HAGANEYA(@imech_jp)です。

2007年リリース。プログレッシブ・メタル・バンド Dream Theater の通算9作目のフルアルバムであり、本作からレーベルが Roadrunner Records へと変わりました。一応、1st → Mechanic(MCA)、2nd → Atco、3rd〜4th → Eastwest、5th〜7th → Elektra、8th → Atlantic・・・といったレーベルの変遷を辿っているわけですが、2nd以降はザックリ “Warner” 系と言い切ってしまっても良いと思います(今となっては)。

現在はヘヴィメタル全般(特にメタルコア関連)を総合的に扱っている Roadrunner ですが、90年代は主に “グルーヴ・メタル/ニューメタル” や “エクストリーム・メタル” を扱うレーベルでした。2007年に Warner へと買収されて以降、割と “何でも来い” 的なスタンスへと変わっていった印象があります。

前述のイメージが強かったこともあり、当時 Dream Theater が Roadrunner からアルバムを出した際はビックリしました。とは言え、前作『Octavarium』の時点でニューメタル的なタッチの楽曲が見え隠れしていたので、そこからの流れだけで考えると違和感が無いとも言えます。

さて、本作に対する率直な感想ですが・・・個人的には「Train of Thought” と “Octavarium” を足して2で割った作風」といった印象を受けました。メロディ寄りかヘヴィ寄りかで言うと “ややヘヴィ寄り” の作風です。

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00’s Dream Theater の音楽的な主導権を握っていた Mike Portnoy

そもそも、極論を言うと・・・6th〜10th 辺りの作品はいずれもヘヴィな要素を内包していると思います。

なぜなら、後述する『Twelve-step Suite』の “扱うテーマの重さ” ゆえ、他の楽曲を聴いていてもどことなくヘヴィ方面へと気持ち的に引っ張られる感覚があるからです。次作である 10th『Black Clouds & Silver Linings』を最後に Mike Portnoy さんが脱退したのも、”冠シリーズがひと段落ついた(から休ませて)” というのが本音ではないかと思っています。

結果的に Portnoy さん脱退後の Dream Theater の作品からは憑き物が取れたかのように “独特の重苦しさ” が無くなり、初期のメロディアスな質感が戻ってきました。このことからも、00年代の Dream Theater の音楽的な主導権を握っていたのは “Mike Portnoy” その人だということがよくわかります。

 

Crimson や ELP などの “武闘派” プログレを『Train of Thought』系ヘヴィ・サウンドと融合

スペーシーかつメロディアスなイントロや1分42秒辺りからの緊迫感溢れるパートに 6:00(Awake) の再来を感じさせつつ叙情性も兼ね備えたインスト曲 “I. Prelude“、前曲とは異なるメロウなサウンドに Images and Words の頃の雰囲気をどことなく感じる “II. Resurrection” の2曲からなる #1『In the Presence of Enemies Pt. 1』。

Evanescence を彷彿とさせるゴシック系ニューメタル・サウンドが LaBrie さんの声質と相性が良い #2『Forsaken』、Blackened(…And Justice for All) 好きな彼らの趣味が反映されたA・Bメロ&産業ニューメタルなサビを経て4分15秒辺りからテクニカルな中近東風ギターソロが炸裂する #3『Constant Motion』、As I Am(Train of Thought) を Pantera 風味のグルーヴ感で再構築したかのような前半を経て3分34秒辺りからのテクニカルなパートへと移行していく #4『The Dark Eternal Night』。

Tool を思わせるオリエンタルなメロディを Opeth 的な雰囲気と構成でまとめ上げた “VIII. Regret” “IX. Restitution” の2曲からなる #5『Repentance』。

前作の Never Enough(Octavarium) の延長線上にありつつも今回はしっかり “オマージュ” へと昇華できている #6『Prophets of War』、クリムゾン・キングの宮殿(In the Court of the Crimson King) を思わせる “大仰なイントロからの哀愁溢れるボーカル” の前フリのせいで8分7秒辺りからのインスト・パートまで “21世紀のスキッツォイドマン” のオマージュに聴こえてくる #7『The Ministry of Lost Souls』。

重厚なベースと不穏さを醸し出すピアノ・サウンドが印象的な “III. Heretic“、三連符&カッティングによるストロングなリフが格好良い “IV. The Slaughter of the Damned“、恐怖の頭脳改革(ELP)にも通ずるメカニカルなキーボード・プレイが堪能できる “V. The Reckoning“、再び 6:00 みたいなイントロを経て不安感を煽るクライマックスへと繋がる “VI. Salvation“、の4曲からなる #8『In the Presence of Enemies Pt. 2』。

キャッチーな楽曲を前半に配置しているため、本作で Dream Theater を初めて知った方でも「何か “入りやすい” バンドだなぁ」と思われるのではないでしょうか。この辺の配慮は前作と同様ですね。

その一方で、長尺曲には “往年のプログレッシブ・ロック” の香りが漂っています。

ただし本作の場合 Rush や Kansas などのプログレ・ハードよりも、ELP(Emerson, Lake & Palmer) や King Crimson といった “武闘派” プログレ・バンドからの影響が特に強い感じです。前述のサウンド・アプローチが『Train of Thought』系統のヘヴィな音楽性と融合したことが、本作のバランスの良い作風へと繋がっているように思います。

 

“VII” が抜けている理由

ちなみに、巷の声に “VIIが抜けている” ことへの指摘があるようですが・・・抜けているのではなく “シリーズが違う” だけです。

元々1つの楽曲だった “In the Presence of Enemies” シリーズは I〜VI(本作単体)で完結しています。

一方『Repentance』は、Portnoy さん主導による “Twelve-step Suite” シリーズの8〜9曲目に該当し、『Six Degrees of Inner Turbulence』〜『Train of Thought』~『Octavarium』〜『Systematic Chaos』〜『Black Clouds & Silver Linings』の5作品にまたがる約57分の超大作(の一部)です。

The Glass Prison(Six Degrees of Inner Turbulence)

  • I. Reflection
  • II. Restoration
  • III. Revelation

This Dying Soul(Train of Thought)

  • IV. Reflections of Reality (Revisited)
  • V. Release

The Root of All Evil(Octavarium)

  • VI. Ready
  • VII. Remove

Repentance(Systematic Chaos)←今ここ

  • VIII. Regret
  • IX. Restitution

The Shattered Fortress(Black Clouds & Silver Linings)

  • X. Restraint
  • XI. Receive
  • XII. Responsible

同じように勘違いをされている方もいるかもしれないと思ったので、一応書いておきました。

 

経験者には “スルメ盤” であり、入門者には “即効性” を持つ両極端な作品

Dream Theater を聴き過ぎてしまった方々にとっては “スルメ盤” であり、本作から聴き始めた方にとっては即効性があるという、”間口の広さ” と “奥の深さ” を併せ持った作品です。

前作『Octavarium』も同様の性質を持っていますが、本作よりもメロディに比重を置いているため表面的には全く似ていません。この辺のさじ加減が Dream Theater というバンドのすごい所だと思います。

ただ、本作に対して “駄作” だの “才能が枯れた” だの言いたくなる方々の気持ちも分からなくもないです。おそらく、Dream Theater を中途半端に知ってしまったぐらいの状態の人が、一番 “刺さらない” タイプの作品なのかもしれません。

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