HAGANEYA(@imech_jp)です。

2008年リリース。前作『St. Anger』から5年ぶりとなる通算9作目のフルアルバムであり、米国で200万枚・日本で10万枚・欧州全体で約100万枚のセールスを記録した作品です。

プロデュースは、5th『Metallica(通称:ブラック・アルバム)』以来歩みを共にしてきた Bob Rock さんから、Slayer・System of a Down・Danzig・Red Hot Chili Peppers・Linkin Park 他多数のアーティストを手掛ける Rick Rubin さんへとバトンタッチしています。

Rick さんと言えば、元々 Run-D.M.C. や Public Enemy との仕事で名を上げたヒップホップ畑の方ですが、スパルタ系とは真逆の “見守る” タイプのプロデューサーとして有名です。「これぞ Rick Rubin!」と言えるほどの圧倒的な特徴があるわけではない反面、ヒップホップ・ロック/メタルのみならず、ポップスなど他ジャンルのアーティスト作品をも難なく完成へと導いてしまうその手腕は、本作の仕上がりにも影響を与えているように思います。

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『…And Justice~』期まで戻したスラッシュ要素と共存する “同時代性”

  1. That Was Just Your Life
  2. The End of the Line
  3. Broken, Beat & Scarred
  4. The Day That Never Comes
  5. All Nightmare Long
  6. Cyanide
  7. The Unforgiven III
  8. The Judas Kiss
  9. Suicide & Redemption
  10. My Apocalypse

本作をザックリ聴いて真っ先に気付くのが「スネア・ドラムの音が改善された」ということです。前作はジャンル云々の前に “音質” がネックで、繰り返し聴く気力を奪われてしまいがちでした。とりあえず、変な奇のてらい方をしなくなったのは非常に大きいです。

そして、音楽性がスラッシュメタル期へと急激に戻っています。前作にもその手の楽曲はいくつか存在していましたが、作品全体としてはニューメタル・バンドからの影響を感じさせるテンポやアレンジのものが多かったですし・・・全盛期の Metallica を愛する方々にとっては嬉しい変化ではないでしょうか。

ただし、Cliff Burton さんが楽曲制作に関わっていた 2nd『Ride the Lightning』〜 3rd『Master of Puppets(邦題:メタル・マスター)』に顕著だったクラシカルな要素は無いため、受ける印象としては 4th『…And Justice for All(邦題:メタル・ジャスティス)』が最も近いかもしれません。実際 Kirk Hammett さん(Gt.) も「4thの延長線上の作品である」という旨の発言をしていますし、実際 “棺桶×砂鉄”のアートワークは、モノクロームを基調とした同作品を彷彿とさせるものだったりします。

とは言え、おどろおどろしいイントロから一気にフルスロットル状態へと持ち込む #1『That Was Just Your Life』の構成は露骨に Battey を意識したものであり、2nd〜3rd の要素が全く無いというわけでもありません。また、#10『My Apocalypse』のアプローチはどことなく Whiplash を彷彿とさせますし、1st『Kill ‘Em All(旧邦題:血染めの鉄槌)』のハードコアな質感も入っているように感じます。

・・・と、自身の作風をなぞるだけかと思いきや #2『The End of the Line』や #3『Broken, Beat & Scarred』では Slipknot にも通ずるフットワークの軽さを見せていたり、#5『All Nightmare Long』では System of a Down みたいな複雑怪奇なリフに挑戦していたりと、単なるニューメタルとも違う “現代的なメタル・サウンド” を模索しているのが窺えました。本来の意味と “メタルゴッド” とのダブルミーニング的な雰囲気を感じる NWOBHM 系スピード・チューン #8『The Judas Kiss』もなかなか悪くないです。

そして、スピード・チューンが大半を占めつつ #4『The Day That Never Comes』#7『The Unforgiven III』など前作では見られなかったバラード系の楽曲もきちんと復活しているし、全盛期に倣った曲順も申し分なし。ここまで至れり尽くせりにも関わらず酷評する一部の痛いリスナーも存在するみたいですが、本当に “ファン目線” で作られた作品だと個人的には思います。

 

リバーブを抑えることによって実現した “スラッシュ期とグルーヴ期の総括”

表向きは “スラッシュメタル期のMetallicaが完全復活した作品” であり “セルフ・パロディ” ですが、注意深く聴いてみると St. Anger やそれ以前の “グルーヴ・メタル期” の作品の影がチラつくことに気付くはずです。

このことからも “グルーヴ・メタル時代は決して無駄ではなかった” ことがわかります。それでも頑なに「いや、誰が何と言おうと暗黒期だ」と仰る方々がいらっしゃるのもわかりますが、少なくともメンバーにとっては無駄ではなかったのは間違いないでしょう。じゃなきゃ、”The Unforgiven III” なんていうタイトルの楽曲を収録しようとは思いませんからね。

なお、基本的に “賛” の評価が多い本作ですが、一部のファンからは「Cliff Burton在籍時のクラシカルなメロディが欠けているからダメ」だとか「楽曲が印象に残らない」といった意見もあるようです。

こういった意見に関して、私は「そうかな?」と疑問を抱きました。Cliff 期のサウンドを他人が無理やり再現しようとしたって中途半端になるだけでしょうし、楽曲は全然 “印象に残る” し。個人的には、一番好きな 4th『…And Justice~』と並ぶぐらい好きな作品ですし・・・何なら、スカスカなベースの 4th よりも本作を聴く頻度のほうが高かったりします。

さらに付け加えるならば、サウンド・プロダクション的に一番好みです。狙ってこうなったかどうかはわかりませんが、Shadows Fall の『The Art of Balance』にも通ずる “リバーブを極限まで抑えた” 質感は絶妙ですし、このサウンドだったからこそ、各楽曲の一部に微かに残るグルーヴ・メタル的なアプローチが上手く馴染んだとも言えるのではないでしょうか。

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