HAGANEYA(@imech_jp)です。

1980年リリース。日本においては “鋼鉄の処女” のタイトルで知られる彼らのセルフタイトル・アルバムであり、同時に彼らのデビュー作となる作品です。

7th『Seventh Son of a Seventh Son(邦題:第七の予言)』や 4th『Piece of Mind(邦題:頭脳改革)』といった “通向け” 寄りの作品から先に手に取ってしまった13〜14年前の私は Iron Maiden の聴き方がわからなくなり、いよいよ彼らへの興味を失いかけていました。

「”プログレの様式” も “正統派メタルの様式” も理解出来ているはずなのに、なぜこのバンドのサウンドはスッと入ってこないんだろう?」。そんな私の混乱状態をある程度整理してくれたのが本作です。ぶっちゃけ、早い段階でこの作品と出会ってなかったら、私の中で Iron Maiden は終わっていたと思います。

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パンク・ロックのオブラートで包んでみたら、扱いにくい “プログレ要素” が上手く馴染んだ

彼らのキャリアの中でも最初期の作品と言える本作や次作(Killers)にあって、後年の作品で薄れてしまった要素があります。“パンク・ロック” のザラザラ感です。

なぜ当時の私は、黄金期(Bruce期)の Iron Maiden サウンドを上手く消化出来なかったのか?

その理由はおそらく、プログレッシブ・ロックのフォーマットをそのままヘヴィメタルで再現しようとしたがゆえの “チグハグ感” をこのバンドに感じてしまったことにあると思います。Dream Theater などのバンドのようにアレンジ移植せず、オリジナル・プログレ特有の “つかみどころのない世界観” をそのまま持ってきた感じがあったため「どういう立ち位置のバンドなの?」「どう聴けば良いの?」と混乱してしまったのかもしれません。

本作が優れている点は、まさにその “バランス感覚” にあります。あくまで個人的な感覚ですが、プログレ要素の溶け込ませ方だけで言えば、Bruce期の作品群よりも遥かに上です。ヘヴィメタルというよりもパンク・ロックに近い初期Iron Maiden の音楽性が、プログレッシブ・ロックがヘヴィメタルへ嫁ぐ際の “潤滑油” となったのではないか?とすら思ってしまいます。

冒頭曲にも関わらずクライマックス感を演出するメロディラインに心を奪われる #1『Prowler』、Steve Harrisさんの自由奔放なベースラインがひときわ目立つ #2『Sanctuary』、Jefferson Airplaneを彷彿とさせる怪しい雰囲気のメロディが耳に残る #3『Remember Tomorrow』、ミドルテンポのロックンロール・サウンドにPaul Di’Annoさんの張り上げるボーカルが好相性な #4『Running Free』、Queen的なロック・オペラの世界観をパンク経由で再解釈したかのような #5『Phantom of the Opera』、三連符のリズムを軸にしつつ終盤にかけて激しさを増していく #6『Transylvania』、ブルージーなメロディに泣きのギターが絡む #7『Strange World』、アップテンポなロックンロールとSteve Harrisさんのベースがぶつかり合う #8『Charlotte the Harlot』、パンクス&メタラーの両方を魅了する本作の二枚看板 #9『Iron Maiden』。

後に、多くの後輩バンドによってカバーされまくることになる『Prowler』や『Iron Maiden』は、いずれも本作に収録されています。これらの楽曲に限って言えば音のタッチや楽曲構成が “完全に” パンクだし、エディ(Iron Maidenのジャケットに毎回出てくるマスコットキャラ)の髪型が “モヒカン” 寄りであることからも、(メンバーは否定していますが)当時は間違いなくパンク・カルチャーの影響下にあったはずです。パンク・ロック界隈にファンが多いのも納得できます。

初代ボーカリスト Paul Di’Anno さんの歌唱法に拠る印象も大きいですが、同時期にリリースされた Judas Priest の『British Steel』などと比べても音作りが明確に異なるので、技術的な問題ではなく意図的にこういう方向性を目指していたのではないでしょうか。

 

予備知識が全く無い方に対しての “名刺” 代わりとなる作品

「Judas Priestはまだ何となくわかるけど、Iron Maidenはどう聴いたら良いのかイマイチわからない」という方は、ぜひ本作から手に取ってみてください。後年の彼らの作品に通じる “大作主義” 的な要素が既に顔を覗かせている一方で、パンク・ロック由来のシンプルなサウンドが “取っ付きやすさ” を最大限に引き出してくれています。

カバー率が最も高いアルバムということもあってか、本作の音楽性=Iron Maiden と思われがちですが、意外にもこの方向性は初期2~3作目ぐらいまでで終息します。メロディラインも、高揚感を刺激するメジャーコードを取り入れ始めた “後年の作品群” に比べて、マイナーコード主体の楽曲が多いイメージです。

「初期の作風と黄金期の作風、どちらのほうがより優れているか?」なんてことは一概に言えず、どちらも Iron Maiden であることに変わりはないのですが、全く予備知識の無い方に「Iron Maiden のオススメは?」と聞かれたら、私は迷わず本作を推します。

なぜなら(完全に主観になってしまいますが)予備知識無しの状態で聴いた時に、最も “覚えてもらいやすい” ポイントを押さえているからです。後年の作品はサウンドのクオリティが上がった反面、場面転換を多用し過ぎて楽曲の本質的な魅力に辿り着きにくくなっている気がします。

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