HAGANEYA(@imech_jp)です。

2010年リリース。”戦争” を題材にした前作『A Matter of Life and Death』はサウンド・プロダクションこそ高品質でしたが、”息が詰まるような音密度” と “(プログレにも関わらず)起伏に乏しい楽曲構成” によって、個人的には「歌詞・音楽性を完璧に理解した上で何度聴いても、おそらく印象は変わらないだろう」という結論にほぼ達しつつあります。

割と何でも選り好みせずに受け入れられるタイプの音楽好きだと自負しているのですが、前作はまるで “分厚い歴史の教科書を読んでいる” かのようでした。決してプログレに耐性が無いわけではなく、彼らの過去作だと『The X Factor』や『Brave New World』などの作品は普通に好きなので、単に私の好みではなかっただけかもしれません。

さて、前述の理由によって前フリが効いているだけに、本作も覚悟を決めて臨んだわけですが・・・結論を言ってしまうと “拍子抜けするほど取っつきやすい” 作品でした。

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「気が付けば最後」を味わえる時点で “良作” である証拠

機械的なドラミングから始まるイントロ〜後半の肉感的なメタル・サウンドとのギャップが良い味を出している #1『Satellite 15… The Final Frontier』、即興感の強いイントロ〜3分17秒辺りからのDream Theater感強めなリフにプログレへの愛を感じる #2『El Dorado』、アンプラグドなギター・サウンドによるシリアスイントロ〜Bメロ辺りから前倒しでキャッチーなメロディが飛び込んでくる #3『Mother of Mercy』、魅力的なメロディが満遍なく散りばめられたパワー・バラード曲 #4『Coming Home』、Aces High(Powerslave)系統の疾走曲をベースにNumber of the Beastみたいな明るいリフが隠し味程度に入った #5『The Alchemist』、宇宙遊泳しているかのような浮遊感を感じる冒頭〜マイナー調&メジャー調のメロディが混在する序盤〜フュージョン系の近未来サウンドによる中盤…と作品中最も “宇宙” 的な描写がされている #6『Isle of Avalon』、 オーソドックスなMaidenサウンドかと思いきや中盤以降のSFタッチな音世界に意表を突かれる #7『Starblind』、Moonchild(Seventh Son of a Seventh Son) のイントロと Can I Play with Madness のリフを掛け合わせた感じの長尺曲 #8『The Talisman』、ダークなイントロを経て “やや食い気味” に始まるAメロが若々しくて格好良い #9『The Man Who Would Be King』、1~9曲目までとは毛色の異なるファンタジックなサウンドが新鮮な #10『When the Wild Wind Blows』。

宇宙” が題材ということで、同じSF系の『Somewhere in Time』を想像される方もいらっしゃるかもしれません。共通項があるかどうかは何とも言えないところですが “捨て曲が少ない” という点では似ている気がします。何やかんや言っても、表面的には『Brave New World』『A Matter of Life and Death』の延長線上の “大作” 路線です。

ただ、前述の作品群(特に後者)と比べ本作は “メロディの質” と “バランス感覚” が圧倒的に優れています。00年代の作品では最高峰に位置するのではないでしょうか。

Brave〜以降、彼らのスタジオ盤の再生時間は右肩上がりで増え続けていき、本作ではついに “76分” という領域まで来てしまいました(次作『The Book of Souls』は92分)。にも関わらず本作は、過去作(主に “戦記”)では見られなかった “聴き疲れ” を起こさないような配慮が全編に行き届いているため、”いつの間にか最後の曲まで来ていた” という『Opeth』さながらの感覚を味わうことができます(曲調が Opeth に似ているわけではありません)。

プログレという音楽性を追求する以上、リスナーへ対しての配慮は他ジャンル以上に必要不可欠です。元来 “もったいぶった構成の長尺曲” ばかり作る傾向にあった彼らですが前作は特に酷く、そこからの “揺り戻し” とも言える本作の改善ぶりには目を見張るものがあります。

 

“大作志向” と “フットワークの軽さ” を両立した作品

00年代の “大作” ラインの作品に対して「どれも一緒」といった紋切り型の評価をされている方々を見かけますが、そういった評価のほとんどは “根拠の無い先入観” に拠るものであり、残念ながら “ロクに聴いていない” ということがよくわかります。なぜなら「きちんと聴いているのであれば、例えば “前作” と “本作” がまるっきりタイプの違う作風であることなんてすぐに気付く」はずだからです。

同じプログレメタル路線の作品でありながら “逃げ道が用意されていなかった” 前作と、魅力的なメロディが大増量しコンセプト・アルバム寄りの作風にも関わらず “どこでも中断できる” 柔軟性を持つ本作は、毛色がまるで違います。“大作志向” と “フットワークの軽さ” を両立した本作は、直近の作品で言えば前々作『Dance of Death(邦題:死の舞踏)』に最も近いかもしれません。

ただし、巷の意見の中には「本作から入ると Iron Maiden を嫌いになるかもしれない」的なものもあったりするので、一般的な感覚で考えた場合、最初の1枚には向いていないのだと思います。私の意見にはプログレメタル好きとしての視点がかなり含まれていますので、当記事については(本作に限らず)話半分で聞いていただければ幸いです。

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