HAGANEYA(@imech_jp)です。

2001年リリース。新ボーカル Tim ‘Ripper’ Owens さんに代わってからの2作目であり、同時に “Tim時代最終作” となる作品です。

前作『Jugulator』は、前ボーカル Rob Halford さんに瓜二つのハイトーンボーカルを楽しめる作品であると同時に、彼の中音域に可能性を感じる作品でもありました。

Robさんの中音域は比較的クセの無いクリーンな声質ですが、Timさんの中音域はダミ声寄りの男臭い声質なので、グルーヴ・メタル/ニューメタル系の不良っぽいサウンドにも適応出来る柔軟なボーカルといった印象です。Rob Halford系ハイトーンと、Phil Anselmo(Pantera)/James Hetfield(Metallica)系のダミ声を同時に使いこなせる貴重な存在だと言っても過言ではないでしょう。

そんな Tim さんの別の一面を掘り下げようと思ったのかどうかは定かではありませんが、本作は前作以上に中音域ボーカルを重視した作風です。サウンドも、よりニューメタル路線に舵を切っています。前作が “ブラックアルバム的な成功を狙って盛大にスベった作品” だとすれば、本作は Metallicaにおける『Load』~『Reload』的な立ち位置の作品といったイメージです。

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メタル要素が減退した代わりに、Judas節がやや復活 ※前作比

全編通してツーバスで疾走しまくるドラムにScreaming for Vengeance期を思わせるギターリフが隠し味的に絡む #1『Machine Man』、Type O Negativeばりにエフェクトを掛けまくったサイバーなギターと時折り入るアコースティック・パートとのギャップが面白い #2『One on One』、Stabbing WestwardとCreedを足して二で割ったようなインダストリアル系ポスト・グランジ・ナンバー #3『Hell is Home』、シアトリカルなシンセ・サウンド&アレンジが特徴的な #4『Jekyll and Hyde』、ダウン・チューニングを効かせまくったサビ&暗めのギターソロが良くも悪くもJudasらしくない #5『Close to You』、悶え苦しむかのようなボーカルによってグランジ成分が強調されている #6『Devil Digger』、Painkillerを彷彿とさせるリフ&スピード感にミドルテンポの緩急を入れた #7『Bloodsuckers』、メロディアスなアコースティック・パートに一瞬だけ癒やされる #8『In Between』、中~高音域を得意とするTimのボーカルを堪能できるハード・ロック・ナンバー #9『Feed on Me』、Metal Gods(British Steel)の再来を感じさせるメロディをインダストリアル風味にアレンジした #10『Subterfuge』、Sad Wings of Destinyの頃の寂しげな空気感をどことなく感じるパワー・バラード #11『Lost and Found』、シンフォニック・ゴシック・メタルみたいなリフ&中近東風のサイケデリックなボーカルによって雰囲気がビンビンに出まくっている #12『Cyberface』、清々しいほどのラップコア・ナンバーにKornのバグパイプをパロったかのような間奏が露骨過ぎる #13『Metal Messiah』。

前作と決定的に異なるのは “曲構成” です。中盤を無視して序盤&終盤にハイライトを持ってきていた前作に比べ、本作は中盤にスピード・チューン『Bloodsuckers』を配置したことによってバランスが改善され、通しで聴いてもダレにくくなっています。

一方でメタル的な攻撃性は減退してしまい、代わりにグランジ/ポスト・グランジ系の重苦しいスロー~ミドル・チューンが大幅に増えたため、ステレオタイプなメタルサウンドを好む方々からは前作以上に嫌われたのではないでしょうか。音質的にも若者が好みそうなドンシャリ系のサウンドなので、”あの” メタルゴッドの作品として聴いてしまうと安っぽさを感じてしまう方も中にはいらっしゃるかもしれません。

ですが、よくよく聴いてみると『Machine Man』『Bloodsuckers』『Subterfuge』辺りのギターのリフなんて完全に “往年のJudas Priest” です。ダウン・チューニング・ギターやドラミングの変化などによって見落とされがちですが、実は前作よりも Judas Priest っぽさは戻ってきていると思います。 メロディを極端なまでに排除した前作と比べると、歌心を感じる本作のほうがよっぽど “らしい” 作風です。

もし仮に “Tim時代の2作” しか選べないとしたら、Jugulator よりはこっち派かなぁ・・・

 

Tim ‘Ripper’ Owensの中音域ボーカルの魅力を再確認できる作品

本作リリースから2年後の2003年に前ボーカルの Rob Halford さんが復帰し、さらに2年後の2005年に “何事も無かったかのように” お馴染みのバンドロゴや往年のJudasサウンドに回帰した『Angel of Retribution』がリリースされます。

Rob復活&ニューメタル時代の反動もあってか次作は実力以上に評価されてしまい、冷静なファンからはその点を見透かされたりもしているわけですが・・・往年の手触りが戻ってきたことに歓喜するファンは多かったですね。

ともあれ、Robさんの復帰から13年。既に当時の興奮も冷めた状態で改めて本作や前作を聴いてみると、黒歴史と一言で片付けられない良質のサウンドに気付かされるはずです。Tim さんの在籍期間中にハイトーンボーカルを活かしたスピード・チューンがあまり生まれなかったのは残念ですが、彼は中音域もイケるオールラウンダーなボーカリストなので、こっちの路線も意外と悪くなかった気がします。

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