命的な欠点だと言えます。

ポジティブに解釈するのであれば「スピード・チューンに興味が無いリスナーは前半〜中盤をゴッソリ飛ばして聴ける」とも言えるのですが・・・それって何だか “邪道” な聴き方だと思うわけです。そういう聴き方がしたければ自分で並べ変えれば良いだけの話ですし、変にスラッシュ時代のファンを意識しているように(私には)見えました。

ですので、超個人的な意見を述べるなら「もうちょい散らしてほしかった」←この一言に尽きます。この、スピード・メタラーの “偏食” を助長するような楽曲構成には若干違和感を感じました。

 

ワゴンに埋もれがちな原因2:Hugh Syme らしからぬ “超地味” なアートワーク

本作は、Queensryche『Promised Land(邦題:約束の地 〜プロミスト・ランド〜)』と双璧を成す “ワゴンに埋もれがちな名盤” です。これはおそらく、Hugh Syme さんらしからぬ “地味過ぎるアートワーク” に原因がある気がします(彼は、Promised〜 のアートワークも担当)。

4th『Rust in Peace』辺りを最後に見限ったリスナーも結構いらっしゃるかと思いますが、私にとっては本作が Megadeth の最高傑作です。最初の1枚であるがゆえの思い入れも多少入っているかもしれませんが、”純粋に曲が良いと思える作品” という点において、本作は群を抜いています。

なお、本作のポップな面をより強調しつつインダストリアル要素を導入した次作『Risk』はスピード・チューンが大幅に削られており「Cryptic〜 は許せるけど、Risk はちょっと・・・」といった意見の方も見かけますが、本作のメロディライン自体が好みなのであれば “全然アリ” な作風です。

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