HAGANEYA(@imech_jp)です。

2006年リリース。”戦記” の愛称で呼ばれる本作は、ビルボード(Billboard 200)で初の9位にランクインした作品としても有名です。 80年代後半からビルボード10〜20位をウロウロしていたので当時の北米地域でも普通に有名だったとは思いますが、前年の Ozzfest 2005 出演によって “メタルコア世代の若者達” に受け入れられたことも影響しているのだと思います。

さて、本作は Judas Priest と並ぶヘヴィメタルの草分けである Iron Maiden に興味を持った “新世代のメタルキッズ” 達に挑戦状を叩き付けるかのような、非常に聴き込みを要する作品です。

“戦車” を中心に据えた無骨なジャケットデザインから、中には “体育会系寄りのエクストリームなサウンド” を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、描かれている音世界は相変わらずの “大作” 志向となっています。 前作『Dance of Death(邦題:死の舞踏)』が非常に取っ付きやすい作風だっただけに、ギャップがエグい・・・

スポンサードリンク

 

歴史書ばりの世界観に引っ張られた “一見さんお断り” のシリアスなメロディ

00年代以降の Maiden サウンドの格好良さが凝縮されたメロディアスなスピード・チューン #1『Different World』、”軍旗の下に” という邦題から歌詞・メロディに至るまで “戦地に赴いた兵士” の様子が描写されている #2『These Colours Don’t Run』、邦題の “黄色い太陽(=水素爆弾)” が示す通り原子爆弾を生み出した “マンハッタン計画” 周辺の事柄をテーマにした9分弱の長尺曲 #3『Brighter Than a Thousand Suns』、要所要所で挟まれる中近東風のリフが本作の世界観に合っているスピード・チューン #4『The Pilgrim』、5分33秒辺りからの耳を引くメロディが他曲との差別化になっている #5『The Longest Day』、3分29秒辺りからのアンプラグドなギター・パートが作品全体の重苦しさを緩和してくれる #6『Out of the Shadows』、静寂なイントロからのストロングな展開が Blood on the World’s Hands(The X Factor) を彷彿とさせる #7『The Reincarnation of Benjamin Breeg』、4分18秒辺りからのシンガロングできそうなパートや6分過ぎ辺りからの緊迫感あるドラミングが耳に残る #8『For the Greater Good of God』、1~8曲目までの作風とは毛色が異なり “往年のMaiden節” に近い楽曲構成の #9『Lord of Light』、空間的な広がりを感じさせる冒頭部分~ Geoff Tate さん(Queensryche) を彷彿とさせるAメロ~ベースラインが渋いBメロ~過去最高のハイトーンで迫ってくるサビ~終盤にかけてのドラマティックなインスト…と非の打ち所がない #10『The Legacy』。

基本的には、前々作『Brave New World』で完成した “モダンなプログレメタル” 路線の延長線上にある作風ですが、サウンド・プロダクションがより硬質になっています。加えて “ミディアムテンポの楽曲” が大多数を占め、従来作にあったような目まぐるしい場面転換は控えめです。

起伏の少ないメロディによって Iron Maiden の魅力でもある “UK臭” や “(良い意味での)野暮ったさ” がかなり薄まり、良くも悪くも “USプログレメタル” 的な質感になってしまった気がします。

その一方で、本作が描こうとしている “歴史書” ばりの世界観にメロディが引っ張られ過ぎているため、ただでさえ「わかりにくい」と敬遠されがちなプログレの悪い面ばかりが凝縮されたような作風に仕上がってしまっているのが難点でしょうか。

1曲1曲を個別に聴いてみると、どれも過去作の “佳作” レベルのクオリティを満たしているとは思いますが、いかんせん “ボヤッとした長尺曲だけで構成” してしまったことによって “一見さんお断り” 的な空気感を醸し出しているのが非常に良くないですね・・・

 

メロディによる差別化が弱いので、歌詞を読まずに聴くタイプの人には厳しいかも

本作を最初の1枚として薦める方もいらっしゃるようですが、Iron Maiden を全く聴いたことが無い方が本作から聴き始めたとして、果たしてこの情報量を消化できるのでしょうか・・・メロディラインは全然違いますが、過去作で例えるならば 9th『Fear of the Dark』の取っつきにくさに近いような気がします。

もはやこのバンド自体が “自身の80年代の作品群” と比べてどうこう言われたくないとは思うのですが、かと言って現在の “同業他社” とも言える主要なプログレメタル系のバンド群と比較しても、楽曲展開にメリハリが無く淡々と過ぎていく印象が大きいです。どちらに転んでも・・・といった感じでしょうか。

全作品を聴いている以上 “彼らのやりたいこと” は理解できますし「この手の作品は “歌詞” まで含めて聴き込んでナンボ」というフォローも出来なくは無いものの、歌詞を読まずに聴く方々のことも考えられている他バンドの “この手の作品” だってあるわけで「歌詞を読み込め」と口にしたところで言い訳になってしまうのが辛いところですね・・・

大作が大好きなのはわかりますが、さすがに “口直し” 的な楽曲の存在は必要だったのかもしれません。具体例を挙げると、#10『The Legacy』みたいな楽曲を2~3曲おきに配置していれば印象はだいぶ変わっていたはずです。

なお、本作の反省点を活かしてか、次作『The Final Frontier』はキャッチーかつフックの効いたメロディを擁する楽曲が要所要所に置かれ、かなり聴きやすい作品となっています。本作と同様 “コンセプト・アルバム” 路線には変わりないですが、描こうとしている世界観が(本作に比べると)シンプルなので、それが音楽性にも反映されたのではないでしょうか。

スポンサードリンク