HAGANEYA(@imech_jp)です。

2015年リリース。前作『The Final Frontier』から5年ぶりとなる本作は、バンド初の “2枚組” となる90分超の超大作です。

また、ジャケ絵のバンドロゴが1995年作の10th『The X Factor』以来久しぶりにオリジナルの字体へと戻っています。”旧ロゴへの回帰” が具体的に何を意図するかどうかは定かではありません。ただ、こういう場合は大抵「あなた達が大好きな “全盛期の作風” に戻ってきましたよ」というバンド側からの無言のアピールだったりするわけですが・・・

結論から言うと本作は、00年代以降のプログレ路線を引き継ぎつつ “全盛期(80年代)の大作曲の香り” を再現してみた感じの作風です。

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多くのファンが求めていた “80’s Maidenのセルフ・パロディ” がここにある

各所でイジられている “必殺仕事人” なイントロから始まり勇猛なミディアム・テンポのパートを経て徐々にスピード感を増していく #1-1『If Eternity Should Fail』、エディがビデオゲームの歴史を辿っていくMVと往年の雰囲気をビンビンに放つスピード・チューンが絶妙にマッチしている #1-2『Speed of Light』、Brave New World・Rainmaker・Different World路線のモダンなメロディラインが楽しめる #1-3『The Great Unknown』、序盤のヴァイキング・メタル的なパート〜5分辺りからのやや極端ながらも過去最高に壮大なメロディを配したパート〜9分過ぎからの三連符のパート…と聴き所の多さによって13分半という時間を一切感じさせない #1-4『The Red and the Black』、Moonchild(Seventh Son of a Seventh Son) 系イントロからの 80’s NWOBHM な疾走感が心地良い #1-5『When the River Runs Deep』、ドゥーム・ゴシック的な雰囲気をベースにキャッチーかつメロディアスなボーカルが堪能できる前半と7分辺りからのインスト・パートが耳に残る #1-6『The Book of Souls』。

前のめりな三連符のリズムと最近のMaidenの安定感が融合したライブ感溢れるミドル・チューン #2-1『Death or Glory』、Wasted Years(Somewhere in Time) まんま過ぎるイントロながらAメロへの繋ぎは原曲よりも合っている気がする #2-2『Shadows of the Valley』、Aメロ直前の変拍子的な導入部分とコマーシャルなメロディという相反する要素が楽曲の存在感を1段階上へと上げている #2-3『Tears of a Clown』、スローテンポ&マイナー調の楽曲をベースに4分半前後で一瞬入るギターソロの飛翔感が素晴らしい #2-4『The Man of Sorrows』、Bruce さんによるピアノの音色が深みを感じさせる導入部〜7分前後からの “空” を感じさせるパート〜9分半辺りからの三連符パート〜10分半辺りからの疾走パート〜12分過ぎからのギターソロ〜12分半辺りからのハイトーンボーカル〜13分過ぎからのゴシックメタル・パート〜14分24秒辺りからのシンフォニック・パート〜15分過ぎからのクライマックス・パート…と歴代最長の収録時間&歴代最高の場面展開を誇るメタル・オペラ曲 #2-5『Empire of the Clouds』。

作品全体を通して聴いてみて感じることは「大作路線にも関わらず、00年代以降のどの作品とも作風が似ていない」一方で、“80’s Maidenのセルフ・パロディ” 感が強いということです。

プログレメタル・バンドとして飛躍を遂げた『Brave New World』、疾走感を重視した『Dance of Death(邦題:死の舞踏)』、重苦しいテーマ&サウンドの『A Matter of Life and Death(通称:戦記)』、プログレッシブ・ロックへの愛が炸裂している『The Final Frontier』・・・とそれぞれに個性はあるのですが、いずれの作品にも共通して “00年代以降の彼らの音楽的趣味” が反映されているように感じます。この流れで、本作も前述の作品群と同じ感覚で聴いているはずなのに、リフ・メロディ・楽曲構成に至るまで “古き良きMaidenサウンド” の香りが漂ってくるのです。

1st『Iron Maiden(邦題:鋼鉄の処女)』で言えば “Phantom of the Opera” 。
3rd『The Number of the Beast(邦題:魔力の刻印)』で言えば “Hallowed Be Thy Name” 。
5th『Powerslave』で言えば “Rime of the Ancient Mariner” 。

Dream Theater以降の世代としては、80年代の大作路線の Iron Maiden に対して「野暮ったさやサウンド・プロダクションが解消されれば良くなるんだろうなぁ」と思っていたはずなのに・・・いざ Dream Theater みたいなモダンなプログレメタルへと進化した00年代以降の作品と対峙して気付かされたのは、「80年代の彼らの大作曲に感じる野暮ったい楽曲展開も、あれはあれで “味” だった」ということでした。

ぶっちゃけ、スキル的な面でも構成的な面でも、彼らより上手くこなせるプログレバンドはいくらでも存在します。それでも彼らは、(超絶技巧を武器とするバンドに比べれば)拙い技術を “愛” でカバーし続けているわけで、そういった姿勢に魅力を感じている長年のファンも多いのではないでしょうか。

 

ここ数作のモダン過ぎるアプローチにピンと来なかった方々には、高確率で “刺さる” はずだけど・・・

プログレびいきな私としては、なぜか評判の悪い前作『The Final Frontier』が(00年代以降では)マストです。

とは言え、真の Iron Maiden ファンは、おそらく本作を最優先で選ぶと思いますし、その感性も理解できます。個人的にも、本作は00年代以降では好きなほうの作品です。

近作に漂っていた “モダン過ぎるアプローチ” にピンと来なかったファンには高確率で刺さる作風だとは思いますが、“大作=悪” と問答無用で斬り捨てるタイプのリスナーにとっては相変わらず駄作扱いでしょう。この手のいわゆる “プログレMaidenが許せない方々” は、80年代の作品だけを延々と聴き続けるか、スピード路線のIron Maidenみたいなバンドを探せば幸せになれると思います。

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