HAGANEYA(@imech_jp)です。

2009年リリース。前作『Systematic Chaos』から2年ぶりとなる通算10作目のフルアルバムであり、ドラムの Mike Portnoy さんが本作を最後にバンドを脱退しています。

Portnoy さんと言えば、6th『Six Degrees of Inner Turbulence』収録曲の “The Glass Prison” に端を発する 『Twelve-step Suite(別名:アル中シリーズ)』の主導者となるわけですが、本作収録曲 “The Shattered Fortress” を以ってシリーズ完結を迎えたこともあり、バンドをしばらく休みたかったようです。

結果的には、今まで通りコンスタントに新作を発表し続けたい他メンバーとの方向性の違いにより “脱退” という形になってしまいました。Portnoy さんのドラミングが好きな私としては当時残念に思っていたのですが、彼が脱退した後の作品群から感じる “開放感” のあまりの強さに「意外と “辞めて正解” だったのかもしれない」と考えを改めることになります。

さて、”暗雲と希望の兆し” と名付けられたタイトルの通り、本作は00年代の Dream Theater が生み出してきたヘヴィな作品群を総括すると同時に、次のステージへと向かうための “準備作” としての顔も持つ作品です。

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【闇】→【光】への流れが鮮明なイメージとして浮かぶ “映画” みたいな作品

Pantera の Walk(Vulger Display of Power) を思わせるイントロからお馴染みの Metallica オマージュな前半を経て【4分56秒】辺りからのポストロック的な清涼感に癒されるも【11分19秒】辺りからのジャイアンリサイタルでズッコケるという “三段オチ” を実現した #1『A Nightmare to Remember』、基本的にはメロディアスなサビを配したグルーヴ・メタルでありつつも【5分47秒】辺りで Metropolis Pt.1 っぽいギター・フレーズ(7分9秒辺りのアレ)が一瞬顔を覗かせる #2『A Rite of Passage』、 I Walk Beside You (Octavarium) から U2 的な要素だけを上手く取り除いたパワー・バラード #3『Wither』。

The Dying Soul 的なイントロを経て【3分2秒】辺りから The Glass Prison のメロディが出現【6分54秒】辺りから今度は The Dying Soul のサビが飛び出し【8分50秒】辺りから The Root of All Evil のメロディ…とシリーズ集大成的な構成を持つ “X. Restraint“、”XI. Receive“、”XII. Responsible” の3曲からなる #4『The Shattered Fortress』。

Final Fantasy っぽいイントロから【1分36】辺りからのマイナー調のアコースティックな前半パートを経て【2分45秒】辺りから Rush にも通ずる壮大なプログレ・サウンドが一気に降りかかり【3分53秒】からの(同年に亡くなった) Portnoy さんの父親に対する思いを込めた歌詞も感動的な #5『The Best of Times』、Images and Words を彷彿とさせる冒頭部分を経て【3分55秒】辺りからの清涼感溢れるスピード・チューン【10分16秒】辺りからの冒頭曲を思わせる不穏なパートを一瞬挟むも【10分46秒】辺りからのアンビエントなヒーリング・サウンドに癒され【14分17秒】からのアコースティック・ギターやストリングス・サウンドによって “暗雲の消えた大空” が情景として浮かんでくる #6『The Count of Tuscany』。

#1 のヘヴィなイントロを聴いて即座に「Train of Thought の再来だ」と思われた方は、おそらく多いはずです。続く #2 も骨組み的には同アルバムからの流れを想起させます。ところが、ヘヴィなアプローチは(両曲とも)楽曲前半部分に集中しており、楽曲中盤辺りからの有機的なメロディからは重苦しさを感じません。

“Twelve-step Suite” シリーズ最終曲でもある #4 終了後の #5 や #6 の作風に至っては、もはや重苦しい雰囲気は一切無く、まるで「5作品に渡る長く苦しい旅路がようやく終わりを告げた」ことへの喜びを感じさせるテンションに満ち溢れているかのような楽曲展開です。

このことは、3rd『Awake』を彷彿とさせるアートワークにも表れています。作品全体が閉塞的な雰囲気に支配されていた Awake のアートワークには “鏡” が置かれていましたが、本作は同じ位置に “扉” があり、扉の先からは “光” が漏れています。これは、彼ら自身が “次” へと向かおうとしていることへの意思表示ではないかと思うのです。

 

6th~10thを “地続きのコンセプト・アルバム” へと完成させるための重要な1ピース

狙ったわけではないとは思いますが、この作品がキッカケとなり、アル中シリーズ終了 → Mike Portnoy脱退 → バンドの閉塞感打破へと繋がっていった気がします。Portnoy さんの脱退が良かったのか悪かったのかはわかりませんが、ヘヴィな方向性にウンザリされていた方も一定数はいらっしゃると思いますし “マンネリが解消できた” と考えるとアリだったのではないでしょうか。

ところで、本作を聴いて改めて思うのが「6th~10th(本作)は “セット” で考えたほうが良いのかもしれない」ということです。よく、Six Degrees~ 以降の個別作品を捕まえて「○○は駄作」だとか仰る方々もいらっしゃるわけですが、個人的には “6th~10th=地続きのコンセプト・アルバム” だと考えています。

確かに “あのバンドっぽい” とか “単純につまらない” といった作品毎・楽曲毎の欠点はあるかもしれません。ただ、これらを “1つの大きな作品” だと解釈すれば、切り取った部分の善し悪しで文句を吐いているに過ぎず、何というか・・・”木を見て森を見ず” 感を抱いてしまうのです(でも気持ちはわかります)。

とは言え、6th~9th までの作品しか聴いていなかったら、このような感想は抱かなかった気もします。やはり、本作で「とりあえず一旦締めますよ」といったバンド側からの意思表示がなされたことにより、6th~10th の作品群が一つの “線” で繋がった印象です。

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