HAGANEYA(@imech_jp)です。

1998年リリース。前作『The X Factor』から参加した新ボーカル Blaze Bayley さんによる2作目のスタジオ盤であると同時に、(バンド側の都合で)本作を最後にバンドを脱退することになります。

前ボーカリストの Bruce Dickinson さん&前ギタリスト Adrian Smith さんが再加入し否応無しに盛り上がってしまう次作『Brave New World』の影に隠れてしまったこともあってか、非常に存在感が薄い作品です。

また、本作からバンドロゴの形状も微妙に変更されています(RとNとMの “はらい” の部分が消滅)。

この新ロゴは、00年代の作品全てで継続採用されることになるわけですが、2015年リリースの 16th『The Book of Souls』で久しぶりに旧ロゴが復活しています。Judas Priest の暗黒期のロゴと違って些細な変化なのでわかりにくいですが・・・メタルのジャケットデザインやバンドロゴは音楽性や心境の変遷をダイレクトに反映していることが多いので、注意深くチェックしてみると意外と面白いです(ニュー・ウェーヴ期の Paradice Lost なんて露骨にジャケ絵の作風変わってましたからね)。

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大作主義をやや抑え、スピード・チューンの配置を見直したことにより “取っ付きやすさ” がアップ

さて、前作『The X Factor』は、Bruce期を盲目的に愛するファンから徹底的に嫌われまくったわけですが、その理由として “Blazeさんの音域の狭さ” と “行き過ぎた大作主義” などがあったようです。

それを反省してかどうかはわかりませんが、本作は前作の作風をややコンパクトに再構築したかのような作風を始め、スピード・チューンの配置バランスなども見直したことにより、取っつきやすさが格段に向上しています。

Prowler の再来を思わせるパンキッシュなスピード・チューン #1『Futureal』、3〜4分で終わりそうなキャッチー雰囲気を醸し出しつつ10分弱も似たような展開が続くシュールな構造の #2『The Angel and the Gambler』、Blazeさんによる “Strikes! Twice!” という男臭い掛け声が格好良い #3『Lighting Strikes Twice』、三連符のリズム&北欧ファンタジーを彷彿とさせるメロディが魅力的な9分の長尺曲 #4『The Clansman』、前作の雰囲気を微かに匂わせるイントロ〜中盤にかけての特徴的なオルタネイト・ピッキングやギターソロが次々と繰り出される #5『When Two Worlds Collide』、ミディアム・テンポにリズミカルなボーカル・ワークが絡む前半〜疾走感が心地良い後半…といつものMaiden節が楽しめる #6『The Educated Fool』、前半の疾走パート〜中盤のシンフォニックなスローパート〜後半のオリエンタルなリフ…と怒涛の勢いで場面が変わっていく8分超の長尺曲 #7『Don’t Look to the Eyes of a Stranger』、Blazeさんの哀愁感じさせるボーカルがメロディラインの良さをより引き立てているパワー・バラード #8『Como Estais Amigos』。

個人的に大好きな前作冒頭曲『Sign of the Cross』の “ド頭からいきなり11分” というインパクトは、プログレ好き以外の方々にしてみれば苦行以外の何物でもないでしょうし、本作の1曲目に3分以下のスピード・チューン『Futureal』を持ってきたのは大正解だと思います。

一方で、2曲目『The Angel and the Gambler』が、明らかにコンパクト寄りの作風にも関わらず10分弱の尺にした理由はよくわかりませんが、歌詞の “被り” の無さを考えると、THE虎舞竜のロードみたいに “伝えたいことが山ほどあった” パターンではないでしょうか。”英語圏のリスナーだからこそ響く” 系の曲なのかもしれません(あるいは・・・冒頭に長尺曲を持ってこれなかったことへの反動?)。

その他の特筆すべき点としては、前作にうっすらと漂っていた “グランジ臭” が消えていることでしょうか。グランジ・オルタナティヴ界隈から聴き始めた私みたいなタイプは何とも思いませんでしたが、本作に対する巷の評価が前作からやや改善しているのは、この辺りの理由も若干絡んでいるのかもしれません。

 

「もし Paul Di’Anno が全盛期も在籍していたら・・・」といった想像力を掻き立てる作品

『The X Factor』と『Brave New World』に挟まれているせいか、相対的に “シンプルな作風” といった先入観を抱いてしまいがちですが、本作もやや大作主義的な性格を感じさせる作風だと感じます。スピード・チューンを序盤と終盤に配置しているせいか、不思議と目立ちませんね。

本作を “過去作” で無理やり例えるのであれば、初期2作『Iron Maiden(邦題:鋼鉄の処女)』『Killers』のシリアスな音楽性を『Seventh Son of a Seventh Son(邦題:第七の予言)』と『No Prayer for the Dying』の間ぐらいのバランス感覚でまとめてみた作品、といった印象です。やや粗めのサウンドを持ち味としていた初期 Iron Maiden が久しぶりに戻ってきているので、Paul期が好きなファンは結構ハマるのではないでしょうか。

なお、Blaze さんの声質はどちらかと言うと初代ボーカリストの Paul Di’Anno さんに近いので、音のタッチとしては前作よりも相性が良いと思います。「”Paul期” と “Bruce期” の折衷案」的な作風なので、組み合わせとしてはなかなか興味深いかもしれません。

余談ですが・・・ Blaze さんのヘタウマ&哀愁ボーカルは、『Sentenced』『Poisonblack』を歴任してきた名ボーカリスト Ville Laihiala さんのそれを彷彿とさせる部分が多く、個人的にはかなり好みだったりします。正統派メタル・パワーメタル系が好きな人って猫も杓子も “ハイトーンボーカル” を最優先で評価したがるイメージが強いのですが・・・ヘタウマの良さとかわからないもんかなぁ。前作の『Sign of the Cross』もですけど、本作の『Como Estais Amigos』なんて特に、ノリノリゴシック好きにはたまらないと思いますよ。

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