HAGANEYA(@imech_jp)です。

2011年リリース。前作『Black Clouds & Silver Linings』を最後に脱退してしまった Mike Portnoy さんの後任として、新ドラマーオーディションを勝ち抜いた Mike Mangini さんが本作から正式メンバーとして収録に参加しています。

ただし、Mangini さんは本作の作詞作曲には参加しておらず、あくまでも “出来上がった楽曲の再現” にとどまっているようです(次作『Dream Theater』から参加します)。

そのため、楽曲の質感的には微かに “前作までの名残り” が感じられます。その一方で、素人の耳にもわかるほど “明らかに引っ込んだ” ドラム・パートにより、相対的に他パート(ギター・ベース・キーボード・ボーカル)のメロディラインが浮き上がってきたのも事実です。

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諸々の要素が重なりあった結果、Images~ 期を思わせる “幻想的な雰囲気” が復活

Pull Me Under を異なる絵筆で描き直したかのような #1『On the Back of Angels』、インダストリアル系ニューメタルにシンフォニックなシンセ・アレンジを加えた感じの #2『Build Me Up, Break Me Down』、仰々しい冒頭パートを経てメジャーコードとマイナーコードが交互に訪れるテクニカル・パートが印象的な #3『Lost Not Forgotten』、The Answer Lies Within と Another Day を掛け合わせた感じの幻想的なバラード曲 #4『This is the Life』、ホーミーから始まる荘厳なイントロを経て Lamb of God 系のヘヴィな三連符リフに身構えつつも超メロディアスなサビ&Cメロのギャップで心を奪われ【7分14秒】辺りからの Symphony X 系インスト・パートで山場が再び訪れる #5『Bridges in the Sky』、シンフォニック・ゴシックメタルな前半パートを経て【4分53秒】辺りからの “冷静なドラム・ワーク” の上でギター・ベース・キーボードが暴れまくる様子が Portnoy期には無い新鮮味を演出している #6『Outcry』、This is the Life と同様の質感を持つピアノ・オリエンテッドなバラード曲 #7『Far from Heaven』、Learning to Live のキーボードをギターに置き換えたかのようなイントロを経て【5分2秒】辺りからの幻想的なオカリナの音色【7分10秒】辺りからの Pink Floyd を思わせる退廃的なメロディ…とテクニックだけに依存しない70’sプログレの “味” が再現されている #8『Breaking All Illusions』、本作3度目のバラード曲にも関わらず LaBrie さんの透明感溢れる歌声によって全く鬱陶しさを感じない #9『Beneath the Surface』。

巷では「歴史的名盤である 2nd『Images and Words』の再来を感じさせる」という声もありますが、個人的には “8th『Octavarium』辺りのセンスを経由して Images~ 期の質感を再現” したような雰囲気を感じました。

John Petrucci さんと共にバンドのイニシアチブを握っていた Portnoy さんが抜けたことにより、近作の “行き過ぎたオマージュ” や “ニューメタル” 感が薄れ、さらに冒頭で書いた通り “ドラムが適切な位置まで引っ込んだ” ことで、結果的に初期作を思わせるサウンド・プロダクションやアプローチへと回帰しているのは間違いなく、そういった部分に Images〜 っぽさを感じる方がいらっしゃる、ということなのかもしれません。

あと、”Learning to Live” を意識したと思われる名曲 #8『Breaking All Illusions』の存在も大きいですね。ともあれ、この時代にこのノスタルジックな作風は、Portnoy さんがいたらおそらく実現していなかったはずです。

また、本作は彼らにしては珍しく “自己マン” 感の強いテクニカル・パートがそこまで悪目立ちしていない印象です。丁度良く配置された3曲のバラード曲によってバランスが保たれているのが理由でしょうか。

・・・と、このように書くと一見何も問題が無いように思えますが、本作を聴いているとどうにも釈然としない思いが残ります。

その大きな理由が “アルバム前半のメロディが印象に残らない” というもの。楽曲単体・フレーズ単体を切り取っていくとそうでもないのですが、通して聴いた際の “前半の存在感” があまりにも弱いのです。このことに関して言えば “Kevin時代が…” とか “Derek時代が…” とかそういう話ではなく、彼らの全ディスコグラフィを振り返った上で “異色” だと感じます。

これを “中盤~終盤を盛り上げるための演出” と捉えるか “ソングライティング力の低下” と捉えるかは人それぞれだと思いますが、次作で “The Looking Glass” のような名曲が誕生していることを考えると、私としては “前者” が理由ではないかと思っています。

 

ややスロースターター気味だけど、最後まで聴くと印象が変わる

本作を聴いていて率直に感じるのは「Portnoy さんの脱退によって “アク” だけを取り除いたかと思いきや、”旨味” もちょっとだけ持って行かれた」作品、という印象です。

確かにプログレッシブ・ロック的な空気感は大幅に増量されているのですが、Portnoy さんが持っていたプログレとはまた別の “何か” をちょっとだけ持って行かれたような気がします。本当に “ちょっとだけ” です。

とは言え、これは Kevin Moore さんや Derek Sherinian さん脱退後にも見られた傾向であり、Mangini さんと既存メンバーとの足並みが揃ってくることによって解決していくと思います。

実験作・・・とまでは行きませんが、立ち位置としては 6th『Six Degrees of Inner Turbulence』と同様の “模索” 感を感じました。唯一の違いは、向こうが “自身の未来” を見据えているのに対し、こちらは “自身の過去” を見つめ直している、といった感じでしょうか。

ややスロースターター気味なのが若干気になりますが、中盤以降は印象的なメロディやリフも飛び出してくるので、ぜひ冒頭の数曲だけ聴いて投げ出さず最後まで聴いてみてください(ちょっとだけ “スルメ” です)。

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